【SC経営のヒント413】:『商業ビルの基本を知ろう4』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.413━ 2015.05.14
 船井総研 コンサルタント 山本 匡 発行
 週刊 ☆ショッピングセンター経営のヒント☆
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 ☆今週のコンテンツ☆
『Main Contents:商業ビルの基本を知ろう4』
『SUB CONTENTS:第37回商業施設経営のための勉強会』
http://www.funaisoken.co.jp/seminar/515005.html
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 ☆ショッピングセンター経営のヒント☆
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『商業ビルの基本を知ろう4』
■専門店の商業ビル出店の注意点
ある業種の専門店にとって、それが館内に出店している他の専門店と比較して強いか弱いかは、売り場面積のシェアと売上のシェアを算出することで指数化できます。たとえば、同じ館内に同じ業種の店が5店舗あり、それぞれの面積売上が以下のような場合を考えて見ましょう。
面積 年商
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15坪 5000万円
20坪 5000万円
30坪 8000万円
30坪 6000万円
50坪 8000万円※
——————–
145坪 32000万円
仮に、※印の店が自店とした場合、売場面積シェアは34%、売上シェアは25%となり、これを割り算しますと指数73%となります。指数100%がイーブンになりますので、この指標からすると、自店の適正規模が仮に50坪であった場合は、競合と比較して面積シェアに対して売上シェアはその73%程度になるという仮設が立ちます。
強いチェーン店というのは、一般的にこの指数が100%を大きく越えるもので、150%~200%になるものが多々見受けられます。このように「強い店」であれば、どのような商業施設に出店してもある程度予測どおり売上が取れることになります。ですが、100%を割り込む「弱い店」の場合は、館内の競合との関係性の中で売上が上下してしまいます。
同じ館内に強い店がある場合とない場合とで、売上が大きく変化しやすいわけです。ですので、もし「弱い店」に属する店の場合は、「大きな商業施設で競合もある」場合と、「小さな競合施設で無競合」の場合とで、館内のポジショニングが大きくことなるわけです。
過去にお手伝いした経験では、このように強い競合と相対比較して「弱い店」に属している場合は、大きな商業施設かつ強い競合がある場合より、小さな競合施設で無競合の場合のほうがよい数字になるということがありました。このことは、専門店の出店において留意すべきことといえます。
この方法を応用すると、データを多数集めて自店のポジショニングを的確につかむことが出来れば、売上予測方程式にまで精度を高めることができます。自店の市場内ポジショニングを的確につかみ、出店すべき館の選択を誤らないように判断しましょう。
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第37回商業施設経営のための勉強会
(株)船井総合研究所 東京本社にて開催!!
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日時: 2015年6月18日(木) 18:30~21:00
場所:(株)船井総合研究所 東京本社
【1】講師からのお話 18:30~19:30
 SCへの出店 専門店はこうしよう
・話題の商業施設、テナントの成功ポイント
・直近のテナント業績アップ事例
【2】質疑応答 19:30~20:00
【3】懇親会 20:00~21:00
→申し込みはコチラ
http://www.funaisoken.co.jp/seminar/515005.html

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■週刊 ☆ショッピングセンター経営のヒント☆
ご意見・ご感想お問い合わせなどは⇒ info-sc@funaisoken.co.jp
発行人:山本 匡(やまもと ただし)
発行責任者:山本 匡(やまもと ただし)
発行所:株式会社船井総合研究所 経営戦略事業部
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-6日本生命丸の内ビル21階
TEL : 03-6212-2930(直通)
E-MAIL :info-sc@funaisoken.co.jp
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SC経営のヒント131:商業ビルの基本を知ろう3

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
2007年も残すところあとわずかになりました。
今年やり残したことは今年中に片付けて新年を迎えたいですね。
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■商業ビルの基本を知ろう 3
□人の流れは、最も人を集めるものと、その次に人を集めるものの間に生まれる
人を集めるもの=集客施設=TG(トラフィック・ジェネレーター)とも
呼びます。たとえば、大都市で最も人を集める拠点はターミナル駅です。
そして商業地の中では、中核となる百貨店がその次に集めます。ですので
渋谷も新宿も駅から百貨店の間に主要導線が形成されます。
これは、冷静に考えれば当たり前のことなのですが、あまり意識されて
いないことです。郊外型商業施設ですと、駐車場と食品売り場の間の導線が
最も強いものになります。駐車場が1箇所にかたまっているような場合は、
より顕著になります。駐車場~食品売り場の導線に乗ってこない場所は
必然的に通行数が減少します。
同じことは、ロードサイドにもいえます。ある街でロードサイドが栄える
ポイントは、地域の核となる大型SCにはさまれたエリアになります。
そういう場所がなければ、その大型店に近い場所から栄えます。
ロードサイドの場合は路面と異なり「場所の有無」が重要になりますから、
たとえばインターチェンジ近くに用地が多く出てきたためにインター付近が
ロードサイド銀座になったり、あるいは新しい道路ができるときに、
こぞってチェーン店が出店してくるのです。
SCでいえば、食品売場と店前の平面駐車場がこのTGに相当します。
このことは、立地の良否を判断する上で極めて重要なことです。エリアの
集客の核はどこか、その核の集客力はいかなるものか、そこから導線上
無理なく誘導できるか。それによって自社の出店する立地の良否が
決定されてしまうのです。
□エリアの集客力は、核の集客力で決まる
核となる大型SCの集客力がまず商圏を開拓します。そこに業種別大型専門店が
進出し、核店舗の売上を奪いつつ、シェアを高めてゆきます。核店舗と周辺の
大型店が相乗効果を生むことで、さらに商圏が拡大します。こうして、
エリアの集客力は高まります。
ですので、キーポイントはそのエリアの核となる店がどこで、それは
どれほどの集客力を持つものなのかという見極めが、エリアの集客力を
見定めるポイントになります。
ロードサイドとて、核らしい核がなく形成されているものはさほど大きな
商圏にはならず、一方で大型SCと大型専門店が林立するゾーンは商圏が
広域に広がり、特に土日の集客力が飛躍的に高まります。
□立地がいいとは、不特定多数の買い物客が店前を多く通行することである
これはロードサイドとインテナント・路面などでは状況が違うように
思われますが、いずれにしても通行量が多く人目に触れやすいところほど
いい立地といえます。
そういう一目で見て分かるような場所はすでに押さえられてしまって
いますから、その周辺で探すほかはないというのが実情ですが。
ただし、どんな店でも立地さえ良ければよいというものではありません。
「業種特性」の考慮が必要です。
業種特性でひっかかるのは、購買目的・動機上の特性と、限界賃料の2つです。
たとえば家具店は目的購買ですから、ひっきりなしに通行客が多く入店が多いと
むしろ困ります。買いに来たお客さんにだけしっかりアプローチをすることが
重要です。またリサイクルショップなど、あまりに賃料が高いと坪効率上の
限界から賃料を払いきれない業種場合は、いい立地であったとしても賃料で
あきらめることになります。
たとえば人に見られると恥ずかしいような店の場合は、立地がよければ売上が
上がるとは限りません。業種特性とは、このようにお客様の購買行動に
のっとって判断される必要があります。
□需要額と充足度
小売業はある地域で獲得される商圏の大きさと、それに対する店の充足度の
バランスで1店舗あたりの売上が決まります。たとえばSCで
一業種一店舗であれば(書籍やゲームセンター等)、SC全館の売上により
その店の売上が読めます。
また、飲食店や雑貨店などのグロスの売上が読めれば、それを何店舗で
シェアするかによって、一店舗あたりの繁盛度合いも予測可能です。
これはSCが成功するか否かではなく、入店する自社にとって有利な環境か
不利な環境かによります。
集積の魅力による集客増についてはどう考えればよいでしょうか。
たとえばフードテーマパークなどのように、特定の業種を集積させて、
話題性を高めれば、商圏が拡大し基礎的な集客力が増えます。
ですのでこういう業態の場合は商圏が拡大すれば売上が上がり、
開業とともに商圏が縮小すると売上が下がるという現象が起こります。
通常のSCでは複数の同業種が出店した場合、店の数だけシェアする相手が
増えることになりますから売上は下がります。
もっとも、デベロッパーがそのことに無知なわけではなく、全体の
規模からみたバランスを都度チャレンジしていますので、ときどき、
ある業種が多すぎる、ということが起こります。
供給過剰になると、弱い店から影響を受けやすくなります。
どれもこれも、いわれてみれば当たり前のようなことばかりですが、
原理原則ほど意識しないと見過ごしがちなものもないといえるでしょう。

SC経営のヒント127:商業ビルの基本を知ろう2

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
前回の「基本を知ろう」が思いのほか反響が大きかったので、
しばらく続編を続けることとします。
皆様に基本を知っていただき商業施設開発の質の向上につながれば、
私としても大変嬉しく思います。
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■商業ビルの基本を知ろう2
立地と建物の基本に忠実なものは、繁栄します。そこではテナントも
デベロッパーもハッピーです。出店の成否は、商業施設が企画された時点で
すでに決定しているといっていいでしょう。
企画にもさまざまな内容がありますが、まずは施設計画をチェックして、
企画の未熟さゆえの悪影響を受けないように図面を見抜き、早い時期に
デベロッパーと交渉してよい場所に再配置を検討してもらえるよう
働きかけることも必要です。
相手が百戦錬磨の有力デベロッパーですと、あらゆることを承知の上で
計画を策定しますから選べる範囲はほとんどないですが、
そうでない場合もありますので、図面をよく見ることが大事です。
□回遊性
商業施設の回遊性とは、上下階の回遊性と平面の回遊性の二つがあります。
いうまでもなく、回遊性は限りなくよいにこしたことはありません。
回遊性が悪いと「死に場所」が生まれます。そこは後々、貸そうにも
貸せない場所として全体の採算性を悪化させることになります。
そこに入った店には、努力すれどお客様はやってきません。
回遊とは、読んで字のごとく、全体を回遊し循環するように導線が
設定されていることが大事です。
巨大なモールであればセンター通路が広いため、実質的に循環する導線が
設定できますが、細い通路の一本道では行き止まりになってしまいます。
オープンモールの回遊性がよくないのは、一軒一軒ドアをあけて入らねば
ならないことです。そういう抵抗要因を極力排除し、お客様が歩きやすく
なるようにすることが大事なのです。
上下階の回遊性は、これまた同様に上下導線が一本通っていて、
かつスムースに上下できることです。具体的には、エスカレーターが
横から見て×の形で最上階から最下層階まで通っていることです。
ときどきフロアによってエスカレーターの位置がずれたり、あるいは
×ではなく様々な方向を向いてついているビルがありますが、こういうのは
上層階への回遊性を下げているだけで、ろくなことがありません。
設計士のこだわり(おあそび)でエスカレーターのつき方の変なビルが
多数ありますが、テナントにとっていいことなど一つもありません。
後から多額の工事費をかけてエスカレーターを付け替えたビルもあるくらいです。
□お客様は、水の流れと同じく、下に溜まり、上に上がらない
以前、山の斜面を切り開いて作り上げたSCを見ました。下に位置する
場所にはお客様が流れるものの、上のゾーンは閑古鳥でした。
こういう場合は、駐車場を一番上に集中して持つことが必要と思われますが、
そういう計画になっていません。
そもそも、山の斜面を切り開いて商業施設にすること自体に無理があります。
これは立地を見るときも同じです。高台の上、坂の上、丘の上、
こういう場所に商業施設をつくることは避けるべきことです。
もちろん競合らしい競合がなく、施設としての魅力が高ければある程度は
リカバリーできるものの、そもそも論としてよろしくないです。
自転車や徒歩のお客様は来づらいです。
旅館のおみやげ物売場などでも、階段を数ステップあがったところに売店を
つくっている例がありますが、これなどもよくないです。たった数ステップを
上がるのが億劫で、ちょっと見てくれなくなるのです。
数ステップ下げるのならよいです。店を作るなら、なるべく低いところがよいです。
ビルの回遊性は、おおむね基本的な企画の骨格の段階で検討されます。
図面化された後には、計画そのものを変更することは不可能になっています。
ですので、著しく不利な場所でないかどうかのチェックと、ダメな場合の
対応策が協議可能かどうかを判断材料にすべきでしょう。

SC経営のヒント124:商業ビルの基本を知ろう

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
この1週間、急に秋の気温になりました。
皆様は体調を崩されていないでしょうか。
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■商業ビルの基本を知ろう
商業ビルをつくるのにも、「基本」というものがあります。これは、
デベロッパーにとっても、そこに出店するテナントにとっても、非常に
重要なことです。
残念ながら設計事務所にはこのノウハウがなく、大手の商業デベロッパーでは
ノウハウを蓄積した担当者が設計変更を依頼して何度も吟味した結果が
形になっています。
この基本は多岐にわたりますが、最近良く見かける事例をもとに
考えてみましょう。
以下が「基本」の一部です
□商業ビルのフロア床面積は上下階同じとする
□本館別館など2棟以上に分かれる場合は、大きな棟がより有利になる
□フロアに1ヶ所しかエスカレーターがない場合は、エスカレーターを
出たところから見て大きなほうのゾーンがより有利になる
□オープンモールは回遊性が低下する
1Fは大きく、上層階は床面積が小さい商業ビルというのが数多くあります。
これはいけません。上層階の回遊性が低下します。
郊外型ですと、駐車場をとったために2階の床面積が1階に比べて非常に小さく
なっている場合を見かけます。しかし、こうすると2階の店舗への回遊性が
確保しにくくなります。
都市型のビルですと、ビルの構造上や、斜線制限などで上層階床面積が
どんどん小さくなっていく場合が多いのですが、これも同様で、ただでさえ
上層階の回遊は厳しくなるのに、なおのこと人が上がりにくくなります。
商業ビルは、上下階でフロア面積を変えてはいけません。同じ面積で上から
下まで通っていることが大切です。小さくなっている床に出店した場合、
期待値を下回る集客になることが多く、そういうビルに出店するなら最も
床面積の大きなフロアが最も有利になります。
何故そうなるかといいますと、これは別棟をつくったときの状況と同じと
いえます。2棟以上の建物が開発される場合は、最も大きな棟が有利になり、
それ以外は不利というのが通常です。
同一フロアでもエスカレーター位置が中央ではなく端についていることが
多いですが、エスカレーターを出た位置から見て大きなほうのゾーンに
回遊しやすくなります。
どうも人間は、より大きな空間のほうが自分の期待を満たすと感じて
行動するようです。科学的な根拠は分かりませんが、これまで多数の店舗を
見てきた結論がこれです。
古いビルで制約が大きい場合などは、別の知恵工夫でなんとかせざるを
えないのですが、新築の案件でこのような事例を見ると、基本を知ることの
重要さを感じずにいられません。