SC経営のヒント93:『自転車が溢れるショッピングセンター』

ご挨拶
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おはようございます。
船井総研、野田でございます。

いつもご愛読いただき有難うございます。

毎年この時期はショッピングセンターのオープンラッシュが続きます。
出だし好調なショッピングセンターは、よりよくなり、出だしつまずいた
ショッピングセンターは、より不安定になるという現象は、年々強く
なっているような気がします。

株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎

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ショッピングセンター経営のヒント93:

       『自転車が溢れるショッピングセンター』

●近隣のお客様の来店割合に注目する

ショッピングセンターは、平日:土日の来店客比率が1:3にもなる
ところが多いのですが、いくら大型SC、広域商圏型のSCといえども
土日だけ商売をしていたのでは成り立ちません。

やはり日々来店していただける近隣のお客様がどれだけ多いかが鍵を
握っています。
そのひとつの指標として、
「近隣客=徒歩、自転車で来店されるお客様」を
見てみることも重要であると思います。

●地元のお客様により良いサービスや空間を提供する努力

今秋オープンした様々なショッピングセンターの中で、大繁盛している
ショッピングセンターがいくつかあります。
その中でも超大型でないながらも圧倒的に近隣のお客様を集客している
ショッピングセンターをご紹介します。
名古屋駅から車で10分ほどのところにオープンした
「ヨシヅヤ名西店」です。

西区名西の東芝の敷地に建てられた、
6,000坪ほどのショッピングセンターです。
食品SMのYストアをはじめ、スポーツデポ、ベビーザらス、
ABCマート、くまざわ書店、ドトールコーヒー、
ジュピター、ひな野さん等が入っています。

何が凄いのかというと、その自転車の数。
オープン日には、600台の常設駐輪場では到底足りず、
駐車場を削ってまで対応していたその数1,500台!!
食品SMの20台のレジは連日フル稼働です。
日常購買品である食品を買いに
多数の近隣のお客様が訪れているようです。

ヨシヅヤ名西店自転車置き場

数年前に近隣の商業施設も閉鎖され、待ち望まれた出店であったことは
間違いありませんが、それだけではなく、やはり細かいサービスや配慮を
されていることが地元のお客様に愛される要因なのではと思います。

店内に入って驚くのは、2005年「愛・地球博」でスペイン館の外壁に
使用されていたオブジェ(セロシア)が中央吹き抜けに設置されていること。
地元企業ならではの取り組みです。地元の企業でも万博が終われば、
それでおしまいというとこも多かったのではないでしょうか。

ヨシヅヤ名西店スペイン館の壁

また、ヨシヅヤさんが取り組んでいる「MOTTAINAI」運動
(2004ノーベル平和賞、ワンガリ・マータイさん提唱)が店内外で
展開されています。
立体駐車場につけられた外看板は
名古屋周辺の高層タワーからでもしっかりと
見えるほど大きなロゴです。

自転車で来店された方には、「無料自動空気入れ」も設置されています。
近頃自転車の空気を入れられるところも少なくなってきているので、
嬉しいサービスです。

通常バックヤードなどにある店長室もここでは店内にあり、
常にお客様の近くにいようというメッセージが伝わってきます。

ただ立地やテナント揃えの良さだけではなく、
地元のお客様により良いサービスや空間を提供しようとする努力が、
今の大繁盛を支えているのだと思います。

ヨシヅヤ名西店外観1

ヨシヅヤ名西店外観2

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 * 経営コンサルタント
 * 発行人:株式会社船井総合研究所 野田 陽一郎
 * ホームページ:http://funai-sc.com/
 * E-MAIL:< info-sc@funaisoken.co.jp >

SC経営のヒント92:SCリニュアルに向けて vol.4 『MDにかたよりがないか』

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。

今回は「SCリニュアルに向けて」の第4弾として
「MD」のバランスについてお伝えします。

MDのバランスをとったはずの店舗入れ替えが、
気づけばSC内のMDのバランスを
崩してしまっていることがあります。

今回は、その「MDの落とし穴」を中心にお伝えします。

株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡

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ショッピングセンター経営のヒント92:

『SCリニュアルに向けて vol.4 MDにかたよりがないか』

●SC内のMDのバランスを考える

都心の駅ビルなどですと、
様々な専門店から入居の申し込みがあり、
結果として時流に乗って人気の高い店を
数多く入れることが可能ですが、
郊外型のSCですとなかなかそうはいかず、
探して探してご入居いただくということになりがちです。
ただ、そこで「入ってくれるのだから」という理由で入れると、
同じような店ばかりになってしまって、
一方で欠落商品があるというような、
MDがアンバランスな状態になる可能性があります。

たとえば、ベーカリー店の売上の半分以上は菓子パンであり、
菓子やファーストフードの店が
リニュアル後に多く入居すると影響が出ます。
大きなSCでは問題になりにくいですが、
小さなSCのベーカリー店にとっては影響は深刻です。
ファーストフード店もテイクアウトの比率が多く、
飲食店だと思っていたら
実態は惣菜物販店だったということもあります。

衣料品やファンシー、雑貨店などは、
結果として同じような商品を扱う店ばかりに
なってしまうケースがあります。
特に、ナショナルチェーンほど似たようなターゲットと
価格の商品がかぶることが多いです。
まず誘致対象企業の店頭商品をよく見て、
他のテナントと同じような価格・仕様の商品が多くないか、
目で見て確かめてみる必要があります。
また、既存店の店主や店長に売上構成比の高い品目や客層を
ヒアリングしておくことも重要です。
入居後も、アパレル関係は毎年商品が変化してゆきますので、
年々どこかと似たような商品になってゆくチェーンもあります。
そういったことも予測の上で、
新規導入店舗を決定するとよいでしょう。

テナント誘致企画者は、店単位ではなく商品群や客層単位で
商売を理解しておくことが大切です。
同じようなSCが世の中に多くあるのに、
「なぜかうちのSCはこの部門が不振だ」という場合は、
たいてい面積が大きすぎるか、似たような商品を扱う店が多すぎるか、
に起因していることが多いです。

●同じ業種の商業集積の注意点

一方、大商圏のSCで、政策的に同じような業種や商品を
集積させる試みもあります。
原則的に同じ業種を多数集積させた商業集積は、
都心の大商圏でないと成立しません。
秋葉原の電気街や神田のスポーツ店、
書籍の街などは東京の中心部だからこそ成立したわけで、
小商圏であえて特徴を出そうとして結局失敗している例もあります。
なんとなく同一業種が集まっていると
集積の力が発揮されそうに思えますが、
許容量を超えると全店不振になりますので、
これは市場規模を冷静に見て、
食い合わない範囲での集積にとどめることが重要です。

一方、集積力を生かして、ラーメン博物館のように広域に
プロモーションを展開して、
商圏を拡大する効果があるならば効果的です。
こういった取り組みは、MDだけではなく
プロモーションとの連携が欠かせないため、
分かりやすいコンセプトで施設が統一され、
一体的なオペレーションができていることが重要です。

●[次回以降の予定】
SCリニュアルに向けて vol.5 テナント個々のパワーはどうか
SCリニュアルに向けて vol.6 関連業者さんの選定
SCリニュアルに向けて vol.7 スケジュールと体制
SCリニュアルに向けて vol.8 経営体制はこれでいいのか

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 * 経営コンサルタント
 * 株式会社船井総合研究所 山本 匡
 * http://funai-sc.com/
 * E-MAIL:< info-sc@funaisoken.co.jp >

SC経営のヒント91:『チラシを一切うたない大繁盛店スーパー』

ご挨拶
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こんばんは。
船井総研、丹羽英之でございます。

久し振りに絶賛したいスーパーに出会いました。
百聞は一見に如かず。
やはり、足を運んで体験・体感することが大切ですね。
いつもご愛読いただき有難うございます。

株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之

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SC経営のヒント91:『チラシを一切うたない大繁盛店スーパー』

一昨日、お付き合い先の方々と山梨県内の
店舗視察クリニックをしてきました。
その中で、参加された方々が絶賛したのが
Aコープこま野白根店でした。

こま白根店の最大の特徴は「チラシを一切うたない」ところにあります。
折込チラシの廃止によって、年間3,000万円近く削減された
販促費分のコストは、調味料や日用品などの生活必需品の値引きに当て、
砂糖97円、醤油97円など120アイテムを3ヶ月間、
格安で販売する「ショックプライス」や「冷凍食品が半額の日」などを
設定する方法に切り替えています。
※折込などの多額の販促費用をかけてのチラシ配布は行っていませんが、
手配りや店内にチラシを置いています。

この日の価格も、もやし8円(一般価格は28円)、
菓子パン(ヤマザキ)60円、お弁当200円など目を疑うばかり。

また、この日は定期的に開催されるポイント10倍デーだったこともあり、
その集客力は凄く、平日にもかかわらず、駐車場は満車、
300坪のフロアはお客様でごったがえしていました。
年間で34億円を売上る大繁盛店はスタッフもよく声がでていて、
お客様が本当に楽しそうに買い物をしているのが印象的でした。

このAコープがある白根は町村合併により、
現在は南アルプス市になったものの、3km圏内人口2,9万人と
決して商圏的に恵まれている立地ではありません。
むしろ足元商圏が薄く、過疎高齢化していく町にあって、
買上額は少ないが来店頻度の高いお年寄りには
積極的に話しかけて名前を覚え、
次回来店を促進させているのです。

ポイントカードを導入している店舗の多くは、このような企業に憧れ、
チラシ回数を減らして、その浮いた費用を
商品価格の割引にあてるなどして来店客の上客化を目指します。
しかし、現実はチラシの回数を減らすと目に見えて売上が下がるため、
結果としてポイントカードとチラシの
2つの販促を継続するところがほとんどです。

今回の視察を通じてわかったことは、
チラシもポイントカードもツールであって、
当たり前ですが、それだけではお客様は集まらないということです。

チラシ回数を減らすと売上が下がる店舗の多くは、
チラシを入れるときにしか企画を準備しなかったり、
再来店への仕掛けがないところがほとんどなのです。

販促とは、お客様が喜ぶ商品(価格)と
売場(企画)が準備できたことを
効果的にお知らせする手段でしかないのです。
チラシを入れなくても、毎日お客様に喜んでもらえる商品(価格)と
売場(企画)に挑戦している、そんな店舗が皆さんのまわりにも
あることを励みに、ぜひ次年度の販促を見直すきっかけに
してもらいたいものです。