地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.1〜

ショッピングセンター経営のヒント80:

『地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.1〜』

こんにちは、船井総研の山本 匡です。

私は普段、中堅流通・レジャーチェーンや不動産デベロッパーとのお付き合いが
数多くあります。

現在、この業界をにぎわせている話題は「まちづくり三法改正」です。具体的に
は、2008年1月より、商業地域・近隣商業地域・準工業地域を除いたエリアでは
延床10,000平方メートル以上の商業開発を規制する、という法律の変化です。

このため、今後は用途の適合しない郊外型の新規SCは原則として開発許可が下り
なくなります。延床に対する規制ですので、一枚の敷地に複数の店舗が出店する
場合も、合計面積が対象になります。

このため、現在工場地域や住居地域の遊休物件を有している各社は、なんとか来
年末までに賃借テナントを決めて、建築確認をもらい着工しようとやっきになっ
ています。

メーカーや卸の工場や物流倉庫、駐車場として活用している案件で「将来は店舗
に貸すことも検討」していた案件も、ほぼ今年中に決着をつけなければならなく
なります。

●「新まちづくり三法」時代のコスト

一方、大手流通や専門店チェーンにも多大な影響を与えます。これまでのように
郊外に大型SCが開発される毎にテナント入店していれば出店数が増える、という
ことはなくなり、成長戦略を実行するには、現実に店が開発できる新たな立地や、
あるいは都心部中心街に出店できるフォーマットの業態を開発せねばならなくな
ります。

ともあれ、不動産へのマネー大量流入に加えて、こういった背景もあって、現在
地代と地価と建設コストのバブル化がすでに始まっています。土地購入を考えて
いる専門店チェーンはすでに地方都市でも「高くなりすぎて買えない」という
悲鳴を上げています。

入札すると、路線化から割り出した比較的合理的な価格ですら、強気な価格で負
けてしまうのです。

先日の日経MJ3月24日号4面でも私のコメントが紹介されていますが、渋谷・
新宿クラスでは土地取引価格は1.5倍以上になっています。また、郊外都市でも
立地のいい大型物件では、これまでの常識の20〜30%増しの地価、地代になって
きています。

また、駆け込み需要で多くの案件が開発されるているため、建設現場では職人さん
の数が不足しており、結果として建設コストが上昇しています。大手流通は比較的
早い時期からまちづくり三法の情報を入手しており、中小地場企業より先んじて
対策を打っています。

この10年、デフレの環境下で、売上の伸びも苦しい一方でコストも安定していまし
たので、流通だけでなく各社の経営計画をたてるうえで、経費は比較的確実に読み
込み可能でした。ある意味、売上さえ上げる仕組みが出来れば利益は見通せたのです。

しかし、これから、売上も多少上がる期待はありますが、地代や設備投資コストが
膨らむということを予見した上で経営計画の調整をおこなってゆく必要があります。

私が地方都市の経営者の皆さんに「東京の一部はもうすでに完全なバブルに突入し
ていますよ」とお話しても、なかなかピンと来ないという顔をされる方ばかりです
が、現実は着実にコストアップの方向に向かっています。

おそらく調達金利も上がり、設備投資も上がる。人件費も上がる事になります。
そうすると、売上利益をこれまで以上に上げる計画で取り組まねばならなくなります。

これまでのデフレ頭から脱却して、インフレ頭で経営計画を見直す、もうすでにその
段階に入っているといえます。

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■ポイント■

・「新まちづくり三法」による出店エリアの制限

・新たな立地・出店フォーマットの業態開発が必要

・都心部中心街での地代・地価のバブル化

・駆け込み開発による建設コストの上昇

・デフレ思考からの脱却
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船井総合研究所 第五経営支援部 チームリーダー
山本 匡

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