【SC経営のヒント591】近隣商圏の強化

商業施設にとって、コロナで大きく変化することになったことは「商圏の縮小」です。
大都市は観光客や通勤客・買い物客などの流入人口が減少しました。
郊外では大都市への流出が減少した分、
近隣の商業施設や通販に需要が流れることになりました。

多くのSCではアパレル・外食を中心にテナントの撤退が相次ぎ、
新たな店舗を導入しようにも苦労されている局面かと思います。
こういう環境下で、業績を下支えしているのは「生活型業態」です。
スーパー、ホームセンター、ドラッグストア、実用衣料、家電などは好調店舗が多く、
一方で苦戦しているのは外食と高付加価値系のアパレル・雑貨などとなります。

SCにとっては、この「小商圏化時代」を乗り切るために、
生活型・低単価業態を充実させる必要があります。
具体的には「食品専門店の導入」「SC定番となりつつある低単価スーパーストア導入」
「生活サービス系業態導入」などが必要になってきます。

これまで好景気の間は、より高感度・高付加価値な業態を導入しようという流れでしたが、
今年からその路線は見直さざるを得なくなっています。
賃料水準は下がらざるをえないものの、空き床を減らし集客力を高めることのほうが優先されます。

足元の状況はあと数か月や半年では解消しようがないため、
全体として「小商圏」「生活型」「低単価」の有力店舗を導入することを
急ぐ時期に来ていると思います。
すでに可能なことに取り組んでいるSCは増えてきていますが、
ぐずぐずしているとライバルSCに有力店を奪われる状況になりつつあると考えるほうがよいでしょう。

また、イベント販促も近隣商圏強化を主体として
「低予算」「高頻度」で実施してゆく方向での方針転換が同時に必要となります。

【SC経営のヒント590】高級食パン専門店に見る!MS視点でのチャンスの捉え方!

船井総研の佐伯です。

矢野経済の直近の国内パン市場は1.5兆円で、
100%を超える成長率をここ数年維持をしているようです。
その牽引役となっている一つが、高級食パン市場となります。
その火付け役である乃が美は、コロナの影響もあり好調が続いているのか、
テレビCMも直近では打っています。
店舗数も、気づけば全国に192店舗と急拡大をしています。
この市場は自家需要だけでなく、お土産・ギフト需要も捉えて大きく伸びてきました。
 
ライフサイクル理論で考えると、
今後単品特化型専門店が食パンに限らず増加することが想定されます。
ではどのパンが可能性があるのか。
これはMS(=国民一人当たり消費支出金額)が大きいパンのが市場が大きい分、
可能性が高くなります。

食パンも多くの家庭の朝食で食べられており、
コンビニでも扱っていないところがないので、
非常に市場が大きいと言えます。
ただパンの種類別の市場規模データはざっと検索したところ、
見当たらなかったので、代理指標としてマイナビニュースにあがっていた
「好きなパンランキング」(調査時期:2020年2月21日、調査数:510人)を参考にしてみます。

このランキングによると、好きなパンランキングは以下ですね。
1位「カレーパン」(15.3%)
2位「あんパン」(9.2%)
3位「総菜パン」(9.0%)
4位「クロワッサン」(8.2%)
5位「食パン」(7.1%)
6位「クリームパン」(6.5%)
7位「メロンパン」(5.1%)
8位「チョコパン」(4.5%)
9位「フランスパン」(4.3%)
10位「明太フランスパン」(4.1%)

食パンよりもランキング上位が4つもあります。
一番人気のカレーパンは、実は単品高級専門店が出始めています。
札幌では「カレーパンだ。」というお店が狸小路通りに進出しており、連日大行列です。
東京でも、東京駅に「Zopf カレーパン専門店」が
コロナの影響はありますが、並んでいることもまだまだ多いです。

またあんパン専門店で調べても、多少出てきます。
ざっとの印象ですが、専門店の店舗数は「食パン>>>>>カレーパン>あんパン」ではないでしょうか。
好きなランキングで他の商品を上げている人でも、
食パンは食べるケースが多いと思いますので食パンの方がMSが大きいとは思いますが。
カレーパン、あんパンの専門店はまだまだこれからも立地によっては、いけそうな気がします。

MSという1つの指標・考え方ですがこのようにどんなマーケットが次に可能性がありそうか?
考えるきっかけになります。
各分野で概算でもMSサイズを算出してみると、
新しい発見が常にあり、ぜひ実施していただければと思います。

【SC経営のヒント589】コロナ時代の新提言!これからのSCプロモーション戦略、戦術の全てを伝えます

船井総研の丹羽です。

これまでのSCプロモーションは、
施設集客を上げるのが施設デベロッパーの役割で、
入館したお客様の買上率を上げるのがテナントの役割でした。

そのためイベントを中心にいかに施設集客を上げるかがポイントで、
不特定多数へのアプローチが多く、
必ずしも買いのモチベーションが高いお客様が多いとは限りませんでした。

コロナ禍において、施設集客がもとに戻ることは考えづらく、
また、平均的な滞在時間も減ってきています。

それらに対応するには、買いのモチベーションの高いお客様を特定し、
決定率のあがるプロモーションへの切替
が重要になります。

つまり、これからのSCプロモーションは
テナントの買上率アップを施設デベロッパーが後押しすることがポイント
になります。

例えば、
プレミアム商品券販売、送料無料、
バンドルフェア、シークレットセール、
受注会、試食会、試飲会、頒布会、
ワークショップ、体験、教室

これらを、各カテゴリーのキャンペーン、セール、フェア、イベントとして企画し、施設の取り組みとして、商圏内、施設内での認知度アップを図ることが重要です。

特に、GoToのような国の政策、エリアの政策は、施設の政策、各カテゴリーの政策と連携させ
一気通貫してたキャンペーン、イベントにしていくことが認知をあげやすく、
買上率、決定率アップしやすいです。

また、これからのSCプロモーションでは、
不特定多数に向けたプロモーションから特定多数に向けた
ダイレクトプロモーションへの切替がポイントになります。

お客様の利用実態によって、来店をコントロール(分散)させることで
3蜜を避けつつ、決定率の高い接客・サービスが可能となります。

売上を作っていくには、売上のピーク(トップ10週/52週)で、
商品と人(スタッフ)のチャンスロスをしないことが変わらぬ原則です。

コロナ禍においても、このトップ10週での売上を落とさないためにも
前後1週と期間を長くとり、顧客の来店をコントロールしていくことが必須です。

例えば、各テナントにおいては、
来店前に事前接客をしておく、在庫を見える化しておく、
さらに、来る日時を指定するといったことが必要になってきます。

また、曜日、時間帯別に接客方法、売り場作りを変えていくことが決定率アップには重要です。

これらの各テナントの取り組みを、各カテゴリーの企画とし、
施設、駅、商圏内のお客様に効率よく認知を上げていくプロモーション活動をしていくのです。

そのためには、入館客数、駅乗降客数はもちろんのこと、
各フロアごとの入店率、買上率をKPIとしておさえておくことが必要ですし
それらが、コロナの影響でどう推移しているかを数字として捉えていくことが大切です。

また、withコロナ時代の販促プロモーションの戦略立案、プロモーションコストの最適化のためにも商圏の変化、プロモーションの費用対効果を可視化していくことが必須です。

コロナの影響を踏まえた適切な販促プロモーションの実施を可能にするのが、
今回のシナラの商圏調査プロモーションパッケージです。

実績、事例を詳しく知りたい方は、 10月29日(火)に開催する下記セミナーにご参加いただければ幸いです。
https://us02web.zoom.us/webinar/register/4016021394797/WN_deRZV4JlRiiqwr8HMATwqQ

【SC経営のヒント587】商業施設によくある誤解とその解決策とは?

船井総研の山本です。

商業施設というものは日常的にありふれたものであり万人に親しみがあるものです。
それゆえに勘違いされている部分がとても多く、特に金融機関に誤解されている点が多いです。
筆者が過去に金融関係の方々と協議して驚いたのは以下のような考え方をされている方が多いということです。

お客さんは来ているので、販促費を削ればコスト削減になるのではないか
→ 集客・売上も減るということが想像できていないようです

売場が荒れていてひどい、社員にやる気がない
→ コスト削減で人員を減らした結果手が回っていない、原因と結果が逆です

無駄な在庫を減らせば資金効率が改善する、売り場の見通しも良くなる
→ 在庫を減らせば集客力が落ちて売り上げも下がります

こういった誤った判断のもとに経営されると、
結果的に目先のコストは下がっても売上利益も下がってダウンスパイラルに陥る・・・
そういう失敗を多くの会社が行ってきたにも関わらず、
いまだにそのような誤解が跳梁跋扈しているというのが実態といえます。
もしかして、「ほかに打つ手が思い当たらない」というのが本当の理由ではないでしょうか。

一番目は、販促費の総額は変えずに、より効率的な媒体や手法にシフトしてゆくことが必要です。
広告代理店に丸投げするだけで自分たちで何も考えていなければそれはできず、必死になって調べ考えることです。

二番目は、そもそも立地が悪くて売れないなら撤退するかどうかの判断が必要になり、
そうでなければ投資して攻めの体制に変更するかどちらかの判断が必要です。

そのままズルズルでは徐々に衰退するのみです。
商圏や競合を調べて時期を決めて決断せねばならないことです。

三番目は、在庫の総額を変更せずに持ち方を変えることです。
その店の立地特性や客層・来店目的を入念に調べ、より高粗利で収益が得られる品揃えにシフトしてゆくことです。

どれも書くのは簡単ですが実現するのは容易ではないことばかりです。

過去に弊社がお手伝いした場合においては、
販促担当者を集めての勉強会や、バイヤー研修を実施しながら数か月かけて取り組んでゆきました。

ある程度分かっているがなかなかできないことを本腰入れて取り組まないとならない、というのが本当のところ。
アイデア一発、思い付きでなんとかなるほど甘い世界ではなく、
敵はあまりにも大きく険しいという認識のもとに取り組まねばなりません。

時間をかけられない場合は、外部専門家を活用するのが早道です。