SC経営のヒント131:商業ビルの基本を知ろう3

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
2007年も残すところあとわずかになりました。
今年やり残したことは今年中に片付けて新年を迎えたいですね。
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■商業ビルの基本を知ろう 3
□人の流れは、最も人を集めるものと、その次に人を集めるものの間に生まれる
人を集めるもの=集客施設=TG(トラフィック・ジェネレーター)とも
呼びます。たとえば、大都市で最も人を集める拠点はターミナル駅です。
そして商業地の中では、中核となる百貨店がその次に集めます。ですので
渋谷も新宿も駅から百貨店の間に主要導線が形成されます。
これは、冷静に考えれば当たり前のことなのですが、あまり意識されて
いないことです。郊外型商業施設ですと、駐車場と食品売り場の間の導線が
最も強いものになります。駐車場が1箇所にかたまっているような場合は、
より顕著になります。駐車場~食品売り場の導線に乗ってこない場所は
必然的に通行数が減少します。
同じことは、ロードサイドにもいえます。ある街でロードサイドが栄える
ポイントは、地域の核となる大型SCにはさまれたエリアになります。
そういう場所がなければ、その大型店に近い場所から栄えます。
ロードサイドの場合は路面と異なり「場所の有無」が重要になりますから、
たとえばインターチェンジ近くに用地が多く出てきたためにインター付近が
ロードサイド銀座になったり、あるいは新しい道路ができるときに、
こぞってチェーン店が出店してくるのです。
SCでいえば、食品売場と店前の平面駐車場がこのTGに相当します。
このことは、立地の良否を判断する上で極めて重要なことです。エリアの
集客の核はどこか、その核の集客力はいかなるものか、そこから導線上
無理なく誘導できるか。それによって自社の出店する立地の良否が
決定されてしまうのです。
□エリアの集客力は、核の集客力で決まる
核となる大型SCの集客力がまず商圏を開拓します。そこに業種別大型専門店が
進出し、核店舗の売上を奪いつつ、シェアを高めてゆきます。核店舗と周辺の
大型店が相乗効果を生むことで、さらに商圏が拡大します。こうして、
エリアの集客力は高まります。
ですので、キーポイントはそのエリアの核となる店がどこで、それは
どれほどの集客力を持つものなのかという見極めが、エリアの集客力を
見定めるポイントになります。
ロードサイドとて、核らしい核がなく形成されているものはさほど大きな
商圏にはならず、一方で大型SCと大型専門店が林立するゾーンは商圏が
広域に広がり、特に土日の集客力が飛躍的に高まります。
□立地がいいとは、不特定多数の買い物客が店前を多く通行することである
これはロードサイドとインテナント・路面などでは状況が違うように
思われますが、いずれにしても通行量が多く人目に触れやすいところほど
いい立地といえます。
そういう一目で見て分かるような場所はすでに押さえられてしまって
いますから、その周辺で探すほかはないというのが実情ですが。
ただし、どんな店でも立地さえ良ければよいというものではありません。
「業種特性」の考慮が必要です。
業種特性でひっかかるのは、購買目的・動機上の特性と、限界賃料の2つです。
たとえば家具店は目的購買ですから、ひっきりなしに通行客が多く入店が多いと
むしろ困ります。買いに来たお客さんにだけしっかりアプローチをすることが
重要です。またリサイクルショップなど、あまりに賃料が高いと坪効率上の
限界から賃料を払いきれない業種場合は、いい立地であったとしても賃料で
あきらめることになります。
たとえば人に見られると恥ずかしいような店の場合は、立地がよければ売上が
上がるとは限りません。業種特性とは、このようにお客様の購買行動に
のっとって判断される必要があります。
□需要額と充足度
小売業はある地域で獲得される商圏の大きさと、それに対する店の充足度の
バランスで1店舗あたりの売上が決まります。たとえばSCで
一業種一店舗であれば(書籍やゲームセンター等)、SC全館の売上により
その店の売上が読めます。
また、飲食店や雑貨店などのグロスの売上が読めれば、それを何店舗で
シェアするかによって、一店舗あたりの繁盛度合いも予測可能です。
これはSCが成功するか否かではなく、入店する自社にとって有利な環境か
不利な環境かによります。
集積の魅力による集客増についてはどう考えればよいでしょうか。
たとえばフードテーマパークなどのように、特定の業種を集積させて、
話題性を高めれば、商圏が拡大し基礎的な集客力が増えます。
ですのでこういう業態の場合は商圏が拡大すれば売上が上がり、
開業とともに商圏が縮小すると売上が下がるという現象が起こります。
通常のSCでは複数の同業種が出店した場合、店の数だけシェアする相手が
増えることになりますから売上は下がります。
もっとも、デベロッパーがそのことに無知なわけではなく、全体の
規模からみたバランスを都度チャレンジしていますので、ときどき、
ある業種が多すぎる、ということが起こります。
供給過剰になると、弱い店から影響を受けやすくなります。
どれもこれも、いわれてみれば当たり前のようなことばかりですが、
原理原則ほど意識しないと見過ごしがちなものもないといえるでしょう。