━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.390 ━ 2014.09.11
船井総研 コンサルタント 山本 真輝 発行
週刊 ☆ショッピングセンター経営のヒント☆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆今週のコンテンツ☆
『Main Contents:GREE「ラブホ予約アプリ」の爆速終了を考察する』
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆ショッピングセンター経営のヒント☆
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『GREE「ラブホ予約アプリ」の爆速終了を考察する』
GREEがラブホテルの予約ができるアプリ「Tonight for Two」の
サービスを9月3日をもって終了したことを発表しました。
当アプリはサービス開始の8月11日から1ヶ月足らずでのサービス終
了ということになり、その終了までの期間の短さより驚きを以って
ニュースとして伝えられたようです。
またサービス終了の経緯についてGREE広報が「社内外から色々なご
意見があり、それらの議論を踏まえて総合的に判断した」と説明し
たことから色々なニュース記事やブログにて終了理由の憶測が広
まっています。
■どんなアプリだったのか?
リリース当時の発表記事を紐解くと、本アプリについて下記のよう
に説明されています。
今夜のラブホテルが10秒で予約できます、をコピーとし、ラブホテ
ルの当日予約に特化させたもので、6月11日にGREEがサービスイン
した高級ホテルの当日予約アプリ「Tonight」のラブホテル版であり
せっかくホテルに行ったのに満室で入れなかったというニーズに
対応できる、としています。
アプリを立ち上げると、GPS機能により現在地より一番近いラブホ
テルが順に表示され、各ホテルの外観や部屋の内装、ロビー、アメ
ニティなどが確認でき、気に入ったホテルがあれば、予め登録した
クレジットカード情報をもとに、そのまま決済し、最短10秒で予約
が完了する仕組みです。
加盟ホテル側としては同サービスを利用することで、周辺ホテルの
情報をリアルタイムに見比べながら、当日の空室を自由に価格設定
して販売でき、売上および稼働率の向上とともに、当日予約だから
こそできる割安価格を利用者に提案することで、新たな顧客開拓、
集客が見込める、というものでした。
コストとしても初期手続料3万円以外は、予約成立時の手数料のみと
リスクを抑えた契約条件だったようです。
GREEとしては、突発的に発生する(=前以って予定が決まらない)
傾向が強いラブホテル需要に対し、ユーザーに最も身近なデバイス
であるスマホを活用したアプローチによって、マッチングを図ると
いう狙いだったと考えられます。
当時の発表にもありますが、従来よりGREEが培ってきたスマホのノ
ウハウを活用できる事業、とアナウンスしています。
■なぜ終了したのか?
各所の記事等では、サービス終了の理由として
1)ラブホテルは突発的な需要特性のため予約という概念に馴染ま
ない
2)先行サービス(ハッピーホテルなど)がすでにある
3)上場企業としての適性の問題
などが挙げられています。
東証一部上場企業であるGREEがアダルト要素を含むラブホテル事業
に関わるという問題は、火を見るより明らかですが、さすがに事前
検討していないとは考えにくいので、あくまで事業性が不足してい
たという前提で、その要因を考えたいと思います。
■本アプリを取り巻く環境
ラブホテルに限らず、ホテルや旅館では間際のダンピング販売とい
うモチベーションが存在します。
ホテル・旅館の空室(=在庫)は、通常の流通業と異なり、明日に
持ち越せるわけではないので、稼働率の最大化を目指すにあたって
は、基本的には毎日の在庫を売り切る必要があります。
ちょうど食品SMの惣菜コーナーのおつとめ品と同じです。
(ここではホテル・旅館のブランドイメージや、CRM観点からの
ダンピング販売自体の適否については考慮外とします。)
このモチベーション自体は、スマホの普及などに関係なく、従来よ
り存在しており、大手宿泊予約サイトでの「当日販売」設定や、
クーコム株式会社によるホテル・旅館予約サイト「トクー」
(http://www.tocoo.jp/)のように間際在庫の安値販売サイトとし
ての特性を強く打ち出したサイトが、その受け皿となっています。
但し割安ではあるものの、あくまで売れ残りであり、当然、当日空
室がたくさんある施設=人気がない施設であることが多く、ユー
ザーが本当に利用したい施設が割安で販売されていることは少ない
のが実態です。
これはラブホテルにも言えることで、やはり当日ダンピングしても
販売したい施設と、知名度の低いアプリをダウンロードしてまで、
わざわざユーザーが予約したい施設はミスマッチがあったことは容
易に考えられそうです。
■サービス終了の要因
本サービスはマッチングのため、需要側(ユーザー)と供給側
(ラブホテル)の両方を囲い込めて初めて成立します。
一般的に事業のスタートアップ時には、需要側のボリュームもしく
は供給側の目玉が必要とされますが、現行のスマホアプリ市場にお
いてプラットフォームはgoogle play、App storeが掌握しており、
需要の囲い込みが困難だった可能性があります。
本アプリに限らず、ネット業界では広告宣伝費を抑えてテストマー
ケティング的に展開しつつ、順次広告宣伝費を投下していくため、
ある程度想定済みだったはずです。
となると、供給側の目玉が必要になるのですが、「スピーディーに
少人数で事業を立ち上げた結果」(サービスイン時のコメント)と
して、リリース時点では関東1都6県のホテル情報約30件の掲載に留
まり、たとえば港区で1件、渋谷区では0件という状態だったを踏ま
えると果たしてユーザーが欲しいホテルがあったかは非常に疑問で
す。(約1ヶ月後の終了時点では約40件)
終了の要因については諸説があるようですが、
当該業界を攻略していくために、ユーザーが欲している「押さえド
コロ」を把握していなかった(もしくは説得できなかった)ことも
終了の要因の1つと言えそうです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■週刊 ☆ショッピングセンター経営のヒント☆
ご意見・ご感想お問い合わせなどは⇒ info-sc@funaisoken.co.jp
発行人:山本 真輝(やまもと まさき)
発行責任者:山本 匡(やまもとただし)
発行所:株式会社船井総合研究所 経営戦略事業部
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-6日本生命丸の内ビル21階
TEL : 03-6212-2930(直通)
E-MAIL :info-sc@funaisoken.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━