SC経営のヒント106:北の屋台から学ぶ

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、2回にわたって私が驚いた集客・管理の仕組みを作り出した
ディベロッパーさんのお話をしたいと思います。
私が長年のコンサルティングで出会ったディベロッパーさんの中でも、
地域との連携、テナントさんのマネジメント、お客様の集客の仕組み等
様々な面で、参考になる運営をされています。
皆様も是非参考にしてみてください。
お話を伺った際の感動をより皆様にお伝えしたく、今回は対談形式に
させていただきました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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帯広駅から車で10分、西一条商店街と都商店街の間に『北の屋台村』は
あります。ビルとビルの谷間にある162坪の敷地は、かつては商店街の
中心であった市場でしたが、9年前に火事で消失。うなぎの寝床のような
形状は商業には不向きで、その後は駐車場として利用されていました。
街にかつての賑わいを合言葉に立ち上がった地元メンバーが
『北の屋台村』をオープンさせて6年。162坪の敷地に3.3坪の思い思いの
屋台が17件。今では年間客数174,091人、年間売上高3億4022万円までに
成長し、全国の屋台村構想のモデルとなっています。その発起人であり、
現在もこのプロジェクトを支える中心的人物である久保氏に、屋台村の
成功ポイントについてのお話を伺いました。
■屋台村の発足のきっかけは?
中心市街地に賑わいを取り戻そうと8年前に活動を始めました。当初から
屋台村という構想があったわけではなく、全国の商店街の活性化事例を学び、
そこで商店主同士、商店主とお客様、商店主と仕入れ業者の
コミュニケーションの重要性を痛感いたしました。結果として、商圏相応、
力相応に取り組めそうな屋台村構想へと着地したのです。
■屋台村運営で大切にしていることは?
コミュニケーションを最も大事にしています。いかに仕組みとして
コミュニケーションを密にさせるかを常に意識しています。例えば、
1店舗当たりの面積を3.3坪と小さくしたことも1つです。この3.3坪の
店舗では客席は7~8席しかとることができず、店主とのコミュニケーションや
お客様同士のコミュニケーションが生まれやすいのです。店が狭く、
席数が少ないことで賑わい性が演出しやすい(流行っている感が出しやすい)
という利点があります。
また、それぞれのお店は地産地消を基本としています。帯広は穀物自給率が
約800%の農業、酪農王国であり、それらの産物の大半は東京に出荷して
います。しかし、これらの地元産品には味には問題がないものの、キズものや
半端もの、余剰品などにより出荷できないものも多いのです。これらを
積極的に仕入れる事により、地元産品の応援と普及ができると共に
仕入コストを抑えられ、これらを納品する契約農家とのコミュニケーションが
生まれるのです。これらを納品する契約農家さんは、仕入先であると共に
お客様でもあり、また、新たなお客様を紹介してくれるという様々な利点が
あります。同様に、地元のホテルやタクシー、バス会社との連携により、
中心市街地の賑わい性の核となっています。具体的には、北の屋台村を
利用されたお客様であれば、通常はホテル宿泊者しか利用できない入浴施設を
利用できたり、タクシーの割引特典があったり、バス停の誘致をしたりと
地域の観光施設に対して積極的に参加協力を呼びかけているのです。
これらの活動は地元紙やTVなどのメディアで取り上げられました。
結果として、旅行会社などのエージェントを利用することなく、
パブリシティと口コミだけで、年間利用客174,091人を実現することが
できました。
■参加店舗はどんな方が入っていますか?実際の初期投資や売上はどうですか?
参加店舗は必ずしも飲食経験者ではなく、この『北の屋台村』の理念に共感・
共鳴してくれる方から優先して選んでいます。年齢的にはまちまちですが、
ご夫婦でエントリーされる方が多く、そのほうが上手くいっているようです。
参加店舗からは保証金として、100万円を徴収(後に返還)。個々の店舗は、
店頭・ファサードをいじらなければ厨房への投資のみでそのまま営業が
可能となります。(実際には個々の店舗は店頭・ファサードに100万円から
200万円を投資している)契約は3年間の定期借家契約で、3年後はお客様が
ついていることもあって、周辺の商店街の空き物件への移転を薦めています。
しかし、現実的には屋台村の集客力が高く、再エントリーして残りたいと
いう店舗が大半です。月家賃は固定で8万円、これに共益費2万円が加わります。
(水光熱費は別途)1店舗当たりの平均月売上が140万円で原価率が
30%(42万円)とすると家賃の10万円を引いても、手残りが90万円近くあり、
帯広で夫婦二人で暮らしていくには十分な収入といえます。7~8席を平均で
4回転させないとこの売上は難しく、売上の良い店舗に共通しているのは、
お客様への声掛けや捌き(客あしらい)といったコミュニケーション力が
高い事です。というのも、それぞれのお店の看板メニューは仕組みとして
どの店でも出前が可能なので、商品にお客様がつくことがなく、
お店(店主)にお客様がつくという構図になっているからです。
今回のお話の中でのポイントとしては、以下の通りです。
基本コンセプトの徹底:コミュニケーションの重要性を認識し、それを仕組み化
地域振興:周辺施設との連携や地産地消を実現する仕入体制
次回は、屋台村の運営のポイントとそのまとめまでを、引き続き対談形式にて
お伝えいたします。

SC経営のヒント105:商品の差別化と粗利率の向上を同時に行う

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
4月に入り、静岡での30度を越える異常気象が報告されています。
今年は、昨年以上に季節変動に悩まされることになりそうです。
すぐにハンドルをきる体制を整えておきたいものです。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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■商品の差別化と粗利率の向上を同時に行う
今回も、中国の都市、義烏(イーウー)についてお伝えします。
弊社でお伝えしているこのブログでも、リニューアルに関するハードの
部分や建築の部分以外の、よりソフト、現場の部分のお話になります。
さて、近頃この義烏も日本人バイヤーの方が多く見られるようになり、認知度は
向上しつつあります。概要については以前にも触れましたので、省きます。
このところ、SCのテナント様から商品に関するご相談をいただきますが、
品揃えに関するそのご相談を聞いてみると、新しい商品を入れたいけれど
なかなか見つからない、ギフトショーに行ってみたけれど、思った商品が
なかったというものが多いです。
ご紹介している義烏にも望んでいる商品があるとは限りません。
しかし、靴下などは50%を越える世界生産シェアがありますので、商品によって
日本の数倍から数十倍の品揃えがあります。
やはり、皆様が望んでいる商品は、他店にない商品、粗利率の高い商品です。
中国製品に疑問をいただく方もいらっしゃいますし、現実に日本のレベルに
達しない商品があるのも事実です。
そこはやはり、より高い確率で、「確実な商品」を探していくしかありません。
私どもがご支援する際にも、いくつかの注意点をお知らせしています。
しかし、多少の努力によって、日本では得られない商品を仕入れることが
できます。
他店にない商品は、扱い商品の母数が多い市場から探すほうがより見つかる
可能性は高いですし、高い粗利率も、仕入れ値を下げることによって、高まる
可能性は高いのですから、その市場を使う意味が出てきます。
数十店舗を手がけるチェーン様にスケールメリットが発生するのはもちろん
ですが、地元主導型SCで1店舗を守られているテナント様にもメリットの
ある市場だと感じています。
ここで買付けた商品は、まずはメイン商品ではなく、セール用に、
端境期用の商品に、特売商品に試されることをお薦めします。
それが、疑心暗鬼になっている方に仕入れを決意していただく最も早い方法
です。セールで売れ、お客様に驚かれることによって、義烏市場のメリット
を実感いただけるからです。

SC経営のヒント104:昨今のファッションビル出店

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研の山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は今までのシリーズと逆の視点から「昨今のファッションビル出店」に
ついてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■昨今のファッションビル出店
この数年、三大都市圏ではバブルの再来といっていい状態に突入しています。
特に中心地の好立地では次々と商業施設が開発されており、各専門店にとっては
出店のチャンスが拡大しています。
さて、今回は新築されるファッションビルについて申し上げたいと思います。
まず、都心のファッションビルや駅ビルは、それなりに賃料も高く入居も
容易ではなかったりしますが、一方でプロモーションも手がけ集客力もあり、
入居すれば成功をおさめられる確率は高いといえます。事例が豊富なので、
出店する側にとっても分かりやすいターゲットといえます。
一方、繁華街路面にできるファッションビルは、これは開発・運営主体も
様々で、大手の百貨店系列からベンチャー企業までいろいろです。また、
プロモーションに関しても独自で手がけるところもあれば、開業販促のみで
あとは何もしない、いわば路面店的なところもあります。
ここ数年の流れを見ていますと、まず、こういった複合ファッションビルに
多く見られるパターンは、建築のデザイン性は高いのですが、館内の
回遊導線があまり考慮されていない場合が多いということです。たとえば
エスカレーターがあっちについたりこっちについたり、あるいは中央部が
オープンモールになっていたり、あるいは変わった形状をしていて中央に
吹き抜けがどんと上がっていて、上層階も右と左が分断されていたりという
ケースが多いです。
特に都心部では大きな敷地が確保しづらく、どうしてもペンシルビルの
ような形状で上層階まで有効活用しようという建築プランにならざるを
得ない場合が多いのですが、物販店舗にとって重要なのは上下階の
回遊性への配慮です。
まずもって、エスカレーターが上下に素直に通っていないビルでは、
上層階に人が上がりにくくなります。また、過剰な建築デザインでもって
吹き抜けが強調されているものも同様です。さらに、オープンモールに
なって外気が導入されると、気候のいいシーズンはいいのですが、雨風寒さ
暑さには非常に弱くなり、ビル全館の回遊性が落ちるという弱点があります。
デザイン性、独自性、ユニークネスを追及するあまり、こういった
原理原則に反している物件に出店する場合は注意が必要です。上層階の
回遊が物理的に困難になっている場合、それは結局客数・売上の低下を
招くという結果を生むことが多いからです。
また、開業後のプロモーションについても、小規模複合施設であれば
入居するショップが各々でプロモーションを手がけるという割り切りも
可能ですから、無用に規模を追求しない商業施設であればよいともいえます。
大きくつくって歩合と販促費も相応にかけるか、小さくつくって、
路面店複合感覚でさほど高くない固定賃料で出店するか。どちらかの
方向性が明確であればそれなりに魅力的といえましょう。

SC経営のヒント103:地域一番店の落とし穴

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、以前の地域一番店だったSCの意外な落とし穴に
ついてお伝えさせていただきます。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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ショッピングセンター経営のヒント103:
『地域一番店の落とし穴』
適度な競合出店は、現在の店揃えや品揃えを見直す良いきっかけとなります。
競合の出店、それによる売上ダウンというやむを得ずの状況になる前に
何をすべきか?自分たちが変わらず、変わっていくお客様のことを嘆く前に、
時流適応していくことが急務です。
大店立地法の施行以来、それまで地域一番店だったSCが競合SCの出店に
より、苦戦しています。これら苦戦しているSCには共通した課題が
あります。それは特に年末・年始商戦でその傾向が表れています。
その特徴は新店、特に大型店の1人勝ちで、その他の店舗はその商圏内の
位置づけにより、昨年対比が下記のような数字となっているところが
多いようです。
一番店:100%以上・・・大型店、新店
二番店:90%台 ・・・競合出店前の一番店
三番店:80%台 ・・・競合出店前の二番店
四番店:70%台 ・・・競合出店前の三番店
大型店は家族で出かけて時間を潰せるなど、物販以外での集客要素が
ありますし、新店にはこれまでにない買物経験ができることを期待させる
要素があります。一方、競合出店前の地域一番店は規模が小さい上に店揃えに
変化がなく、この両方の要素が欠けているため特に苦戦を強いられているのです。
それではどうすれば良いのでしょうか?増床余地があれば店舗を大型化して、
時間消費する施設を付加することもできますが、多くの既存SCでは
現実的ではありません。そこで、ハード先行ではなく、ソフト(商品と人)の
リニューアルで時流適応していくが必要となるのです。しかし、
10年以上経過しているこれまでの地域一番店では、それまでの業績が
良かったが故に、変わるということに抵抗があるところが多いのが実際です。
お正月の検証をしていても、福袋が売れなくなっている。進物がでない。
単価が下がっている。など、お客様の変化には気づいてはいるものの、では
どう対応するかについて意見が出ないのです。これまでは、地域一番店として、
まず一番に自店を訪れていたので、お店の売りたいものが売れたのに対して、
競合の出店により、二番店、三番店になってしまっているとしたら、それに
合わせた商品と価格で対応しなければならないのです。一言で言ってしまえば、
一番店では比較的グレードの高い商品から売れていたのです。この
グレードはSCの店格(何番店か)と比例しており、店格が下がったらそれ
相応の値ごろな商品が必要となるのです。競合ができ小商圏となり、
客数が減っているのですから、まず、客数を上げていく商品と販促が急務
となります。これはお店をディスカウントストアにしろということでは
ありません。現在の商品構成(MD)に加えて、値ごろな商品を付加
あるいは強化することを意味しています。つまり、各テナント専門店が
MDラインの幅を下に広げることで、入りやすく、買いやすいお店になる
ことが必要なのです。売上が下がったときにまず優先すべきは客数を
戻すことであり、それが業績アップへの第一ステップなるのです。

SC経営のヒント102:再度基本を徹底する

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、テナントさんについてのお話をします。
デベロッパーさんとしても、ここが見えているのと、いないのでは
大きな差があるように思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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ショッピングセンター経営のヒント102:
『再度基本を徹底する』
最近よく耳にすることが、「基本を聞く機会が少ない」という言葉です。
ここで言う基本とは、「商売の基本」であることもありますし、
「売場の基本」であったりします。
店長はじめ、新しく入られたスタッフの方などの研修では基礎研修と
いう形で、最低限のことは学んでいます。
しかし、長い年月を経ていくうちに違った方向でのクセができてしまい、
結果的に、「基本」を実行できなくなっていることもあります。
よく、私どもが実施させていただくSCの店長会においても、基本の
講座に対する要望が多く、「実はこんな基本のところがよくわかっていなかった
んです」と店長会の後に言ってこられる方もいます。
基本は知っているけれど実行できていない、わりと感覚で売場をつくっている
といった店も少なくないようです。基本を踏まえた上で、自店なりの店を
つくっていくのと、最初から我流でやるのでは大きく違います。もちろん、
理解していて実行できている売場と、日々の営業の中で崩れてきている売場も
大きく違います。
店に行くと、同じカテゴリの商品の売場が分断されていたり、離れていたり
します。同じ商品の什器の棚の高さが異なっていたりします。サイズ違いの
商品が手前から奥に向かってL→M→Sと並べられていたりします。
こういった基本は、普段の営業の中では大きくは影響なく過ぎてしまったり
します。ですので、余計に気づかないうちに崩れてしまっていることも
あります。しかし、お客様は気づいているものですし、店側にとっても、
特にリニューアルなどの際、セールの際に大きな違いとなって現れます。
客数の多いお店、来店頻度の高いお店はより顕著にその傾向が出ます。
商品補充などの際にもスタッフの動線が長くなりますし、わかりにくい。
場合によっては、後回しになった商品群が長期に渡り手をつけられて
いなかったといった事態も起こります。
もし、店舗・SCでリニューアル・移転などをされる際には、この基本を再度
見直す良い機会になります。そうは言っても全店・全スタッフで見直そうと
思ったら、こうした場面でしかなかなかできないものです。
現状はどうなっているのか、どのあたりに改善の余地があるのかを見極め、
どのタイミングでそれを見直し、再度徹底させていくのかをいま一度考えて
みてはいかがでしょうか。基本は徹底すればするほど、結局のところ
近道になり自店の競争力に繋がります。
形だけの店舗がブームだけで衰退していくのを見れば見るほど思います。
「再度基本を徹底する」。是非、自店にあったタイミングで実行してみてください。

SC経営のヒント101:SCリニュアルに向けて vol.8 経営体制はこれでいいのか

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研の山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は「SCリニュアルに向けて」の第8弾、
最終回として「経営体制」についてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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ショッピングセンター経営のヒント101:
『SCリニュアルに向けて vol.8 経営体制はこれでいいのか』
SCリニュアルに向けての連載も最終回です。
今回は、SCを経営する体制そのものについてです。
1970年代から協同組合形式によるSC開発が盛んになりました。
80年代には大手量販店をキーテナントとした大型のSCも多数開発され、
90年代には現在にも通用するSCが全国に開発されました。
当時は開発すればそれなりに成果の出る時代でしたので、
各地で成功をおさめる事例が出来上がりました。しかし、10年後、20年後の
現在となり、それらの多くがかかえる問題点は、創業期のメンバーから
代替わりがうまく進んでいないということです。その結果、今後SCを
どのように発展させようか、あるいは手仕舞いさせようかということに関して、
長期的な視点が持てなくなっています。
地元主導SCの多くは、旧来の商店街に替わる新しい立地を自らの手で
創造するために着手されたものでした。それが結果として大きな
不動産開発利益を生むと分かり、不動産事業として発展した会社もありますが、
多くは「自分が経営する店」のためにSCを必要としたところから
出発しています。SC開発は、大変な苦労を伴いますが、やってみて
成功したらこれほど楽しいこともありません。だからこれからも夢は
捨てられない、でももう若くはないので次の世代に期待したいが、
なかなかそういう人材も育っていない、というのが多く見られるケースです。
うまく世代交代が進んで、デベロッパーとしてのマインドあふれる経営者が
率いているSCは発展をとげていますが、実態を見る限り、むしろ
そういうケースのほうが少ないといえます。
そういうSCは、今こそ運営する組合・会社の経営体制を見直す必要があります。
たとえば、資産の売却や運営母体の変更を考える時期にきている地元主導SCが
数多くあると思います。同じ場所で苦しんでいてもしょうがないのですが、
これまで心血注いできたものにどのような割り切りをすればよいものか、
着地点が見つかっていないケースも多々あるといえます。
まだ元気なうちにはいろんな処分方法があるのですが、空き床だらけに
なってしまうとどうにもやりようがありません。SCが元気に生きているうちに
次なる手を考えねばならないのです。
私が過去にお手伝いした事例の中には、保有資産を売却して預かり金を清算し、
組合の役割を賃貸床の確保のみに限定し、組合の運営負担を楽にしたケースも
あります。運営会社の人材を生かしつつ経営体制を変革するには
いくつかの手段があります。現在もそのようなご相談をいただくケースが
多くあります。
事業は起業の時は大変ですが希望に満ち溢れています。一方、
手仕舞いは夢よりも現実を冷静に見つめて考える必要があります。
そういう意味で、元気なときほど有利な出口を見つけやすいということが
重要なポイントといえます。
SCリニューアルについて連載してきました。次回からは新たなテーマに
とりくみたいと思います。

SC経営のヒント100:ポイントカードの効果的活用

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
前回は、リニューアルのポイントは既存顧客からの再来店がいかに
重要かをお伝えさせていただきました。
今回は前回の内容に引き続き、既存顧客の
再来店のポイントについてお伝えさせていただきます。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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ショッピングセンター経営のヒント100:
『既存顧客の再来店はポイントカードの効果的活用にあり』
最近、お付き合い先にポイントカードの特典見直しを検討して
いただいています。
現場では一律還元(100円で1ポイント)が基本ですが、
ポイントカードは優良顧客の顧客囲い込みツールという本来機能に
立ち返っていただくことが大切です。
特に、リニューアルを控えている場合、下記のステップに従って
「よく利用するお客様により多くの特典を与え、そうでない
お客様には積極的に還元しない」という基本原則からスタートします。
STEP1:優良顧客の復活をしよう
2:8の法則にあるように、流通小売の現場では、
上位20%のお客様で、お買上金額の70~80%を
占めていることが多いのです。昨年と今年のお買上上位ランキングを
見比べ、ランキングからはずれた上顧客への個別アプローチが必要です。
(年間100万円を使ってくれる上顧客が一人離反することは、
年間1万円利用するお客様の100人分に相当するからです)
STEP2:生涯顧客への育成をしよう
次に、年間買上金額(累計ポイント)に応じて特典を+@に
していくことを検討します。(買えば買うほど得する仕組みを導入)
例えば、50万円のお買上達成で5千円分のボーナスポイント
(5千円分の商品券でも可)、更に100万円の達成で1万円分の
ボーナスポイント(1万円分の商品券でも可)をもらえるのが理想です。
また、生涯顧客づくりを目標に5年~10年の累計ポイントで
海外旅行などの特典を与えることにも挑戦したいものです。
また、リニューアルを契機にポイントシステムを見直すようであれば、
マイレージ方式の導入を検討すべきでしょう。年(月)実績に応じて、
翌年(月)のポイントにプレミアムがつく方式に切り替えるのです。
(例えば、シルバーで1.2倍、ブロンズで1.5倍、ゴールドで2.0倍など)
STEP3:休眠顧客の復活をしよう
例えば、1年以上来店のない休眠顧客に対して来店促進のDMを
送付します。(基本的には400ポイント以上持っている再来店の
可能性の高いお客様が対象)これは、「リニューアルでの
ポイントシステムの変更に伴い」などの大儀をつけて実施すると、
リニューアルの事前告知にもなってより効果的です。
STEP4:新規顧客の獲得をしよう
これら休眠顧客の復活から漏れ、削除された会員数は、自然増に
任せるのではなく新規入会促進キャンペーンなどで早期に
埋めていくことが必要です。入会促進キャンペーンは人の
出入りが多い3.4月にかけて実施するのが最も効果的であり、
その際に獲得目標(離反・削除会員数×2倍)を
各テナント専門店さんに申告してもらうようにしましょう。
また、このような入会促進キャンペーンでは各テナント専門店での
取り組みに差がないようにすることが大切です。それには、
店長会を通じてモデルとなる店長さんや販売スタッフさんに
ロールプレイングしてもらうなどの機会をつくりましょう。
ポイントカードを導入している店舗は非常に多いのですが、
ポイントカードの本来機能である優良顧客の囲い込みを実現している
店舗は実に少ないのが実際です。特に地元主導型SCにおいて、
ポイントカードは最大の武器になりますので、ぜひ今回のステップに
挑戦していただきたいものです。
皆様から成果の声をいただけることを楽しみにしています。

SC経営のヒント99:SCリニュアルに向けて vol.7 スケジュールと体制

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研の山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は「SCリニュアルに向けて」の第7弾として
「スケジュールと体制」についてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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ショッピングセンター経営のヒント99:
『SCリニュアルに向けて vol.7 スケジュールと体制』
リニューアルのスケジュールについては、オーナーサイドに
経験のある場合とない場合では勝手が違ってくると思います。
経験の乏しい場合は長い期間をとることが多いのですが、
おおむね着手から1年半~2年以内にはリニューアルオープンする
ことをめどとすべきでしょう。
新築の場合は許認可手続きや工期といった外的要因が一定の目安となって
スケジュールが決まりますが、リニューアルはむしろテナント調整などの
交渉ごとがボトルネックになりやすいといえます。そのため、
「いつまでに話をつけよう」というオーナー側の意思決定が
スケジュール策定の基準となります。
オープンの日取りに関しては、入居する業種の特性に応じて決めることが
よいでしょう。菓子店が多いSCでバレンタインデー中に工事を
しているというようなことがないように考えるべきです。
昨今は定期借家での契約も増えてきましたので、たとえば
5~6年といった契約期間をリニューアルのめどとしてゆくことが
可能となります。
体制づくりとして重要なことは、プロデューサーを軸とした業者さんの
動き方の体制をしっかりと定めることにあります。特に、
プロデューサーが外部の人間の場合、オーナー(依頼者)にとって
どのようなポジションに立つのかということが重要です。
テナントの配置調整、新規テナントの誘致、設計者との仕様調整、
内装やゼネコンとの工事区分や工期の仕切り、C工事指定業者の決定、
などなど、さまざまな利権にからむ意思決定をすることになります。
そのため、プロデューサーに権威付けがなされていないと、
各方面から横槍が入って立ち往生することになります。
一番いけないのは、各業者がすべてオーナーの下にぶら下がり、
プロデューサーの意見ではなくオーナーの意見でだけ動くように
なることです。
ちょっと極端な例ですが、各業者さんの利害対立が鮮明になると、
オーナーを味方にしてプロデューサーを悪者にするようなことをする
業者も出てくることがあります。そういう場合に、オーナーが
毅然とした対応をとることができるかどうかが、最後まで
一丸となった体制をつくれるかどうかのポイントになります。
プロデューサーにとっては、関連する各業者さんが要求するだけの
仕事をこなせる実力経験があるかないかをあらかじめ見抜く力が必要です。
どれだけ期待しても、できないことはできないので、結局は不十分な
結末に終わります。そのプロジェクトの難易度に適した
メンバリングを組むことが、プロジェクトを円滑に進めるための
最大の要素となります。そういった人材との
人脈を有することもプロデューサーの力量のひとつといえましょう。

SC経営のヒント98:リニューアル成功のポイントは、既存顧客の再来店にある

リニューアルは、ハード先行で行うリニューアルではない、
まずはソフトのリニューアルを実現することにあります。
ソフトのリニューアルとは、1つは商品のリニューアルであり、
もう1つは人(サービス)のリニューアルです。
前回のメルマガでもお伝えしましたが、リニューアルするから
業績アップするのではなく、リニューアルをきっかけとして、
この商品と人(サービス)が変わるから業績アップするのです。
リニューアルするきっかけは、競合出店による客数ダウンや
売上不振によることが多いようです。これまで、数多くの
リニューアルをお手伝いして言えることは、リニューアル前に
順調に業績を伸ばしている店舗のリニューアルは成功し、
昨年対比をクリアできていない店舗のリニューアルは往々に
して上手くいかないのです。
リニューアル効果が長く続くかどうかは、実際には新規顧客の
上積みよりも、既存顧客の再来店(離反顧客も含め)を確実に
増やせるかがポイントなのです。
リニューアルオープンは閉店セールも含めて、新しいお客様を
取り込む良いチャンスであることは間違いありません。
しかし、どんなに新しいお客様を増やしたとしても、既存顧客
を取りこぼしていたら、売上を維持・安定させることはできな
いのです。
それではどうしたら良いのでしょうか?
リニューアル成功のポイントは、既存店ベースで売上を
100%にすることなのです。
つまり、リニューアルをする前に既存顧客で売上を100%に
戻すのです。これができない内は、本当はリニューアルしては
いけないのです。
それは、業績を伸ばしている店舗は、既存顧客が良く見えて
いて、リニューアル計画そのものが非常に力相応であるのに
対して、業績不振の店舗のリニューアル計画は、どうしても
奇をてらうものになっているケースが多いからです。
まずは、既存店舗で100%をクリアし、小さな成功体験を
つくることが必要なのです。
そのために、自店をよく利用する顧客の声に耳を傾け、商品と
人(サービス)を見直すことからスタートしてみては如何で
しょうか?

SC経営のヒント97:リニューアルはGOALではない

競合SCの出店による核店舗の集客力ダウン。それによるテ
ナント専門店の売上ダウンはよくあることです。
しかし、そのような状況の中でも業績を確実に伸ばしている
テナント専門店が多くあるのも事実です。そのようなテナン
ト専門店は小売業の原理原則を知り、時流(今のお客様の買
い方)に合った店づくりに常に挑戦しているのです。
競合SCの出現は既存店舗のやり方を見直す良いきっかけと
なることが多々あります。同様のことがデベロッパー主導の
リニューアルでも言えます。
テナント専門店のリニューアル成功のポイントは、その目的
を明確にするところにあります。リニューアルをしても売上
が上がらない。リニューアル効果が長く続かないという声を
よく聞きます。その多くは、リニューアルすることが目標
(GOAL)となっていて、何のためのリニューアルなのか
が理解・実行されていないのです。
デベロッパーが主導するリニューアルは、増床や床、壁、
天井、外壁の塗り替えといったハード(建物、躯体)が先行
します。しかし、当たり前のことですが、ハードが変わった
だけではリニューアル効果は長続きしません。テナント専門店
の売上が品揃えに左右されるように、SCの売上は店揃えに
左右されるのです。
多くの地元主導型SCがそうであるように、この店揃えに手を
つけられていないことが業績低迷の最大要因といえます。
つまり、オープンして10年が経過して、お客様もオーナーも
お店もみんな10歳年をとってしまっているのです。
いつもと変わらない売場、商品、スタッフ、それはそれで
安心感がありますが、多くの商店街がそうであったように、
劇的に好転することはないのです。
では、どうすれば良いのでしょうか?
できれば、デベロッパーが主導するハードのリニューアルに
あわせて店舗の入れ替えがベストですが、店舗の入れ替えが
あるなしに関わらず、個々のテナント専門店が商品・サービ
スといったソフトのリニューアルに挑戦していくことが大切
です。
つまり、ハード先行のリニューアルをきっかけとして、テナ
ント専門店はお客様に変わったと思ってもらえるソフトリニュー
アル(=店づくり)を目的にすべきなのです。
次回はこのソフトリニューアルの成功ポイントについて
具体的にお伝えさせていただきます。