フードホールの物販と飲食

多くのSCや駅ビルでは、物販店舗と外食店舗はそれぞれ別々にゾーニングされています。 レストラン街やフードコートが設けられているのが一般的となります。 ところどころ物販の一角にカフェがあったりしますが、おおむね外食と物販は別のゾーンに分けられています。

一方で、フードホールのような業態では、物販と外食をまぜこぜにゾーニングしている例もあります。

原理原則をいいますと、物販と外食はゾーンをわけたほうが上手くいきます。 弊社創業者・船井幸雄からは、食事をする=心理的開放行動と、買い物をする=心理的閉鎖行動では心の状態が違うからだと学びました。買い物をするところはなるべく人から見られたくない、だから吹き抜けのまわりの物販売場は効率が下がることが多いとも学びました。 この原理原則は、自分が過去に数々の事例に関わった限りにおいて正しいと思います。

一方で、シカゴや欧州にあるEATALYの大型店のように、物販飲食まぜこぜながら成功している店もあります。 現場を見て感じたのは「わかりやすい統一された世界観」で店が作られていて「カテゴリー分けが明確」な場合は、そういった取り組みが可能になるのではないかということです。小さなテーマパークのようなもので、モノやレストランをならべただけではなく、全体としての世界観が分かりやすく感じられるようになっている場合にはうまくいきそうです。私の見たイータリーは2階建てで1000坪くらいありましたが、全体観はもとより、各コーナーが肉、パスタ、チーズ、ワイン、といった分かりやすいもので編集されていて、物販売場の前に外食客席がありますが違和感なく溶け込んでいました。

こういった業態はフードホールと言われたりします。フードホールの解釈は様々で、最近では夜型飲食需要に対応している店が多いフードコートをフードホールと呼んでいる場合もあります。昔の屋台街のイメージであったり、あるいはフードコートみたいなのですが商品や店舗が夜型中心だったりします。

そういった業態定義はともかくも、物販と飲食は原則別々にゾーニングするのが安全で、まぜこぜにしたい場合は明確なわかりやすい世界観を定めて、MDも内装も制服などあらゆる部分まで統一感をもった店にすることが成功要因といえそうです この考えだと、たとえば食物販と食物販の間にカフェが挟まって顧客回遊を分断しているような場合は、カフェをやめて物販にしてつながりを持たせるなどの工夫が出来るようになります。 大型店の売上アップの基本は回遊性の向上です。それは通路を広くするとか見通しを良くするといったハード面だけではなく、商品のつながりができていることも大切です。

さらなる成長に向けた「新規出店の心得」とは?

皆さん、こんにちは。
いつもSCメルマガをご覧頂きありがとうございます。

本日のテーマ:コロナ禍での新規出店の心得とは?

コロナ禍はいまだ終息しない中でも、新たなる出店に取り組んでいる成長企業が出てきています。
新規創業者の場合、まず1号店を住宅街や商店街などの路面店舗でチャレンジして、さらに2号店3号店と一定の成功をおさめた後にSCデベロッパーから誘致の声がかかり、駅ビルやモールなどのSCに入居するというパターンが多いです。
そういう場合に留意しなければいけないことは、大きく2つあります。

ひとつは、SCならではの客層や売れ筋の変化です。
売れる曜日や時間帯、来店客層や単価、売れ筋商品、セールの爆発力、こういったことが従前の路面店と異なるため、品切れチャンスロスをしてしまったり、売れると思った商品が売れなかったりということが起こります。
これに対する予備知識と対策をしっかり準備したうえで挑むことが必要です。

もうひとつは、SC入居契約に関する知識の必要性です。
営業時間や休日、取扱品目、商品調整、店頭広告の規制などの営業上の規制に関することと、解約時の違約金に関することです。
入居する際に契約書を取り交わしますが、これをちゃんと読んでいない場合が多いです。
また、デベロッパー側の担当者とも入居条件(賃料・諸費用・補償金敷金等)については詳細に交渉するものの、解約時のことについては十分に議論しないまま契約を取り交わし、思うように業績が上がらず撤退する際に想定外の費用が発生する・・・という事案がとても多いです。
経済条件のみならず、契約書の条文についても自社にとって都合の悪い内容の場合は修正申し入れも可能ですが、そういったことを考えないまま「まずは契約を」となってしまっている例も多いです。

コロナ期を境に、出店意欲のある業種業態やプレーヤーも変化してきました。
弊社でも、新たに出店を推進している企業様から相談を頂戴する事案も増えてきました。

今後、専門店企業様向けにSC・駅ビルへの新規出店心得についてのセミナーの開催も考えておりますので、きちんとした予備知識を備えたうえで、安心して出店拡大を進めていただけましたらと思います。

SCにおけるDX戦略とは?

皆さん、こんにちは。
いつもSCメルマガをご覧頂きありがとうございます。

本日のテーマ:SCにおけるDX戦略について

ここ最近、DXに関する情報が激増しています。
先日もフードテックで食品製造関連のDX化について学ぶ機会がありました。
スタッフはPCの電源の入れかたすら分からなかった・・というところからスタートされ、生産性向上と有給取得の増加、営業利益の改善まで実現された例をお聞かせいただきました。

SCにおいてのDXは、展開可能な領域は限られているとはいえ、すでに取り組んでいるSCもあり、今後の検討課題といえます。
たとえば、インフォメーションは有人である必要はあるでしょうか。

入退館や荷受け場は事前申請してQRコード受付できないでしょうか。
館内物流も荷物が来たことをスマホで知らせてもらえたら都合がよいです。
館内案内は紙のパンフを廃止してタッチスクリーンにできないでしょうか。
タクシーの電話番号や、バス停の場所と時間や喫煙所、休憩可能場所を表示できないでしょうか。
スタッフの商談記録、催事業者手配、イベント段取りなどをPCスマホでチェックできないでしょうか。
店長会ほか館内の各種会合案内、連絡事項はメールでもいいですがチャットツールに統一できないでしょうか。
研修をWEBセミナー化して接客時間以外に見ていただく方法はないでしょうか。

もちろん投資が発生するものもありますし、費用効果が合わないものもあるでしょうが、各種ツールもこなれてきて導入費用が安いものもあります。省力化効率化につながること、間違いの発生の減少につながること、労働時間の短縮につながることなどは検討の余地ありと思います。
大企業やチェーン店では比較的取り組みが速いですが、ローカルSCや道の駅でもDX化の相談を多方面に情報収集してみる価値はあると思えます。
弊社でもDX支援は激増していますが、どういったITプラットフォームを活用するかといった根本的なところから基幹システムに統合するところまで、業態や企業規模に応じて様々な取り組みがありますので、ぜひご検討下さればと思います。

コロナ禍でも堅調な業績を残すSCに共通して見られる”3つのキーポイント”とは?

皆さん、こんにちは。
いつもSCメルマガをご覧頂きありがとうございます。

SC好業績の”3つのキーポイント”

コロナの影響下においても堅調な業績を維持している事例を見ていますと、ある一定の傾向が見られます。
それは「単品集客」「若年層集客」「SNS集客」という3つの特徴です。

前回オフ会の振り返り-単品集客-

先だってのオフ会でもお話いたしましたが、弊社のお手伝いしております単品ソリューションの事例では、中国地方の観光地でプリンをご当地単品として導入したお店で20代客層の比率が大幅増加し、コロナ禍にもかかわらず順調に業績を伸ばしました。
東北の道の駅でも、ジェラートを導入して昨年比で客数増に成功している店があります。
熱海でも、コロナに加えて土石流災害で全般的に非常に厳しい中でも、ユニークな海鮮丼で勝負する店が行列店舗になっています。
いずれも客層は若年層中心で、認知経路もSNS主体となると思われます。同様の事例は他にも多数あります。
コロナ直前に導入したところがより成果が上がっていますが、コロナになってから開業した店もあります。

若年層集客とSNS

緊急事態宣言解除で人の流れも活発になると予想されますが、よりアクティブなのは若年層と期待されます。
高齢者主体のバスによる団体観光はほぼ壊滅的であり、サービスエリアや地方の観光地など団体集客の多かった店は大打撃をこうむりました。コロナの心配が大きい高齢者の観光は依然としてスロースタートにならざるを得ないと思えます。

SNS集客については、インスタ等による直接的な集客だけでなく、そこから波及してテレビやミニコミ誌に取材されることで集客効果が相乗する傾向が強いです。地方のテレビ局はPRTIMESなどのプレスリリースメディアやSNSで話題の店をピックアップすることが多く、まずはメディアに注目されるためにもSNS集客は有望といえます。
そして多くの成功店舗は社内で自前で工夫して取り組んでいます。
きちんと企画を煮詰めて、コンテンツを練って、インフルエンサーを探して、といった取り組みを社内広告部門が実施しているところが成果を上げています。最初は素人でも、すこし勉強すれば写真の撮り方、メッセージの絞り方、ページでの見え方などどんどん工夫されて洗練されてゆきます。
弊社でもそのような取り組みを支援させていただいていますが、企画運用を広告会社に丸投げするよりもずっとローコストで効果的です。
イベントについても、これまで大規模のものが打ちづらい環境ではありましたが、ミニイベントを多数やるのであれば可能ですし、数が多いほうがより効果的になります。

SCというのはもはやプチ観光地であり、売れているものは「お土産」です。
生活必需品だけであれば安売りスーパーとドラッグストアとコンビニだけでOKになってしまいます。
これからのSC復活を力強く推進するためには上記の3つのポイントを打ち出してゆくことが効果的と思われます。

インスタグラム【次回SCオフ会のお知らせあり】

皆さん、こんにちは。
いつもSCメルマガをご覧頂きありがとうございます。

私共のお客様の中で、スイーツや食品系の製造直売のお客様の成功事例を拝見していますと、インスタ活用に熱心なお客様がとても多いです。有力なところは1万以上のフォロワーさんを有していることが一つの目安と思えます。

インスタに投稿する写真も、その「世界観」を揃えていることが大事です。全体をみたときに写真のトーンが同じような色調で統一されているほうが、より世界観を演出しやすいです。
たとえば明度彩度上げ目でファンタジーな感じにするとか、すこし落ち着いた明度でコントラストを強めてドラマチックな感じにするとか、各社社内スタッフ中心に工夫されています。

一方で、世の中のフォロワーが増えない出来のよくないページを見ていますと、だいたいが「告知ばかり」「文字を写したもの」(読まない)「出来のよくない写真」(暗い、青白い)が見受けられます。
「自分都合」では見てもらえず、「見る人都合」でものを考えねばなりませんね。

若年層が新聞をとらなくなって久しいです。新聞広告やチラシはこういう層に届きません。
交通広告もリモート化で効果が減少しています。
雑誌も売れていませんし、どんどん廃刊しています。
専門店業界ではもはやSNSを通じた販促は必須になっているのですが、なかでもファッションやスイーツなどではインスタの影響力が一番大きいといえます。

テナント大手企業は別として、大手百貨店や駅ビル、モールなどのインスタアカウントを見てみますと、著名なSCでも1万フォロワーいないところばかりですね。
もちろんこれがすべての指標になるわけではないですが、今後はインスタ影響力の大きいテナントがチョイスされ、同様に館もインスタ影響力でチョイスされる要素も出てこようかと思います。

また、多くの成果を上げている中小企業はどこも自分たちで工夫して写真を加工して投稿しています。
広告業者さんに丸投げではなく、事務所若手女性スタッフ中心に企画されてみてはいかがでしょうか。

商業施設経営の勉強会 ~コロナで変わるSCのビジネスモデル~


弊社の食品コンサルタントの責任者をゲストに招き、特に地方都市のSCや駅ビルにおける単品食品ショップの可能性についてお話しいたします。
・開催日時:9月16日(木) 13:00-14:00
・開催場所:オンライン(zoom使用)
・講座内容:
①withコロナで変わるSCのビジネスモデル
②話題の施設・テナントの出店リニューアルポイント
③食品コンサルタントが新たな業態モデルを提案
④業種コンサルタントを交えたパネルディスカッション

セミナー詳細・申込はこちらから

いまのテナントミックスを考える

皆さん、こんにちは。
いつもSCメルマガをご覧頂きありがとうございます。

これまでSCの店ぞろえを考える場合に、立地が良い場合は売上および歩率を高く設定できるアパレルや化粧品や食品を主にそろえて、のこりのスペースに雑貨やカルチャー系を揃えるというMDの考え方をしてきたSCや駅ビルが多かったといえます。
家電量販でいえば、小さくて高額なもの、スマホやデジカメや時計を一等地に陳列してきました。ようするに、坪当たり在庫がそこそこ大きく
さらに回転も見込まれる商品群を売るほうが有利だったわけです。

一方で、コロナ期以降、アパレルの不調がより鮮明になってきてしまいました。
観光客を対象としてきた都市部商業では特に落ち込みが激しいといえます。

こういった環境下で、新しいテナントミックスを指向するSCが多く出てきました。
銀座の東急プラザや川崎のルフロンではミニテーマパークやミニ水族館を導入しています。
広島のマリーナホップで再生のためにミニ水族館を入れて、年間パスポートを安価に設定し毎日ミニイベント開催を実施したら高齢者のお客様がお孫さんをつれて毎日のように訪問していただけるという成功例がありましたが、都市部のミニ水族館というのは投資さえうまく抑えることが出来れば面白いと思います。
横浜のASOBUILDなども同様ですが、ミニミニテーマパークもテーマ設定次第ではある程度お客様に興味を持っていただけると思います。
また、同じくシェアオフィスや調子のいいIT系企業に一括貸しするパターンや、今後はeスポーツ系企業を導入するということも成されると思います。

コロナの影響がどこまで続くかについては、もうしばらくはこの状況から容易に脱することが出来ないという流れになってきています。賃料水準は下がりますし、新しいコンテンツ導入が成功するかどうかも不透明な状況下ではありますが、「このままではなんともならない」ところから思い切ったチャレンジが必要となっています。

地方都市SCにおいては行政に床を賃借いただいて「地域おこし協力隊」や「パスポートセンター」「職業紹介所」「地域イベント拠点」などを実施しているところもあります。図書館を誘致しているSC、子育て支援施設を誘致しているSCもあります。

やれそうなことは何でもチャレンジしてみること、それが今大事なことと思えます。

次回SCオフ会は9月16日に開催予定です。
下記よりご参加のお申込みいただけます。

商業施設経営の勉強会 ~コロナで変わるSCのビジネスモデル~

弊社の食品コンサルタントの責任者をゲストに招き、特に地方都市のSCや駅ビルにおける食品専門店ショップの可能性についてお話しいたします。
・開催日時:9月16日(木) 13:00-14:00
・開催場所:オンライン(zoom使用)
・講座内容:
①withコロナで変わるSCのビジネスモデル
②話題の施設・テナントの出店リニューアルポイント
③食品コンサルタントが新たな業態モデルを提案
④業種コンサルタントを交えたパネルディスカッション

セミナー詳細・申込はこちらから

「食」のパーソナルユース強化

物販商材というのは、大きく「ホームユース」と「パーソナルユース」に分かれます。
ホームユースとは家族のための買い物、パーソナルユースとは自分のための買い物です。
スーパーストア系の業態では主としてホームユース商材を中心に扱う一方で、
パーソナルユース商材は専門店で取り扱うことが主となっています。
どんな商品にも購買経験というものがあり、子供のころから慣れ親しんで
購買経験を重ねた商品はパーソナルユース化してゆきます。

シャンプーでいうと、私たちが子供のころにはシャンプーすらあまり普及しておらず、
石鹸で体を洗っていました。
いまは親が買ってきたシャンプーを子供のころから普通に使用しています。
そうするとだんだんシャンプーに対して理解が進み、中高生くらいになると「マイシャンプー」を買ってきて使うようになります。
こういうのがパーソナルユース化の一例です。

一方で購買頻度が少ない商品はあまりパーソナルユース化しにくいともいえます。
仏壇やランドセルといったものは何度も買うものではないので、
多少時代の流れで今風になっているとはいえ、原形となるものはそう大きく変化していません。

食の世界はもともと購買頻度は高いものの、
親や奥さんが買ってくることが大半であり、基本はホームユースです。
しかし、そのなかでも特別にこだわりのある商材は急速にパーソナルユース化します。
お酒などはその典型と言えます。

またパンやビールなどの商材は大手メーカーのシェアが高い商品です。
それゆえに、バリエーションもあるようでなかった商品です。

コロナ以前からこの食品の世界でもパーソナルユース的な売り方で
専門店販売で売り上げを上げつつある商材が増えてきました。
そして昨年のコロナ禍でも(大観光地を除いて)ほとんど影響を受けずに売り上げが伸び続けています。

食の世界も、時間をかけてじわじわとパーソナルユース化してきました。
成城石井やカルディのような店が人気が出てきているのも同じ理由だろうと思います。

この、パーソナルユース化という大きな流れに対応できるのが、「食の単品専門店」の展開です。
ショップをテナントとして誘致することもありますが、小額投資・短期回収を生かして直営化する方法もあります。

次回のSCオフ会では弊社の単品食品責任者をゲストに招き、特に地方都市のSCや駅ビルにおける単品食品ショップの可能性についてお話ししようと思います。弊社実績については、お気軽にお問合せいただけましたらと思います。

【参加希望の方必読!次回SCオフ会の開催概要】
・開催日時:9月16日(木) 13:00-14:00
・開催場所:オンライン(zoom使用)
・講座内容:商業施設経営の勉強会 ~コロナで変わるSCのビジネスモデル~
①withコロナで変わるSCのビジネスモデル
②話題の施設・テナントの出店リニューアルポイント
③食品コンサルタントが新たな業態モデルを提案
④業種コンサルタントを交えたパネルディスカッション

お申込み詳細は、今後のSCメルマガにてご連絡いたしますので、しばらくお待ちください。

レポートダウンロードはこちら

マーケティングのスイッチ

コロナ影響が長引く中、消費市場は冷えており来店客数は減少し、通販など一部のチャネルを除いて小売業外食産業は不景気に突入して1年以上がたちます。すでに好景気型マーケティングから不景気型マーケティングへの転換が必要な時期にきているのですが、その一方で「数年前からのやり方」をそのまま継続している例が多数見受けられます。

好景気型から不景気型のマーケティングへと大きくスイッチすることが必要なのですが、ここを理解していないと現場で売上が上がらない・・・となります。一般論として、好景気の時は「付加価値向上」がやりやすく、値上げやグレードアップのチャンスといえます。ラグジュアリー志向を仕掛けやすく、高級品はもとより1000円を超えるラーメンや2000円近いスイーツも話題になりました。

反対に、不景気の時は好景気時代の商品をすこし安く提供することで売上を上げやすくなります。船井幸雄はこれを「不景気になったら、いいものを安く売りなさい」と語っていました。個別には商品ごとに打ち手が変わってきますが、いずれにしても数年前と同じメソッドでMDや商品開発していても、それでは売れなくなっていきます。

この1年で開業した商業施設も「好況期の終わりごろ」に企画され、好景気アタマで開発されたものが大半のため、いきなり不況期突入で苦しんでいるところが多いです。「不景気型の商業施設」への急速な転換が必要ですね。

レポートダウンロードはこちら

新しい成長企業の導入

成熟業界においても新たな参入者が増えて、新しい成長企業が生まれてきています。

神奈川・横須賀ではaveさんという大型スーパーが成長しています。
大ロット商材も取り扱いつつ、キャッシュオンリーという方針で
安価に販売することを強みとしています。
北関東ではジャパンミートさんが好調です。
Moffさんという、動物とのふれあいカフェを展開している企業があります。
みなとみらいマークイズのセガさんのOrbiが撤退したのですが、
その跡地を含めて何か所も展開しています。
ペット業界では、Coo&Rikuさんが店舗数を増加しており、
すでに200店舗以上展開されています。
アパレル業界ではファストファッション系・オフプライス系の
店舗が増加しており、cocaさんの店舗数は50店舗近くになってきました。

SCにとっては、成長意欲の高い新しいチェーン店の導入をはかるのは王道の手となります。
一方で、クラフトビール、プリン専門店、ベーカリー専門店、
100円ベーカリー、チーズケーキ専門店、チョコレート専門店、和スイーツ専門店など、
私どものメンバーがお手伝いしている地域ブランド専門店も伸びています。
サービス系でも、ヘアカラー専門店やクイックエステなどの地場系専門店が伸びています。

専門店銘柄も世代交代が徐々に進んでいます。
従来から強い定番チェーンに加えて、
新しい成長チェーン店+地元資本の魅力ある業態の導入が必要ですね。

レポートダウンロードはこちら

どんなSCにしたいのか

緊急事態宣言も延長され都市部のSCや百貨店、
観光地については厳しい状況が続いていますが、
かれこれ1年を経て立地別の優勝劣敗が明確化してきています。
郊外立地はそれまでちょっとしんどいところが多かったのですが、
ここにきて大都市近郊の立地は比較的調子がいいです。
和洋菓子の単品専門店、クイックエステやヘアカラー専門店などの
新手のサービス業態、大都市圏ではない駅前の外食店舗などに
新たな繁盛店が出現し始めてきています。

成功のポイントは様々ですが、
食品関連では船井幸雄がかつて常々語っていた
「本物化」にあるように思います。
見た目の演出やインスタ販促もさることながら、
食べて「おいしい」かどうか、サービスがしっかりしているかどうかといった、
基本的な力がしっかりしているかどうかが繁盛店化するポイントになってきたと思います。

これまでは好景気型マーケティングでずっとやってきましたが、
いまはすっかり不景気型マーケティングにシフトが必要になっています。
不景気型マーケティングの要点は
「好景気時代の消費体験をより安価な価格で得られる」になります。
これも船井幸雄が20年以上前にバブル崩壊の後に語っていたことです。
消費者の消費体験は相対的なものであり、
比較の対象というものがあります。それはこれまで体験してきたことです。

地方都市で東京の有名店のようなメニューとサービスを
しっかりやっているイタリアンがあり訪問してきましたが、
お手軽な価格で地元比較ではあきらかにワンランクツーランク上の
満足度の店になっており繁盛していました。
従来こういったことはナショナルチェーンが強かったのですが、
ナショナルチェーンにはないスタッフトレーニングができるのは地元店の強みといえます。
オーナーの想いがすみずみまで実現できるのは小規模企業ならではの強みといえます。

SCもナショナルチェーンのリーシング頼みではなく、
地元優良店舗、地元でなくても隣接地域の優良店舗を
これまで以上に足をつかって開拓してくる時代になっています。
そういう企業にアプローチする際に、
自分たちにも熱い想いがあることをしっかりお伝えせねばなりません。
「いま場所があって賃料いくらで、よかったらやりませんか?」
こういった軽いアプローチだけではそういうオーナーの琴線に触れないこともあるでしょう。

自分たちはどういうSCをつくりたいのか、
お客さんにどう楽しんでほしいのか、
SCを通じて世の中に何を表現してゆきたいのか。
いまいちどSCとしてのあり方を見つめなおして、
新たなる繁盛店開拓に動いていただけましたらと思います。

レポートダウンロードはこちら