ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、人気上昇中のジーンズショップ、KAPITAL(キャピタル)さんの
お話をしたいと思います。
私が今までに行ったお店の中でも、特に思いがスタッフさんの接客と
店づくりに反映をしており、大変印象的でした。
皆様も是非参考にしてみてください。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■~商品ではなく、思いを売る~ KAPITALって知ってますか?
先日ある友人の紹介で、東京・恵比寿にある「KAPITAL」という
ジーンズショップに行きました。キャピタルは岡山に本社のある
ジーンズメーカーで、素材・製法にこだわる本格ジーンズを提供する会社です。
http://www.nextone.jp/no050331/sr/sr01.html
このメーカーが、卸・OEMから最終消費者に向けて直接販売をスタートさせ、
現在は岡山、兵庫、京都、愛知、東京、福岡と全国11店舗を展開しています。
http://www.kapital.jp/shop/index.html
このキャピタルジーンズのファンは熱狂的で、例えば山口からわざわざ
岡山まで足を運ぶそうです。私が行った恵比寿にはDuffle with KAPITAL店、
LEGS店、KAPITAL店と半径300m圏内に3店舗があります。私が何より驚き、
共感したのは、その商品とスタッフのレベルの高さです。
まさに、ジーンズにかける熱い思いを凝縮した商品とスタッフだったのです。
だから、それを提供する店づくりも非常に特徴的です。特に、
私が実際にジーンズを買ったDuffle with KAPITAL店は、なんと1Fで
靴を脱いでお店に入るスタイル。商品の展示の仕方もカジュアルショップと
いうよりは呉服屋さんといった感じで、お客様もスタッフから座って接客を
受けるのです。なぜ、靴を脱ぐかという質問に対して、そのほうがお客様と
ゆっくりお話ができるからだという答えが返ってきました。本当に
自信のある良いモノを徹底的に納得してもらうという姿勢を感じました。
また、私が行った日は偶然にも会員さん向けのシークレット企画の日でした。
送られたDMに添付されたキャピタルのキャラクター塗り絵を持ってこられた
お客様に特典があるという日だったのです。なぜ、ジーンズショップで
塗り絵といった疑問はありますが、こういった遊び心を忘れないという
姿勢も大切です。
モノ余りの時代に最も大切なのは、そのお店に本当に良いものをお客様に
伝えたいというメッセージがあるかどうかです。共感・共鳴の時代に
「KAPITAL」のようなメッセージショップが増えることを期待したいですね。
投稿者: sc
SC経営のヒント108:これからやってくるNSC開発の波
ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、デベロッパー様、専門店企業様が共に注目している
NSCについてお伝えしたいと思います。
今後の皆様のご計画に、参考になればと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■これからやってくるNSC開発の波
有力量販店やデベロッパーのここ数年のSC開発状況を振り返りますと、
2000年前後から、来年あたりまでは巨大なモール開発が盛んでした。
大雑把ですが、1拠点100~150億円で開発し、300億円売り、30億円の
賃料共益費が得られるというビジネスモデルです。大手企業にとっては、
それが全国に50箇所できますと合計の年商は1.5兆円となり、賃料は
1500億円、総投資は7000億円程度となり、なかなかに収益性の高いものと
なります。
もっとも、あくまで皮算用でして、実際には開発に更に費用がかかった
ものと、思ったより売上がいかないので賃料も得られていないもの、
いろいろありますが、だいたいこのような計画に基づいてこの数年間での
成長戦略が実行されたといっていいでしょう。そして、こういった
ビジネスモデルを先行実施した企業の成功例をみて他の企業も追随して
いったわけです。
しかし、今後モールはそう開発できません。大手にとっては次なる
成長戦略が必要で、この成長をモール開発に依存せずにやるとすると、
どういう道があるのでしょうか。
延床面積10,000㎡以内のNSC開発で考えますと、理想的には10億円で
開発して売上40億円、賃料3億円、これを300箇所開発して、総投資
3000億円、年商1.2兆円、賃料900億円といったところでしょうか。一見収益性は
高いようですが、地代負担が大きくなるためモールより収益性は落ちます。
ただ、1万坪前後の土地があればおおむねいろんな用途地域で開発可能と
なります。300箇所つくるのは大変ですが、開発要員をたくさん抱えている
ところは次の仕事をつくる必要があります。
ただこの試算、穴がいっぱいあります。そもそも売場2000坪クラスの
NSCでは40億円も売れる店はあまりなく、最近の事例をみてもせいぜい
30億円代前半です。その要因は、核となるスーパーマーケットではなく、
そのほかの専門店で1店舗1億円以上読み込めるものがあまりないこと、
もう一つはサブキーテナントとなれる5~10億円クラスの専門店がなかなか
見えないということです。また、ローコストでつくろうとするとどうしても
レイアウトに無理が出る。今はなじみの深いテナントに実験にお付き合い
いただいているが、出店者にとってメリットのない計画は長続きしません。
しかし、デベロップメントによって生きると決めたら、開発し続けるしかない。
モールができなければ、できるものをつくるしかない。全国にNSCは
どんどん開発されることになります。
よって専門店にとっては、このような新しいタイプのNSC(ライフスタイル
センターとも言われています)に適合する感度と、しっかり売上利益を出せる
店舗展開がまさに「期待」されているわけです。
モール型SCがどうして成功したかというと、開発や建築のノウハウも
もちろんですが、これだけの売場を埋められる専門店企業が成長したと
いうことが最大要因です。
同様に、NSC事業が成功するかどうかも大手にとってはベンダーともいえる
専門店企業が、NSCでばっちり成功する業態を開発してくれることに
かかってきます。
専門店各社にとっても今後の出店戦略の軌道修正が必要となる現在、
NSCの波に乗るかどうかというのも大きな選択肢ですが、いずれにしても
地域密着型・小商圏業態を研究する必要が出てくるといえますね。
SC経営のヒント107:北の屋台から学ぶ その2
ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、前回に続く私が驚いた集客・管理の仕組みを作り出した
ディベロッパーさんのお話をします。
お話を伺った際の感動をより皆様にお伝えしたく、今回も対談形式に
させていただきました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■運営のポイントはどこですか?
店主のマンネリをいかに打破するか?お客様に飽きられないようにするか?
この2つが重要だと考えています。この2つを打破するために、3年毎の
店舗入れ替えをすると共に、客席部分の使用をあえて屋台にすることで、
営業が終了したら全て片付ける。という一見非効率な仕組みにしています。
ここで店主同士の助け合いや会話が生まれることを期待して、あえて
この仕組みを貫いています。(北の屋台では不便さが生み出す
コミュニケーションと呼んでいる)
そこそこに繁盛してくると、挨拶ができなくなったり、クリンリネスが
おざなりになり、目に見えて売上が落ち込みます。このような状況が
出始める前に、全店主を集めて、臨機応変に話し合いの機会をつくるように
しています。
■類似施設については上手くいってますか?
『北の屋台村』をモデルとして、全国に屋台村が20数箇所できているが、
そのうち成功しているのは八戸屋台村「みろく横丁」、青森屋台村
「さんふり横丁」など数箇所です。これまでの経験上、屋台村の成功には
いくつかのルールがあり、上手にいくかどうかはそのルールに添っているかで
決まるように思います。そのルールとは以下のようになります。
1、適正な規模と件数:以前は屋台村は1万人に1軒、10万商圏であれば
10軒が目安。最近では八戸屋台村「みろく横丁」の事例のように
7,000人~8,000人に一軒でも成立が可能
2、基本コンセプトの徹底:コミュニケーションの重要性を認識し、
それを仕組み化
3、地域振興:周辺施設との連携や地産地消を実現する仕入体制
4、オーナー意識の高揚:モチベーションの維持と適切なアドバイス
(こんな例がある。味が良くてもコミュニケーションに難があり、売上の
伸び悩む店主に対して、当初コンセプトをよく理解し、運営にも
協力的な店主に対して、2区画での営業を後押しする。というのも、
2区画にして団体客に対応できるようにすれば、他店舗との差別化が
できる一方でコミュニケーションに主眼を置かない形態となるからだ)
5、店舗力より運営力:運営デベロッパーが上記の成功ポイントを
現場レベルで徹底できるかが最大ポイント
集客、マネジメントの観点で皆様も是非参考にしてみてください。
SC経営のヒント106:北の屋台から学ぶ
ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、2回にわたって私が驚いた集客・管理の仕組みを作り出した
ディベロッパーさんのお話をしたいと思います。
私が長年のコンサルティングで出会ったディベロッパーさんの中でも、
地域との連携、テナントさんのマネジメント、お客様の集客の仕組み等
様々な面で、参考になる運営をされています。
皆様も是非参考にしてみてください。
お話を伺った際の感動をより皆様にお伝えしたく、今回は対談形式に
させていただきました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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帯広駅から車で10分、西一条商店街と都商店街の間に『北の屋台村』は
あります。ビルとビルの谷間にある162坪の敷地は、かつては商店街の
中心であった市場でしたが、9年前に火事で消失。うなぎの寝床のような
形状は商業には不向きで、その後は駐車場として利用されていました。
街にかつての賑わいを合言葉に立ち上がった地元メンバーが
『北の屋台村』をオープンさせて6年。162坪の敷地に3.3坪の思い思いの
屋台が17件。今では年間客数174,091人、年間売上高3億4022万円までに
成長し、全国の屋台村構想のモデルとなっています。その発起人であり、
現在もこのプロジェクトを支える中心的人物である久保氏に、屋台村の
成功ポイントについてのお話を伺いました。
■屋台村の発足のきっかけは?
中心市街地に賑わいを取り戻そうと8年前に活動を始めました。当初から
屋台村という構想があったわけではなく、全国の商店街の活性化事例を学び、
そこで商店主同士、商店主とお客様、商店主と仕入れ業者の
コミュニケーションの重要性を痛感いたしました。結果として、商圏相応、
力相応に取り組めそうな屋台村構想へと着地したのです。
■屋台村運営で大切にしていることは?
コミュニケーションを最も大事にしています。いかに仕組みとして
コミュニケーションを密にさせるかを常に意識しています。例えば、
1店舗当たりの面積を3.3坪と小さくしたことも1つです。この3.3坪の
店舗では客席は7~8席しかとることができず、店主とのコミュニケーションや
お客様同士のコミュニケーションが生まれやすいのです。店が狭く、
席数が少ないことで賑わい性が演出しやすい(流行っている感が出しやすい)
という利点があります。
また、それぞれのお店は地産地消を基本としています。帯広は穀物自給率が
約800%の農業、酪農王国であり、それらの産物の大半は東京に出荷して
います。しかし、これらの地元産品には味には問題がないものの、キズものや
半端もの、余剰品などにより出荷できないものも多いのです。これらを
積極的に仕入れる事により、地元産品の応援と普及ができると共に
仕入コストを抑えられ、これらを納品する契約農家とのコミュニケーションが
生まれるのです。これらを納品する契約農家さんは、仕入先であると共に
お客様でもあり、また、新たなお客様を紹介してくれるという様々な利点が
あります。同様に、地元のホテルやタクシー、バス会社との連携により、
中心市街地の賑わい性の核となっています。具体的には、北の屋台村を
利用されたお客様であれば、通常はホテル宿泊者しか利用できない入浴施設を
利用できたり、タクシーの割引特典があったり、バス停の誘致をしたりと
地域の観光施設に対して積極的に参加協力を呼びかけているのです。
これらの活動は地元紙やTVなどのメディアで取り上げられました。
結果として、旅行会社などのエージェントを利用することなく、
パブリシティと口コミだけで、年間利用客174,091人を実現することが
できました。
■参加店舗はどんな方が入っていますか?実際の初期投資や売上はどうですか?
参加店舗は必ずしも飲食経験者ではなく、この『北の屋台村』の理念に共感・
共鳴してくれる方から優先して選んでいます。年齢的にはまちまちですが、
ご夫婦でエントリーされる方が多く、そのほうが上手くいっているようです。
参加店舗からは保証金として、100万円を徴収(後に返還)。個々の店舗は、
店頭・ファサードをいじらなければ厨房への投資のみでそのまま営業が
可能となります。(実際には個々の店舗は店頭・ファサードに100万円から
200万円を投資している)契約は3年間の定期借家契約で、3年後はお客様が
ついていることもあって、周辺の商店街の空き物件への移転を薦めています。
しかし、現実的には屋台村の集客力が高く、再エントリーして残りたいと
いう店舗が大半です。月家賃は固定で8万円、これに共益費2万円が加わります。
(水光熱費は別途)1店舗当たりの平均月売上が140万円で原価率が
30%(42万円)とすると家賃の10万円を引いても、手残りが90万円近くあり、
帯広で夫婦二人で暮らしていくには十分な収入といえます。7~8席を平均で
4回転させないとこの売上は難しく、売上の良い店舗に共通しているのは、
お客様への声掛けや捌き(客あしらい)といったコミュニケーション力が
高い事です。というのも、それぞれのお店の看板メニューは仕組みとして
どの店でも出前が可能なので、商品にお客様がつくことがなく、
お店(店主)にお客様がつくという構図になっているからです。
今回のお話の中でのポイントとしては、以下の通りです。
基本コンセプトの徹底:コミュニケーションの重要性を認識し、それを仕組み化
地域振興:周辺施設との連携や地産地消を実現する仕入体制
次回は、屋台村の運営のポイントとそのまとめまでを、引き続き対談形式にて
お伝えいたします。
SC経営のヒント105:商品の差別化と粗利率の向上を同時に行う
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
4月に入り、静岡での30度を越える異常気象が報告されています。
今年は、昨年以上に季節変動に悩まされることになりそうです。
すぐにハンドルをきる体制を整えておきたいものです。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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■商品の差別化と粗利率の向上を同時に行う
今回も、中国の都市、義烏(イーウー)についてお伝えします。
弊社でお伝えしているこのブログでも、リニューアルに関するハードの
部分や建築の部分以外の、よりソフト、現場の部分のお話になります。
さて、近頃この義烏も日本人バイヤーの方が多く見られるようになり、認知度は
向上しつつあります。概要については以前にも触れましたので、省きます。
このところ、SCのテナント様から商品に関するご相談をいただきますが、
品揃えに関するそのご相談を聞いてみると、新しい商品を入れたいけれど
なかなか見つからない、ギフトショーに行ってみたけれど、思った商品が
なかったというものが多いです。
ご紹介している義烏にも望んでいる商品があるとは限りません。
しかし、靴下などは50%を越える世界生産シェアがありますので、商品によって
日本の数倍から数十倍の品揃えがあります。
やはり、皆様が望んでいる商品は、他店にない商品、粗利率の高い商品です。
中国製品に疑問をいただく方もいらっしゃいますし、現実に日本のレベルに
達しない商品があるのも事実です。
そこはやはり、より高い確率で、「確実な商品」を探していくしかありません。
私どもがご支援する際にも、いくつかの注意点をお知らせしています。
しかし、多少の努力によって、日本では得られない商品を仕入れることが
できます。
他店にない商品は、扱い商品の母数が多い市場から探すほうがより見つかる
可能性は高いですし、高い粗利率も、仕入れ値を下げることによって、高まる
可能性は高いのですから、その市場を使う意味が出てきます。
数十店舗を手がけるチェーン様にスケールメリットが発生するのはもちろん
ですが、地元主導型SCで1店舗を守られているテナント様にもメリットの
ある市場だと感じています。
ここで買付けた商品は、まずはメイン商品ではなく、セール用に、
端境期用の商品に、特売商品に試されることをお薦めします。
それが、疑心暗鬼になっている方に仕入れを決意していただく最も早い方法
です。セールで売れ、お客様に驚かれることによって、義烏市場のメリット
を実感いただけるからです。
SC経営のヒント104:昨今のファッションビル出店
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研の山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は今までのシリーズと逆の視点から「昨今のファッションビル出店」に
ついてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■昨今のファッションビル出店
この数年、三大都市圏ではバブルの再来といっていい状態に突入しています。
特に中心地の好立地では次々と商業施設が開発されており、各専門店にとっては
出店のチャンスが拡大しています。
さて、今回は新築されるファッションビルについて申し上げたいと思います。
まず、都心のファッションビルや駅ビルは、それなりに賃料も高く入居も
容易ではなかったりしますが、一方でプロモーションも手がけ集客力もあり、
入居すれば成功をおさめられる確率は高いといえます。事例が豊富なので、
出店する側にとっても分かりやすいターゲットといえます。
一方、繁華街路面にできるファッションビルは、これは開発・運営主体も
様々で、大手の百貨店系列からベンチャー企業までいろいろです。また、
プロモーションに関しても独自で手がけるところもあれば、開業販促のみで
あとは何もしない、いわば路面店的なところもあります。
ここ数年の流れを見ていますと、まず、こういった複合ファッションビルに
多く見られるパターンは、建築のデザイン性は高いのですが、館内の
回遊導線があまり考慮されていない場合が多いということです。たとえば
エスカレーターがあっちについたりこっちについたり、あるいは中央部が
オープンモールになっていたり、あるいは変わった形状をしていて中央に
吹き抜けがどんと上がっていて、上層階も右と左が分断されていたりという
ケースが多いです。
特に都心部では大きな敷地が確保しづらく、どうしてもペンシルビルの
ような形状で上層階まで有効活用しようという建築プランにならざるを
得ない場合が多いのですが、物販店舗にとって重要なのは上下階の
回遊性への配慮です。
まずもって、エスカレーターが上下に素直に通っていないビルでは、
上層階に人が上がりにくくなります。また、過剰な建築デザインでもって
吹き抜けが強調されているものも同様です。さらに、オープンモールに
なって外気が導入されると、気候のいいシーズンはいいのですが、雨風寒さ
暑さには非常に弱くなり、ビル全館の回遊性が落ちるという弱点があります。
デザイン性、独自性、ユニークネスを追及するあまり、こういった
原理原則に反している物件に出店する場合は注意が必要です。上層階の
回遊が物理的に困難になっている場合、それは結局客数・売上の低下を
招くという結果を生むことが多いからです。
また、開業後のプロモーションについても、小規模複合施設であれば
入居するショップが各々でプロモーションを手がけるという割り切りも
可能ですから、無用に規模を追求しない商業施設であればよいともいえます。
大きくつくって歩合と販促費も相応にかけるか、小さくつくって、
路面店複合感覚でさほど高くない固定賃料で出店するか。どちらかの
方向性が明確であればそれなりに魅力的といえましょう。
SC経営のヒント103:地域一番店の落とし穴
ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、以前の地域一番店だったSCの意外な落とし穴に
ついてお伝えさせていただきます。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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ショッピングセンター経営のヒント103:
『地域一番店の落とし穴』
適度な競合出店は、現在の店揃えや品揃えを見直す良いきっかけとなります。
競合の出店、それによる売上ダウンというやむを得ずの状況になる前に
何をすべきか?自分たちが変わらず、変わっていくお客様のことを嘆く前に、
時流適応していくことが急務です。
大店立地法の施行以来、それまで地域一番店だったSCが競合SCの出店に
より、苦戦しています。これら苦戦しているSCには共通した課題が
あります。それは特に年末・年始商戦でその傾向が表れています。
その特徴は新店、特に大型店の1人勝ちで、その他の店舗はその商圏内の
位置づけにより、昨年対比が下記のような数字となっているところが
多いようです。
一番店:100%以上・・・大型店、新店
二番店:90%台 ・・・競合出店前の一番店
三番店:80%台 ・・・競合出店前の二番店
四番店:70%台 ・・・競合出店前の三番店
大型店は家族で出かけて時間を潰せるなど、物販以外での集客要素が
ありますし、新店にはこれまでにない買物経験ができることを期待させる
要素があります。一方、競合出店前の地域一番店は規模が小さい上に店揃えに
変化がなく、この両方の要素が欠けているため特に苦戦を強いられているのです。
それではどうすれば良いのでしょうか?増床余地があれば店舗を大型化して、
時間消費する施設を付加することもできますが、多くの既存SCでは
現実的ではありません。そこで、ハード先行ではなく、ソフト(商品と人)の
リニューアルで時流適応していくが必要となるのです。しかし、
10年以上経過しているこれまでの地域一番店では、それまでの業績が
良かったが故に、変わるということに抵抗があるところが多いのが実際です。
お正月の検証をしていても、福袋が売れなくなっている。進物がでない。
単価が下がっている。など、お客様の変化には気づいてはいるものの、では
どう対応するかについて意見が出ないのです。これまでは、地域一番店として、
まず一番に自店を訪れていたので、お店の売りたいものが売れたのに対して、
競合の出店により、二番店、三番店になってしまっているとしたら、それに
合わせた商品と価格で対応しなければならないのです。一言で言ってしまえば、
一番店では比較的グレードの高い商品から売れていたのです。この
グレードはSCの店格(何番店か)と比例しており、店格が下がったらそれ
相応の値ごろな商品が必要となるのです。競合ができ小商圏となり、
客数が減っているのですから、まず、客数を上げていく商品と販促が急務
となります。これはお店をディスカウントストアにしろということでは
ありません。現在の商品構成(MD)に加えて、値ごろな商品を付加
あるいは強化することを意味しています。つまり、各テナント専門店が
MDラインの幅を下に広げることで、入りやすく、買いやすいお店になる
ことが必要なのです。売上が下がったときにまず優先すべきは客数を
戻すことであり、それが業績アップへの第一ステップなるのです。
SC経営のヒント102:再度基本を徹底する
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、テナントさんについてのお話をします。
デベロッパーさんとしても、ここが見えているのと、いないのでは
大きな差があるように思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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ショッピングセンター経営のヒント102:
『再度基本を徹底する』
最近よく耳にすることが、「基本を聞く機会が少ない」という言葉です。
ここで言う基本とは、「商売の基本」であることもありますし、
「売場の基本」であったりします。
店長はじめ、新しく入られたスタッフの方などの研修では基礎研修と
いう形で、最低限のことは学んでいます。
しかし、長い年月を経ていくうちに違った方向でのクセができてしまい、
結果的に、「基本」を実行できなくなっていることもあります。
よく、私どもが実施させていただくSCの店長会においても、基本の
講座に対する要望が多く、「実はこんな基本のところがよくわかっていなかった
んです」と店長会の後に言ってこられる方もいます。
基本は知っているけれど実行できていない、わりと感覚で売場をつくっている
といった店も少なくないようです。基本を踏まえた上で、自店なりの店を
つくっていくのと、最初から我流でやるのでは大きく違います。もちろん、
理解していて実行できている売場と、日々の営業の中で崩れてきている売場も
大きく違います。
店に行くと、同じカテゴリの商品の売場が分断されていたり、離れていたり
します。同じ商品の什器の棚の高さが異なっていたりします。サイズ違いの
商品が手前から奥に向かってL→M→Sと並べられていたりします。
こういった基本は、普段の営業の中では大きくは影響なく過ぎてしまったり
します。ですので、余計に気づかないうちに崩れてしまっていることも
あります。しかし、お客様は気づいているものですし、店側にとっても、
特にリニューアルなどの際、セールの際に大きな違いとなって現れます。
客数の多いお店、来店頻度の高いお店はより顕著にその傾向が出ます。
商品補充などの際にもスタッフの動線が長くなりますし、わかりにくい。
場合によっては、後回しになった商品群が長期に渡り手をつけられて
いなかったといった事態も起こります。
もし、店舗・SCでリニューアル・移転などをされる際には、この基本を再度
見直す良い機会になります。そうは言っても全店・全スタッフで見直そうと
思ったら、こうした場面でしかなかなかできないものです。
現状はどうなっているのか、どのあたりに改善の余地があるのかを見極め、
どのタイミングでそれを見直し、再度徹底させていくのかをいま一度考えて
みてはいかがでしょうか。基本は徹底すればするほど、結局のところ
近道になり自店の競争力に繋がります。
形だけの店舗がブームだけで衰退していくのを見れば見るほど思います。
「再度基本を徹底する」。是非、自店にあったタイミングで実行してみてください。
SC経営のヒント101:SCリニュアルに向けて vol.8 経営体制はこれでいいのか
ご挨拶
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こんにちは。
船井総研の山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は「SCリニュアルに向けて」の第8弾、
最終回として「経営体制」についてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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ショッピングセンター経営のヒント101:
『SCリニュアルに向けて vol.8 経営体制はこれでいいのか』
SCリニュアルに向けての連載も最終回です。
今回は、SCを経営する体制そのものについてです。
1970年代から協同組合形式によるSC開発が盛んになりました。
80年代には大手量販店をキーテナントとした大型のSCも多数開発され、
90年代には現在にも通用するSCが全国に開発されました。
当時は開発すればそれなりに成果の出る時代でしたので、
各地で成功をおさめる事例が出来上がりました。しかし、10年後、20年後の
現在となり、それらの多くがかかえる問題点は、創業期のメンバーから
代替わりがうまく進んでいないということです。その結果、今後SCを
どのように発展させようか、あるいは手仕舞いさせようかということに関して、
長期的な視点が持てなくなっています。
地元主導SCの多くは、旧来の商店街に替わる新しい立地を自らの手で
創造するために着手されたものでした。それが結果として大きな
不動産開発利益を生むと分かり、不動産事業として発展した会社もありますが、
多くは「自分が経営する店」のためにSCを必要としたところから
出発しています。SC開発は、大変な苦労を伴いますが、やってみて
成功したらこれほど楽しいこともありません。だからこれからも夢は
捨てられない、でももう若くはないので次の世代に期待したいが、
なかなかそういう人材も育っていない、というのが多く見られるケースです。
うまく世代交代が進んで、デベロッパーとしてのマインドあふれる経営者が
率いているSCは発展をとげていますが、実態を見る限り、むしろ
そういうケースのほうが少ないといえます。
そういうSCは、今こそ運営する組合・会社の経営体制を見直す必要があります。
たとえば、資産の売却や運営母体の変更を考える時期にきている地元主導SCが
数多くあると思います。同じ場所で苦しんでいてもしょうがないのですが、
これまで心血注いできたものにどのような割り切りをすればよいものか、
着地点が見つかっていないケースも多々あるといえます。
まだ元気なうちにはいろんな処分方法があるのですが、空き床だらけに
なってしまうとどうにもやりようがありません。SCが元気に生きているうちに
次なる手を考えねばならないのです。
私が過去にお手伝いした事例の中には、保有資産を売却して預かり金を清算し、
組合の役割を賃貸床の確保のみに限定し、組合の運営負担を楽にしたケースも
あります。運営会社の人材を生かしつつ経営体制を変革するには
いくつかの手段があります。現在もそのようなご相談をいただくケースが
多くあります。
事業は起業の時は大変ですが希望に満ち溢れています。一方、
手仕舞いは夢よりも現実を冷静に見つめて考える必要があります。
そういう意味で、元気なときほど有利な出口を見つけやすいということが
重要なポイントといえます。
SCリニューアルについて連載してきました。次回からは新たなテーマに
とりくみたいと思います。
SC経営のヒント100:ポイントカードの効果的活用
ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
前回は、リニューアルのポイントは既存顧客からの再来店がいかに
重要かをお伝えさせていただきました。
今回は前回の内容に引き続き、既存顧客の
再来店のポイントについてお伝えさせていただきます。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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ショッピングセンター経営のヒント100:
『既存顧客の再来店はポイントカードの効果的活用にあり』
最近、お付き合い先にポイントカードの特典見直しを検討して
いただいています。
現場では一律還元(100円で1ポイント)が基本ですが、
ポイントカードは優良顧客の顧客囲い込みツールという本来機能に
立ち返っていただくことが大切です。
特に、リニューアルを控えている場合、下記のステップに従って
「よく利用するお客様により多くの特典を与え、そうでない
お客様には積極的に還元しない」という基本原則からスタートします。
STEP1:優良顧客の復活をしよう
2:8の法則にあるように、流通小売の現場では、
上位20%のお客様で、お買上金額の70~80%を
占めていることが多いのです。昨年と今年のお買上上位ランキングを
見比べ、ランキングからはずれた上顧客への個別アプローチが必要です。
(年間100万円を使ってくれる上顧客が一人離反することは、
年間1万円利用するお客様の100人分に相当するからです)
STEP2:生涯顧客への育成をしよう
次に、年間買上金額(累計ポイント)に応じて特典を+@に
していくことを検討します。(買えば買うほど得する仕組みを導入)
例えば、50万円のお買上達成で5千円分のボーナスポイント
(5千円分の商品券でも可)、更に100万円の達成で1万円分の
ボーナスポイント(1万円分の商品券でも可)をもらえるのが理想です。
また、生涯顧客づくりを目標に5年~10年の累計ポイントで
海外旅行などの特典を与えることにも挑戦したいものです。
また、リニューアルを契機にポイントシステムを見直すようであれば、
マイレージ方式の導入を検討すべきでしょう。年(月)実績に応じて、
翌年(月)のポイントにプレミアムがつく方式に切り替えるのです。
(例えば、シルバーで1.2倍、ブロンズで1.5倍、ゴールドで2.0倍など)
STEP3:休眠顧客の復活をしよう
例えば、1年以上来店のない休眠顧客に対して来店促進のDMを
送付します。(基本的には400ポイント以上持っている再来店の
可能性の高いお客様が対象)これは、「リニューアルでの
ポイントシステムの変更に伴い」などの大儀をつけて実施すると、
リニューアルの事前告知にもなってより効果的です。
STEP4:新規顧客の獲得をしよう
これら休眠顧客の復活から漏れ、削除された会員数は、自然増に
任せるのではなく新規入会促進キャンペーンなどで早期に
埋めていくことが必要です。入会促進キャンペーンは人の
出入りが多い3.4月にかけて実施するのが最も効果的であり、
その際に獲得目標(離反・削除会員数×2倍)を
各テナント専門店さんに申告してもらうようにしましょう。
また、このような入会促進キャンペーンでは各テナント専門店での
取り組みに差がないようにすることが大切です。それには、
店長会を通じてモデルとなる店長さんや販売スタッフさんに
ロールプレイングしてもらうなどの機会をつくりましょう。
ポイントカードを導入している店舗は非常に多いのですが、
ポイントカードの本来機能である優良顧客の囲い込みを実現している
店舗は実に少ないのが実際です。特に地元主導型SCにおいて、
ポイントカードは最大の武器になりますので、ぜひ今回のステップに
挑戦していただきたいものです。
皆様から成果の声をいただけることを楽しみにしています。