ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
前回の「基本を知ろう」が思いのほか反響が大きかったので、
しばらく続編を続けることとします。
皆様に基本を知っていただき商業施設開発の質の向上につながれば、
私としても大変嬉しく思います。
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■商業ビルの基本を知ろう2
立地と建物の基本に忠実なものは、繁栄します。そこではテナントも
デベロッパーもハッピーです。出店の成否は、商業施設が企画された時点で
すでに決定しているといっていいでしょう。
企画にもさまざまな内容がありますが、まずは施設計画をチェックして、
企画の未熟さゆえの悪影響を受けないように図面を見抜き、早い時期に
デベロッパーと交渉してよい場所に再配置を検討してもらえるよう
働きかけることも必要です。
相手が百戦錬磨の有力デベロッパーですと、あらゆることを承知の上で
計画を策定しますから選べる範囲はほとんどないですが、
そうでない場合もありますので、図面をよく見ることが大事です。
□回遊性
商業施設の回遊性とは、上下階の回遊性と平面の回遊性の二つがあります。
いうまでもなく、回遊性は限りなくよいにこしたことはありません。
回遊性が悪いと「死に場所」が生まれます。そこは後々、貸そうにも
貸せない場所として全体の採算性を悪化させることになります。
そこに入った店には、努力すれどお客様はやってきません。
回遊とは、読んで字のごとく、全体を回遊し循環するように導線が
設定されていることが大事です。
巨大なモールであればセンター通路が広いため、実質的に循環する導線が
設定できますが、細い通路の一本道では行き止まりになってしまいます。
オープンモールの回遊性がよくないのは、一軒一軒ドアをあけて入らねば
ならないことです。そういう抵抗要因を極力排除し、お客様が歩きやすく
なるようにすることが大事なのです。
上下階の回遊性は、これまた同様に上下導線が一本通っていて、
かつスムースに上下できることです。具体的には、エスカレーターが
横から見て×の形で最上階から最下層階まで通っていることです。
ときどきフロアによってエスカレーターの位置がずれたり、あるいは
×ではなく様々な方向を向いてついているビルがありますが、こういうのは
上層階への回遊性を下げているだけで、ろくなことがありません。
設計士のこだわり(おあそび)でエスカレーターのつき方の変なビルが
多数ありますが、テナントにとっていいことなど一つもありません。
後から多額の工事費をかけてエスカレーターを付け替えたビルもあるくらいです。
□お客様は、水の流れと同じく、下に溜まり、上に上がらない
以前、山の斜面を切り開いて作り上げたSCを見ました。下に位置する
場所にはお客様が流れるものの、上のゾーンは閑古鳥でした。
こういう場合は、駐車場を一番上に集中して持つことが必要と思われますが、
そういう計画になっていません。
そもそも、山の斜面を切り開いて商業施設にすること自体に無理があります。
これは立地を見るときも同じです。高台の上、坂の上、丘の上、
こういう場所に商業施設をつくることは避けるべきことです。
もちろん競合らしい競合がなく、施設としての魅力が高ければある程度は
リカバリーできるものの、そもそも論としてよろしくないです。
自転車や徒歩のお客様は来づらいです。
旅館のおみやげ物売場などでも、階段を数ステップあがったところに売店を
つくっている例がありますが、これなどもよくないです。たった数ステップを
上がるのが億劫で、ちょっと見てくれなくなるのです。
数ステップ下げるのならよいです。店を作るなら、なるべく低いところがよいです。
ビルの回遊性は、おおむね基本的な企画の骨格の段階で検討されます。
図面化された後には、計画そのものを変更することは不可能になっています。
ですので、著しく不利な場所でないかどうかのチェックと、ダメな場合の
対応策が協議可能かどうかを判断材料にすべきでしょう。
月: 2007年10月
SC経営のヒント126:売場力を鍛える
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
在庫を置く倉庫を1.5坪×5部屋から、28坪1部屋に変えてよいものかと相談を受け
3万/月賃料が高くなるけれど、やったほうが良いですとお答えしました。その際
在庫管理をわかりやすくしていただいたことで、結果的に商品鮮度のUP、
業務効率の飛躍的向上に繋がり、仮事務所としても使えて、急な商品仕入れにも
耐えられるという一石四鳥くらいになりました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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■売場力を鍛える
先日、インターネットショップを経営されているお客様と話をしていて気づいた
ことがありました。
そのショップさんでは、日用雑貨やアクセサリーをメインに販売されていて、
商品の質や鮮度にはこだわっています。ようやくオリジナル商品の販売にも手が
届きそうです。
以前中国へ一緒に商品買付けに行った際に、アクセサリのネックレスを仕入れま
した。商品自体はキャッツアイを使用した女性受けするものでしたが、その販売
方法に驚いてしまいました。
販売開始しましたと言われてホームページを見ると、そこはオークションサイト。
出品カテゴリはアクセサリーの中でも奥の奥。よほど詳しい方でないと見ない
カテゴリに出品されていました。
また、価格は100円スタート。確かに手法として100円スタートという販促手法が
ありますが、これではせっかくの商品が輝ききれません。社長としては腹を決め
て原価割れからスタートしたわけですが、それが逆手に出てしまった感がありま
した。あまりにも安いとお客様の中で不信感が勝ってしまうものです。
さらに、ページのつくりも、5色セットの商品でしたので、各色ごとに1枚づつ
綺麗な写真が掲載されていたまではいいのですが、その下には事務的に商品重量
などが掲載されていただけでした。
「もったいない!」と思いましたが、やはり結果は思わしくありませんでした。
出品カテゴリは、実店舗における立地にも通じる大切なものですし、価格も超
目玉であっても、そんなに安売り商売をしては労多くして功少なしです。そして
来店いただいたお客様に訴求する店頭(商品トップページ)でチャンスロスを
しているのです。
次回は徹底的に店頭(商品トップページ)をお金をかけずに手間隙かけて作り
こんでいただくことにしました。
せっかく良い商品を揃えても、お客様に価値が伝わらなければ購入いただけませ
ん。そのお客様との最初の接点が店頭なのです。
私が近頃感じるのはインターネットショップさんに限らず、実店舗の皆様も商品
には力を入れられています。しかしそこまでやったのに、(お客様に最も近づく
一歩なのですが)最後のあと一歩が意外と踏み込めていないということです。
店頭での売場力をもっともっと鍛えていく必要があると感じています。
そして店頭での訴求力が売上に与える影響も増えてきています。最近、
ファッション雑誌を定期購買せずに、時々買ってトレンドだけ捉えて、実際買う
ものは店舗で決めるという方が増えているそうです。これも売場力が必要とされ
る大きな流れの1つです。
しっかりとした商品力の上に、より多くの方に伝える販促力、そして価値を伝え
販売する売場力が何より求められていますので、今一度、自店の売場力を確認し、
チャンスロスしている点はないかを再確認して年末商戦に入ってください。
SC経営のヒント125:上手な閉店セールの仕掛け方 その2
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、丹羽英之でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回も前回に引き続きまして、閉店セールの上手な仕掛け方について
お伝えします。
1・2回はデベロッパーの立場での上手な閉店セールの仕掛け方、
3・4回はテナント専門店の上手な閉店セールの対応についてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■上手な閉店セールの仕掛け方 その2
①閉店セールは第1弾が決め手
ショッピングセンターの閉店セールは何といっても第1弾が
決め手となります。SCにはあらゆる業種・業態が揃っている
ため、閉店セールに相乗りしやすい店舗(衣料・服飾・雑貨)と、
相乗りしにくい店舗(食品、飲食、サービス)に分かれます。
基本的に相乗りしやすい店舗は第1弾から、相乗りしづらい
店舗は2弾・3弾(最終弾)の参加となります。
そうは言っても、閉店セールは第1弾がポイントとなるため、
この第1弾の参加店舗数を増やすことが成功の絶対条件と
なるのです。
つまり、飲食・サービスとった店舗は協賛という形で第1弾から
参加してもらうことが重要です。
次に、店頭での賑やかしも非常に重要な成功のポイントと
なりますので、第1弾からの参加の有無に関わらず、全店舗が
店頭・ファサードでの共通の顔出しをしていくことが必要です。
②チャンスロスのない商品・人・売場づくり
一般的に閉店セールの集客(=売上)は第1弾が最も高く、
2弾目が下がり、3弾目(最終弾)に盛り返すという傾向に
あります。
よく第1弾から最終弾に向けて売り減らしをしていくケースが
見られます。これをすると、3弾目(最終弾)に店頭に商品がなく、
客数はきているが、売上がとれなくなってしまいます。
ここでのチャンスロスをおこさせないことが必要です。
今回の閉店セールでもあったのですが、各テナントさんへの
指示で下記の3点が重要となります。
1、十分な商品在庫(各メーカー、問屋さんへの協力商品の
打診、現金問屋への即時買付、店間移動)
2、十分な人員(レジ増員と増設)
3、回遊しやすい売場づくり(アイテム別陳列からサイズ別陳列、
価格別陳列etc)
下記は‘第2弾の速報’と題して送られてきた販促担当者様から
いただいたメールです。
おかげさまで閉店セール第2弾、始まりました。
下記にて速報ご連絡させていただきます。
なお、昨対比は昨年度曜日にあわせてあります。
1.閉店セール第2弾
・9月15日~17日まで
昨対比 141.6%
15日2000万、16日2500万、17日2500万
計7000万のぼり旗を入り口にたててスタートしました。
15日はそこそこ、16日、17日はけっこう客入りしました。
第1弾スタートまではいかないものの、ファッション・
雑貨店を中心にお客様入ってました。
お店のほうもだいぶ慣れて客待ちをそれほど出さずに
販売できたようです。ただ一方で100%切るお店も。
飲食部門を中心に14店舗が負けました。
・9月1日~17日まで
昨対比 約140%
このまま維持できればと考えております。
次回は、テナント専門店の上手な閉店セールの対応をお伝えいたします。
>>SC経営のヒント128:上手な閉店セールの仕掛け方 その3
>>SC経営のヒント123:上手な閉店セールの仕掛け方 その1
SC経営のヒント124:商業ビルの基本を知ろう
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
この1週間、急に秋の気温になりました。
皆様は体調を崩されていないでしょうか。
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■商業ビルの基本を知ろう
商業ビルをつくるのにも、「基本」というものがあります。これは、
デベロッパーにとっても、そこに出店するテナントにとっても、非常に
重要なことです。
残念ながら設計事務所にはこのノウハウがなく、大手の商業デベロッパーでは
ノウハウを蓄積した担当者が設計変更を依頼して何度も吟味した結果が
形になっています。
この基本は多岐にわたりますが、最近良く見かける事例をもとに
考えてみましょう。
以下が「基本」の一部です
□商業ビルのフロア床面積は上下階同じとする
□本館別館など2棟以上に分かれる場合は、大きな棟がより有利になる
□フロアに1ヶ所しかエスカレーターがない場合は、エスカレーターを
出たところから見て大きなほうのゾーンがより有利になる
□オープンモールは回遊性が低下する
1Fは大きく、上層階は床面積が小さい商業ビルというのが数多くあります。
これはいけません。上層階の回遊性が低下します。
郊外型ですと、駐車場をとったために2階の床面積が1階に比べて非常に小さく
なっている場合を見かけます。しかし、こうすると2階の店舗への回遊性が
確保しにくくなります。
都市型のビルですと、ビルの構造上や、斜線制限などで上層階床面積が
どんどん小さくなっていく場合が多いのですが、これも同様で、ただでさえ
上層階の回遊は厳しくなるのに、なおのこと人が上がりにくくなります。
商業ビルは、上下階でフロア面積を変えてはいけません。同じ面積で上から
下まで通っていることが大切です。小さくなっている床に出店した場合、
期待値を下回る集客になることが多く、そういうビルに出店するなら最も
床面積の大きなフロアが最も有利になります。
何故そうなるかといいますと、これは別棟をつくったときの状況と同じと
いえます。2棟以上の建物が開発される場合は、最も大きな棟が有利になり、
それ以外は不利というのが通常です。
同一フロアでもエスカレーター位置が中央ではなく端についていることが
多いですが、エスカレーターを出た位置から見て大きなほうのゾーンに
回遊しやすくなります。
どうも人間は、より大きな空間のほうが自分の期待を満たすと感じて
行動するようです。科学的な根拠は分かりませんが、これまで多数の店舗を
見てきた結論がこれです。
古いビルで制約が大きい場合などは、別の知恵工夫でなんとかせざるを
えないのですが、新築の案件でこのような事例を見ると、基本を知ることの
重要さを感じずにいられません。


