地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.3〜

ショッピングセンター経営のヒント82:

地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.3〜

こんにちは、船井総研の山本 匡です。

景気もよくなり売上げは上がるが、経費もかさみ、より売らねばならなくなる、
そういう時代に突入したときの流通業の発想の転換について、前回申し上げました。

今回は、もうひとつの重要な視点としての「新規出店」の実現があります。
まちづくり三法改正で、出店可能立地が大幅に減少することをお伝えしました。
これは大手流通にも専門店チェーンにも同じように非常に大きなインパクトを与えます。
これまでのような発想と方法論では、新規出店ができなくなります。

●新規出店

まず専門店業界では、ダウンサイジング業態を開発せねばならなくなります。

たとえば、郊外で500〜1000坪店舗を展開しているチェーンにとっては、
300坪以下で駅前のビルのワンフロアを借りて出来るような店が必要になります。
大都市の駅ビルや巨大モールSCに出店していたチェーン店にとっては、
より小商圏の街でも開発可能なモデルが必要になります。

たとえば100坪が標準だとすると、40〜60坪程度の小商圏対応業態が必要になります。
品揃えだけでなく商品のプライスラインも見直す必要が出てくるでしょう。
オペレーション人員も見直す必要が出てくる事になります。

GMS業態は、食品+衣料か食品+住関連という業態にならざるを得ません。
それもスーパーセンターのような巨大なものではなく、
10,000平方メートル以内にテナントも入れてすべてが収まるようなものです。

いちばん効率が高いのは食品主体の店舗ですが、
何千億円という年商のある巨大な流通企業にとって
15〜20億円程度の店しかつくれないのであれば、
年数店舗では年商が伸びないため、原理的にはかなり数多くつくらないといけなくなります。
実際には無理でしょうから、M&Aなどで拡大するしかないともいえます。

●研究開発費の投入

ここで必要な概念が「研究開発費」の投入です。

メーカーなどでは技術の開発研究にどれだけ投資したかが、
今後の成長性を見るひとつの指標となっていますが、

流通業ではこのようなとらえかたはなされていません。
むしろ、こういう経費を無駄なものとしてカットしてきたわけです。

研究開発とは、商品開発・業態開発・店舗開発の3つが大きく対象になります。
人材開発ももちろんそうですが、これはそもそもやっていてアタリマエですので
この論旨からは省きます。

商品開発とは、バイヤーが本来実施する機能ですが、
多くの流通チェーンでは開発もベンダーに依存し、
多くのバイヤーは商品を選んでいるだけです。
自社で原材料生産地や組立て地までソーシングできている企業は非常に少ないですが、
今後こういうことに積極的に取組み、商品の原価率を下げないと苦しくなります。

業態開発は、先ほどのように外部要因の変化から、
いやおうなく適合業態を開発せねばならない状況になってきています。

店舗開発は、すなわち開発人員そのものを増員するという事になります。
針の穴を通すようなチャンスをモノにしないと、
出店が出来なくなるといっても過言ではありません。

●今後の流通経営の分かれ道

今後の流通業経営の分かれ道は、
上がった利益を上記のどの「開発」に投資してゆくか、によって決定されると思います。
皆様の会社におかれましても、
「何に投資すべきなのか」を今一度ご再考いただくきっかけになれば、と思います。

今回は全3回の短いシリーズでしたが、
今後も時事に適応した内容を配信してゆきたいと思います。
ご拝読いただき有難うございました。今後ともどうぞ宜しくお願いします。

船井総合研究所 第五経営支援部 チームリーダー
山本 匡

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地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.2〜

ショッピングセンター経営のヒント81:

地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.2〜

こんにちは、船井総研の山本 匡です。

前回は、すでに日本経済の一部はバブル化し始めているというお話をいたしまし
た。需要拡大も期待できますが、コストアップも懸念されます。それに先駆けた
対策を考えるヒントをいくつか例示させていただきます。

●不動産効率の改善

流通小売業における対策としては、まずは不動産効率の改善にあります。

これまで流通業の成長シナリオは設備拡大であり、特に一拠点あたりの店舗面積
の拡大がその基本路線でした。これは、競争優位、売上拡大、人員効率などの面
で見ても、それなりに理にかなった方法論でした。

ただ、今後は設備の「稼動効率」がより重要になると考えられます。効率とは、
まずは在庫効率(回転率)であり、次に経費面で最も大きな人員一人当たり効率
と、次に大きな不動産一坪あたり効率になります。

この3つの効率がよければ、販促費用などが捻出可能になりますし、一方在庫効率
が悪ければ資金繰りにつまり金利負担が増大、人員効率が悪いと結局賃金カット
に、不動産効率が悪いと閉鎖店舗が増加する、という連鎖になります。

ただ、小売業に関していえば、在庫に関しては回転差資金がある程度活用できま
すので、なんとかなりますが、人員効率と不動産効率を見直さねばなりません。

これからは、大きな売場で人を減らし効率的にオペレーションすれば、売れない
店でもそれなりに利益が出るという発想が大切です。さらに地代が安く設備費が
安く上がれば、このビジネスモデルは可能となります。

しかし、一方で売場面積あたり売上はこの15年、下落の一途でした。いっときの
2/3か、それ以下になっているチェーンが多数あります。

低単価品をセルフで売る、そのために作業人員を減らし、売場にいる人はレジを
打っているだけ、という状況になりつつあります。しかし、その一方で接客の重
要性が忘れられているといってもいいでしょう。

●人員増加と売上の関係

同じ1000坪の面積で、限りなくセルフで10人しか使わず、それで月商1億円売れる
のと、接客強化で15人にして月商1.05億円売れるのと、どちらが得するでしょうか。

10人×30万円/月=300万円 VS 15人×30万円/月=450万円 +150万円

人を1.5倍に増やしたことで売上が500万円増えたとして、粗利が30%とすると
500万円 × 30% = 150万円ですから、人を1.5倍に増やして売上を5%上げて
トントンという結果になります。

では、売上が5%以上あがるとしたら?当然人を増やしたほうがよいということに
なります。あるいは1000坪以上の面積があるならば?ということになります。

同じ不動産コストがかかっているのであれば、人を減らして売上を下げるより、
人を増やして売上を上げるほうが不動産効率は上昇するのです。

これまでは売上に対する強気の観測がたたなかったため、各社は人員削減に熱心に
なっていました。

しかし、これから先、コストアップ=景気回復ととらえると、「同じ設備で、人を
増やして売上を上げる」という方法論に取り組む必要があると思いませんか。

ましてや家賃が上がるとなると、縮小均衡型のビジネスモデルは成り立たないと
いうことになります。

●売上高=坪当在庫高×回転率

もう一つは在庫の増加です。単位面積あたり売上高は坪当在庫高×回転率となります。

回転率が変わらないととすると坪当在庫が減れば売上高は下がるのは当然なので
すが、なぜかこの10年GMS、HCをはじめとする流通各社は坪当たり在庫を熱心に
減らしてきました。通路を広げゴンドラを低くするという方針をとってきました。
(だったら売り場面積を小さくすればよかったのですが…?)粗利の高いSPAや
ブランド品以外は、繁盛店は今も昔も売場に在庫が山積みになっているものです。

ドンキホーテ、ビレッジバンガード、ダイソー、カインズホーム、皆密度にあふ
れていると思うのは私だけでしょうか。

接客人員強化と接客スキルのトレーニング、そして売場ごとの坪当たり在庫高を
増やすこと、これがデフレ脱却後の流通業の取り組むテーマとなると思います。

船井総合研究所 第五経営支援部 チームリーダー
山本 匡

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地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.1〜

ショッピングセンター経営のヒント80:

『地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.1〜』

こんにちは、船井総研の山本 匡です。

私は普段、中堅流通・レジャーチェーンや不動産デベロッパーとのお付き合いが
数多くあります。

現在、この業界をにぎわせている話題は「まちづくり三法改正」です。具体的に
は、2008年1月より、商業地域・近隣商業地域・準工業地域を除いたエリアでは
延床10,000平方メートル以上の商業開発を規制する、という法律の変化です。

このため、今後は用途の適合しない郊外型の新規SCは原則として開発許可が下り
なくなります。延床に対する規制ですので、一枚の敷地に複数の店舗が出店する
場合も、合計面積が対象になります。

このため、現在工場地域や住居地域の遊休物件を有している各社は、なんとか来
年末までに賃借テナントを決めて、建築確認をもらい着工しようとやっきになっ
ています。

メーカーや卸の工場や物流倉庫、駐車場として活用している案件で「将来は店舗
に貸すことも検討」していた案件も、ほぼ今年中に決着をつけなければならなく
なります。

●「新まちづくり三法」時代のコスト

一方、大手流通や専門店チェーンにも多大な影響を与えます。これまでのように
郊外に大型SCが開発される毎にテナント入店していれば出店数が増える、という
ことはなくなり、成長戦略を実行するには、現実に店が開発できる新たな立地や、
あるいは都心部中心街に出店できるフォーマットの業態を開発せねばならなくな
ります。

ともあれ、不動産へのマネー大量流入に加えて、こういった背景もあって、現在
地代と地価と建設コストのバブル化がすでに始まっています。土地購入を考えて
いる専門店チェーンはすでに地方都市でも「高くなりすぎて買えない」という
悲鳴を上げています。

入札すると、路線化から割り出した比較的合理的な価格ですら、強気な価格で負
けてしまうのです。

先日の日経MJ3月24日号4面でも私のコメントが紹介されていますが、渋谷・
新宿クラスでは土地取引価格は1.5倍以上になっています。また、郊外都市でも
立地のいい大型物件では、これまでの常識の20〜30%増しの地価、地代になって
きています。

また、駆け込み需要で多くの案件が開発されるているため、建設現場では職人さん
の数が不足しており、結果として建設コストが上昇しています。大手流通は比較的
早い時期からまちづくり三法の情報を入手しており、中小地場企業より先んじて
対策を打っています。

この10年、デフレの環境下で、売上の伸びも苦しい一方でコストも安定していまし
たので、流通だけでなく各社の経営計画をたてるうえで、経費は比較的確実に読み
込み可能でした。ある意味、売上さえ上げる仕組みが出来れば利益は見通せたのです。

しかし、これから、売上も多少上がる期待はありますが、地代や設備投資コストが
膨らむということを予見した上で経営計画の調整をおこなってゆく必要があります。

私が地方都市の経営者の皆さんに「東京の一部はもうすでに完全なバブルに突入し
ていますよ」とお話しても、なかなかピンと来ないという顔をされる方ばかりです
が、現実は着実にコストアップの方向に向かっています。

おそらく調達金利も上がり、設備投資も上がる。人件費も上がる事になります。
そうすると、売上利益をこれまで以上に上げる計画で取り組まねばならなくなります。

これまでのデフレ頭から脱却して、インフレ頭で経営計画を見直す、もうすでにその
段階に入っているといえます。

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■ポイント■

・「新まちづくり三法」による出店エリアの制限

・新たな立地・出店フォーマットの業態開発が必要

・都心部中心街での地代・地価のバブル化

・駆け込み開発による建設コストの上昇

・デフレ思考からの脱却
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船井総合研究所 第五経営支援部 チームリーダー
山本 匡

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