SC経営のヒント108:これからやってくるNSC開発の波

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、デベロッパー様、専門店企業様が共に注目している
NSCについてお伝えしたいと思います。
今後の皆様のご計画に、参考になればと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■これからやってくるNSC開発の波
有力量販店やデベロッパーのここ数年のSC開発状況を振り返りますと、
2000年前後から、来年あたりまでは巨大なモール開発が盛んでした。
大雑把ですが、1拠点100~150億円で開発し、300億円売り、30億円の
賃料共益費が得られるというビジネスモデルです。大手企業にとっては、
それが全国に50箇所できますと合計の年商は1.5兆円となり、賃料は
1500億円、総投資は7000億円程度となり、なかなかに収益性の高いものと
なります。
もっとも、あくまで皮算用でして、実際には開発に更に費用がかかった
ものと、思ったより売上がいかないので賃料も得られていないもの、
いろいろありますが、だいたいこのような計画に基づいてこの数年間での
成長戦略が実行されたといっていいでしょう。そして、こういった
ビジネスモデルを先行実施した企業の成功例をみて他の企業も追随して
いったわけです。
しかし、今後モールはそう開発できません。大手にとっては次なる
成長戦略が必要で、この成長をモール開発に依存せずにやるとすると、
どういう道があるのでしょうか。
延床面積10,000㎡以内のNSC開発で考えますと、理想的には10億円で
開発して売上40億円、賃料3億円、これを300箇所開発して、総投資
3000億円、年商1.2兆円、賃料900億円といったところでしょうか。一見収益性は
高いようですが、地代負担が大きくなるためモールより収益性は落ちます。
ただ、1万坪前後の土地があればおおむねいろんな用途地域で開発可能と
なります。300箇所つくるのは大変ですが、開発要員をたくさん抱えている
ところは次の仕事をつくる必要があります。
ただこの試算、穴がいっぱいあります。そもそも売場2000坪クラスの
NSCでは40億円も売れる店はあまりなく、最近の事例をみてもせいぜい
30億円代前半です。その要因は、核となるスーパーマーケットではなく、
そのほかの専門店で1店舗1億円以上読み込めるものがあまりないこと、
もう一つはサブキーテナントとなれる5~10億円クラスの専門店がなかなか
見えないということです。また、ローコストでつくろうとするとどうしても
レイアウトに無理が出る。今はなじみの深いテナントに実験にお付き合い
いただいているが、出店者にとってメリットのない計画は長続きしません。
しかし、デベロップメントによって生きると決めたら、開発し続けるしかない。
モールができなければ、できるものをつくるしかない。全国にNSCは
どんどん開発されることになります。
よって専門店にとっては、このような新しいタイプのNSC(ライフスタイル
センターとも言われています)に適合する感度と、しっかり売上利益を出せる
店舗展開がまさに「期待」されているわけです。
モール型SCがどうして成功したかというと、開発や建築のノウハウも
もちろんですが、これだけの売場を埋められる専門店企業が成長したと
いうことが最大要因です。
同様に、NSC事業が成功するかどうかも大手にとってはベンダーともいえる
専門店企業が、NSCでばっちり成功する業態を開発してくれることに
かかってきます。
専門店各社にとっても今後の出店戦略の軌道修正が必要となる現在、
NSCの波に乗るかどうかというのも大きな選択肢ですが、いずれにしても
地域密着型・小商圏業態を研究する必要が出てくるといえますね。

SC経営のヒント107:北の屋台から学ぶ その2

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、前回に続く私が驚いた集客・管理の仕組みを作り出した
ディベロッパーさんのお話をします。
お話を伺った際の感動をより皆様にお伝えしたく、今回も対談形式に
させていただきました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■運営のポイントはどこですか?
店主のマンネリをいかに打破するか?お客様に飽きられないようにするか?
この2つが重要だと考えています。この2つを打破するために、3年毎の
店舗入れ替えをすると共に、客席部分の使用をあえて屋台にすることで、
営業が終了したら全て片付ける。という一見非効率な仕組みにしています。
ここで店主同士の助け合いや会話が生まれることを期待して、あえて
この仕組みを貫いています。(北の屋台では不便さが生み出す
コミュニケーションと呼んでいる)
そこそこに繁盛してくると、挨拶ができなくなったり、クリンリネスが
おざなりになり、目に見えて売上が落ち込みます。このような状況が
出始める前に、全店主を集めて、臨機応変に話し合いの機会をつくるように
しています。
■類似施設については上手くいってますか?
『北の屋台村』をモデルとして、全国に屋台村が20数箇所できているが、
そのうち成功しているのは八戸屋台村「みろく横丁」、青森屋台村
「さんふり横丁」など数箇所です。これまでの経験上、屋台村の成功には
いくつかのルールがあり、上手にいくかどうかはそのルールに添っているかで
決まるように思います。そのルールとは以下のようになります。
1、適正な規模と件数:以前は屋台村は1万人に1軒、10万商圏であれば
  10軒が目安。最近では八戸屋台村「みろく横丁」の事例のように
  7,000人~8,000人に一軒でも成立が可能
2、基本コンセプトの徹底:コミュニケーションの重要性を認識し、
  それを仕組み化
3、地域振興:周辺施設との連携や地産地消を実現する仕入体制
4、オーナー意識の高揚:モチベーションの維持と適切なアドバイス
 (こんな例がある。味が良くてもコミュニケーションに難があり、売上の
  伸び悩む店主に対して、当初コンセプトをよく理解し、運営にも
  協力的な店主に対して、2区画での営業を後押しする。というのも、
  2区画にして団体客に対応できるようにすれば、他店舗との差別化が
  できる一方でコミュニケーションに主眼を置かない形態となるからだ)
5、店舗力より運営力:運営デベロッパーが上記の成功ポイントを
  現場レベルで徹底できるかが最大ポイント
集客、マネジメントの観点で皆様も是非参考にしてみてください。

SC経営のヒント106:北の屋台から学ぶ

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、2回にわたって私が驚いた集客・管理の仕組みを作り出した
ディベロッパーさんのお話をしたいと思います。
私が長年のコンサルティングで出会ったディベロッパーさんの中でも、
地域との連携、テナントさんのマネジメント、お客様の集客の仕組み等
様々な面で、参考になる運営をされています。
皆様も是非参考にしてみてください。
お話を伺った際の感動をより皆様にお伝えしたく、今回は対談形式に
させていただきました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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帯広駅から車で10分、西一条商店街と都商店街の間に『北の屋台村』は
あります。ビルとビルの谷間にある162坪の敷地は、かつては商店街の
中心であった市場でしたが、9年前に火事で消失。うなぎの寝床のような
形状は商業には不向きで、その後は駐車場として利用されていました。
街にかつての賑わいを合言葉に立ち上がった地元メンバーが
『北の屋台村』をオープンさせて6年。162坪の敷地に3.3坪の思い思いの
屋台が17件。今では年間客数174,091人、年間売上高3億4022万円までに
成長し、全国の屋台村構想のモデルとなっています。その発起人であり、
現在もこのプロジェクトを支える中心的人物である久保氏に、屋台村の
成功ポイントについてのお話を伺いました。
■屋台村の発足のきっかけは?
中心市街地に賑わいを取り戻そうと8年前に活動を始めました。当初から
屋台村という構想があったわけではなく、全国の商店街の活性化事例を学び、
そこで商店主同士、商店主とお客様、商店主と仕入れ業者の
コミュニケーションの重要性を痛感いたしました。結果として、商圏相応、
力相応に取り組めそうな屋台村構想へと着地したのです。
■屋台村運営で大切にしていることは?
コミュニケーションを最も大事にしています。いかに仕組みとして
コミュニケーションを密にさせるかを常に意識しています。例えば、
1店舗当たりの面積を3.3坪と小さくしたことも1つです。この3.3坪の
店舗では客席は7~8席しかとることができず、店主とのコミュニケーションや
お客様同士のコミュニケーションが生まれやすいのです。店が狭く、
席数が少ないことで賑わい性が演出しやすい(流行っている感が出しやすい)
という利点があります。
また、それぞれのお店は地産地消を基本としています。帯広は穀物自給率が
約800%の農業、酪農王国であり、それらの産物の大半は東京に出荷して
います。しかし、これらの地元産品には味には問題がないものの、キズものや
半端もの、余剰品などにより出荷できないものも多いのです。これらを
積極的に仕入れる事により、地元産品の応援と普及ができると共に
仕入コストを抑えられ、これらを納品する契約農家とのコミュニケーションが
生まれるのです。これらを納品する契約農家さんは、仕入先であると共に
お客様でもあり、また、新たなお客様を紹介してくれるという様々な利点が
あります。同様に、地元のホテルやタクシー、バス会社との連携により、
中心市街地の賑わい性の核となっています。具体的には、北の屋台村を
利用されたお客様であれば、通常はホテル宿泊者しか利用できない入浴施設を
利用できたり、タクシーの割引特典があったり、バス停の誘致をしたりと
地域の観光施設に対して積極的に参加協力を呼びかけているのです。
これらの活動は地元紙やTVなどのメディアで取り上げられました。
結果として、旅行会社などのエージェントを利用することなく、
パブリシティと口コミだけで、年間利用客174,091人を実現することが
できました。
■参加店舗はどんな方が入っていますか?実際の初期投資や売上はどうですか?
参加店舗は必ずしも飲食経験者ではなく、この『北の屋台村』の理念に共感・
共鳴してくれる方から優先して選んでいます。年齢的にはまちまちですが、
ご夫婦でエントリーされる方が多く、そのほうが上手くいっているようです。
参加店舗からは保証金として、100万円を徴収(後に返還)。個々の店舗は、
店頭・ファサードをいじらなければ厨房への投資のみでそのまま営業が
可能となります。(実際には個々の店舗は店頭・ファサードに100万円から
200万円を投資している)契約は3年間の定期借家契約で、3年後はお客様が
ついていることもあって、周辺の商店街の空き物件への移転を薦めています。
しかし、現実的には屋台村の集客力が高く、再エントリーして残りたいと
いう店舗が大半です。月家賃は固定で8万円、これに共益費2万円が加わります。
(水光熱費は別途)1店舗当たりの平均月売上が140万円で原価率が
30%(42万円)とすると家賃の10万円を引いても、手残りが90万円近くあり、
帯広で夫婦二人で暮らしていくには十分な収入といえます。7~8席を平均で
4回転させないとこの売上は難しく、売上の良い店舗に共通しているのは、
お客様への声掛けや捌き(客あしらい)といったコミュニケーション力が
高い事です。というのも、それぞれのお店の看板メニューは仕組みとして
どの店でも出前が可能なので、商品にお客様がつくことがなく、
お店(店主)にお客様がつくという構図になっているからです。
今回のお話の中でのポイントとしては、以下の通りです。
基本コンセプトの徹底:コミュニケーションの重要性を認識し、それを仕組み化
地域振興:周辺施設との連携や地産地消を実現する仕入体制
次回は、屋台村の運営のポイントとそのまとめまでを、引き続き対談形式にて
お伝えいたします。

SC経営のヒント105:商品の差別化と粗利率の向上を同時に行う

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
4月に入り、静岡での30度を越える異常気象が報告されています。
今年は、昨年以上に季節変動に悩まされることになりそうです。
すぐにハンドルをきる体制を整えておきたいものです。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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■商品の差別化と粗利率の向上を同時に行う
今回も、中国の都市、義烏(イーウー)についてお伝えします。
弊社でお伝えしているこのブログでも、リニューアルに関するハードの
部分や建築の部分以外の、よりソフト、現場の部分のお話になります。
さて、近頃この義烏も日本人バイヤーの方が多く見られるようになり、認知度は
向上しつつあります。概要については以前にも触れましたので、省きます。
このところ、SCのテナント様から商品に関するご相談をいただきますが、
品揃えに関するそのご相談を聞いてみると、新しい商品を入れたいけれど
なかなか見つからない、ギフトショーに行ってみたけれど、思った商品が
なかったというものが多いです。
ご紹介している義烏にも望んでいる商品があるとは限りません。
しかし、靴下などは50%を越える世界生産シェアがありますので、商品によって
日本の数倍から数十倍の品揃えがあります。
やはり、皆様が望んでいる商品は、他店にない商品、粗利率の高い商品です。
中国製品に疑問をいただく方もいらっしゃいますし、現実に日本のレベルに
達しない商品があるのも事実です。
そこはやはり、より高い確率で、「確実な商品」を探していくしかありません。
私どもがご支援する際にも、いくつかの注意点をお知らせしています。
しかし、多少の努力によって、日本では得られない商品を仕入れることが
できます。
他店にない商品は、扱い商品の母数が多い市場から探すほうがより見つかる
可能性は高いですし、高い粗利率も、仕入れ値を下げることによって、高まる
可能性は高いのですから、その市場を使う意味が出てきます。
数十店舗を手がけるチェーン様にスケールメリットが発生するのはもちろん
ですが、地元主導型SCで1店舗を守られているテナント様にもメリットの
ある市場だと感じています。
ここで買付けた商品は、まずはメイン商品ではなく、セール用に、
端境期用の商品に、特売商品に試されることをお薦めします。
それが、疑心暗鬼になっている方に仕入れを決意していただく最も早い方法
です。セールで売れ、お客様に驚かれることによって、義烏市場のメリット
を実感いただけるからです。