生き残り戦略としての“憧れの本店”

近年、チェーンストアを中心に“憧れの本店”を作るケースが増えています。

憧れの本店とは、SNSを中心に話題性のある「体験」を提供することで、自力集客ができるような店舗を指します。

この憧れの本店では自社の商品が主力商材ではなく、「体験」そのものが商品です。立地も原宿や銀座といった一等地ではなく、都心からアクセスの良い郊外に立地しており、従来のフラッグシップとは異なった、一種のテーマパークのような様相を為していると言っても良いでしょう。

 

例えば新潟の燕三条市にあるスノーピークの本社は、隈研吾氏が設計したスタイリッシュな建物の中に温浴施設やレストランなどが設置され、スノーピークの製品とともに非日常感を体験することができます。

ここで重要なのは、あくまで体験が“主”であり、製品は“従”であることです。この施設には物販スペースもあるものの、その場で購入させることを目的とはしていません。

スノーピークのコンセプトが反映された統一感のある施設の中で過ごしてもらうことで、スノーピーク自体の“ファン”となってもらい、後日オンラインストアや近くの店舗を通して製品を購入してもらうためのきっかけ作りを行なっているのです。

さらに、ここに訪れた顧客がその体験をSNSで発信することで、新たな顧客を開拓してくれる、という側面も持ちます。

 

このように憧れの本店づくりは、洗練された体験を顧客に提供することで、➀製品ではなくブランド自体に興味を持ってもらい、➁これを入口に長く自社の商品を使い続けてもらいながら、➂顧客自体に集客の一部を担ってもらえる画期的な手法なのです。

 

過疎化や高齢化が進む中、出店しているショッピングセンターの立地によっては、基礎集客があてにできないような状況が今後加速していくでしょう。一方、基礎集客がある都心の商業施設では、出店コストが高く数も限られてきます。

そのような中でチェーンストアに求められるのは、このような憧れの本店をつくって顧客を生み出し、オンラインストアや近くの店舗と組み合わせて新たな販売チャネルを作ることです。

 

しかし冒頭でもお伝えした通り、憧れの本店は従来のようなフラッグシップとは一線を画した新たな店舗モデルです。単純な商品展示の場としてではなく、顧客が喜ぶ体験の提供場所を作るには、立地やコンセプト設計などで新たな視点を持つことが必要になってきます。

言い換えれば、過去の経験や実績、勝ちパターンが通用しない新たな業態モデルと言えるでしょう。

 

船井総研ではこのような業態モデルづくりもお手伝いをしております。自社だけの憧れの本店を作ってみたい、という方はぜひご相談ください。

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