SC経営のヒント129:「訴えない販促」とマージンミックス

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、藤巻好仁でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は販促についてです。
異業種の事例も参考にしていただき、お役に立てて下さい。
株式会社船井総合研究所
藤巻 好仁
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■「訴えない販促」とマージンミックス
秋季になり、セールチラシやリニューアルなど、たくさんの販促コストを
掛けて、売上拡大を目指されている企業様も多いことでしょう。
販促手法として、セールでのチラシやイベントなどお客様へ直接的に
「訴える販促」によって売上を拡大することに加え、「訴えない」販促を探し、
お取り組みすることもお勧めいたします。
訴えない販促とはお客様には直接的に伝わりはしないが、結果として
売上に貢献させるために掛けている販促です。
訴えない販促を効果的に行うにはどのようにすればよいでしょう。
船井総研のお付合い先のゴルフ場をケースを挙げます。
このゴルフ場では、昼食メニューをバイキング形式に変更することで、
前々年比約1.5倍の客数、約1.4倍の売上に貢献する昼食を作ることに
成功しました。
メニューをバイキング形式にした際のポイントは、レストラン単体では
全く利益を取らず、昼食はお客様にゴルフを楽しんでいただくための
サービスの一貫として位置付けていることです。
数多くのメニューを並べ、価格はたったの1,050円。なんと食材の原価率は
71%です。(一般的な飲食店では、食材原価30%位)
そして、さらに特徴的なことは、ゴルフを利用しないお食事のみのお客様も
満席でなければ利用可能であるということです。地元の方への認知度UPは
もちろんのこと、初めは食事だけでもいつかプレーしようと考えてもらう
きっかけを作っています。
こうした訴えない販促はより効果を得るための活動をすることが可能です。
このゴルフ場の例では、バイキングを起爆剤として、よりゴルフ場を
アピールするために、お客様のアンケートでより話題となるメニュー作りや、
バイキングの話題をプレスリリースで発信しています。
こうして食材原価を”販促費”として利用することで、ゴルフ場全体の
活性化に寄与しています。
<結果的に集客商品となり、マージンミックスに寄与>
上記の販促手法はゴルフ場全体のマージンミックスへ大きく寄与していると
考えることができます。
マージンミックスとは、粗利率が高い商品(プレー代)と、粗利率は低い商品
(バイキング)をミックスすることで、一定の粗利率、客単価を
確保することです。
今回のケースでは、プレー代という主力商品の獲得のため、食を集客商品とする
マージンミックスであるといえます。
SCの集客や商品購買動機として、様々なイベントを開催することがあるか
と思いますが、マージンミックスに注目した販促手法を確立すれば、
より効果的な粗利獲得と客単価を狙った販促が可能となります。
皆様のお店でも、是非一度、マージンミックスに注目した、目に見えない
「訴えない販促」をお取り組みしてみてはいかがでしょうか。

SC経営のヒント128:上手な閉店セールの仕掛け方 その3

編~
テナント専門店にとって閉店セールの開催時期(立ち日、期間)が
一番気になる点だと思います。閉店セールに限らず、大型催事では中心となる
ファッション関連のテナントが最も売上をあげやすい開催時期にするのが
一般的です。
しかし、決定権はテナント専門店にないので臨機応変の対応が必要となります。
例えば、閉店セールが9月のような端境期(季節の変わり目)になってしまう
場合は、夏物の在庫は少ないし、秋物はプロパーで売りたい悩みがつきません。
このような場合はどうしたら良いのでしょうか?
1、閉店セールは晩期商法で
店舗改装のための閉店セールの基本は在庫を売りつくさないことにあります。
つまり、必要な(秋物)在庫は残し、売りにつながる(夏物)在庫は再投入が
必要になるということです。
というのも、閉店セールのお客様は実需ニーズが高いため、夏物処分を全面に
訴求(最大70%引き)していくことが重要です。
できるだけ、問屋・メーカーさんに早めにお声掛けして商品協力を
いただくことが大切です。テナントは夏物の晩期商法に徹し、秋物については
在庫を絞って20%引きを上限にします。
※晩期商法
実需のピークを過ぎた商品をメーカー、問屋から上代の10~20%で
仕入れて、上代の50~70%引きで売っても利益を出す商法スタイル
2、陳列は「さばく店」づくりで
閉店セールの売場は「さばく店」づくりが基本となります。具体的には、
アイテム別やメーカー別陳列からサイズ別陳列(S、M、Lか24.0cm、25.0cm、
26.0cm)や価格帯別陳列(千円、5千円、一万円均一)にすることが大切です。
滞留時間を高め、接客主体で売る「行く店」「来る店」から、セルフで短時間で
買物を終えられる「さばく店」づくりが大切です。
また、閉店セールが1ヶ月間以上の長期になる場合、チラシ折込が入る週末は
「さばく店」づくり、平日は普段の「行く店」「来る店」に戻すといったことが
できるのが理想です。
3、売場は店頭への圧縮法で
閉店セールも終盤に近づくと、在庫がどうしても薄くなります。これは通常の
サマーセールやウインターセールでも同様ですが、ここでのポイントは店頭
(1/3)の坪当たり在庫だけは維持することです。
それには、売場の後方や中央で薄くなった在庫を店頭に圧縮することです。
主通路を歩いているお客様には期間中はいつでも、買いたい商品がある
ということが大切です。
それでも在庫が薄くなる場合は、大型POP(模造紙大)、紅白幕、のぼり
といった店頭のにぎやかさでお客様をその気にさせるようにしていきましょう。
閉店セールだから来る、閉店セールだからお客様が売れるといった時代は
ずっと前から終わっています。閉店セールで勝つためには、それなりの
成功ルールがあり、それを愚直にやり遂げることが必要なのです。
今回のご提案は閉店セールに限らず、大型の催事やセールに共通するものでも
ありますので、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
また、皆様が取り組まれた結果をレスいただけることを期待しています。
次回の上手な閉店セールの仕掛け方、テナント専門店編後半もご期待ください。
>>SC経営のヒント132:上手な閉店セールの仕掛け方 その4
>>SC経営のヒント125:上手な閉店セールの仕掛け方 その2

SC経営のヒント127:商業ビルの基本を知ろう2

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
前回の「基本を知ろう」が思いのほか反響が大きかったので、
しばらく続編を続けることとします。
皆様に基本を知っていただき商業施設開発の質の向上につながれば、
私としても大変嬉しく思います。
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■商業ビルの基本を知ろう2
立地と建物の基本に忠実なものは、繁栄します。そこではテナントも
デベロッパーもハッピーです。出店の成否は、商業施設が企画された時点で
すでに決定しているといっていいでしょう。
企画にもさまざまな内容がありますが、まずは施設計画をチェックして、
企画の未熟さゆえの悪影響を受けないように図面を見抜き、早い時期に
デベロッパーと交渉してよい場所に再配置を検討してもらえるよう
働きかけることも必要です。
相手が百戦錬磨の有力デベロッパーですと、あらゆることを承知の上で
計画を策定しますから選べる範囲はほとんどないですが、
そうでない場合もありますので、図面をよく見ることが大事です。
□回遊性
商業施設の回遊性とは、上下階の回遊性と平面の回遊性の二つがあります。
いうまでもなく、回遊性は限りなくよいにこしたことはありません。
回遊性が悪いと「死に場所」が生まれます。そこは後々、貸そうにも
貸せない場所として全体の採算性を悪化させることになります。
そこに入った店には、努力すれどお客様はやってきません。
回遊とは、読んで字のごとく、全体を回遊し循環するように導線が
設定されていることが大事です。
巨大なモールであればセンター通路が広いため、実質的に循環する導線が
設定できますが、細い通路の一本道では行き止まりになってしまいます。
オープンモールの回遊性がよくないのは、一軒一軒ドアをあけて入らねば
ならないことです。そういう抵抗要因を極力排除し、お客様が歩きやすく
なるようにすることが大事なのです。
上下階の回遊性は、これまた同様に上下導線が一本通っていて、
かつスムースに上下できることです。具体的には、エスカレーターが
横から見て×の形で最上階から最下層階まで通っていることです。
ときどきフロアによってエスカレーターの位置がずれたり、あるいは
×ではなく様々な方向を向いてついているビルがありますが、こういうのは
上層階への回遊性を下げているだけで、ろくなことがありません。
設計士のこだわり(おあそび)でエスカレーターのつき方の変なビルが
多数ありますが、テナントにとっていいことなど一つもありません。
後から多額の工事費をかけてエスカレーターを付け替えたビルもあるくらいです。
□お客様は、水の流れと同じく、下に溜まり、上に上がらない
以前、山の斜面を切り開いて作り上げたSCを見ました。下に位置する
場所にはお客様が流れるものの、上のゾーンは閑古鳥でした。
こういう場合は、駐車場を一番上に集中して持つことが必要と思われますが、
そういう計画になっていません。
そもそも、山の斜面を切り開いて商業施設にすること自体に無理があります。
これは立地を見るときも同じです。高台の上、坂の上、丘の上、
こういう場所に商業施設をつくることは避けるべきことです。
もちろん競合らしい競合がなく、施設としての魅力が高ければある程度は
リカバリーできるものの、そもそも論としてよろしくないです。
自転車や徒歩のお客様は来づらいです。
旅館のおみやげ物売場などでも、階段を数ステップあがったところに売店を
つくっている例がありますが、これなどもよくないです。たった数ステップを
上がるのが億劫で、ちょっと見てくれなくなるのです。
数ステップ下げるのならよいです。店を作るなら、なるべく低いところがよいです。
ビルの回遊性は、おおむね基本的な企画の骨格の段階で検討されます。
図面化された後には、計画そのものを変更することは不可能になっています。
ですので、著しく不利な場所でないかどうかのチェックと、ダメな場合の
対応策が協議可能かどうかを判断材料にすべきでしょう。

SC経営のヒント126:売場力を鍛える

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
在庫を置く倉庫を1.5坪×5部屋から、28坪1部屋に変えてよいものかと相談を受け
3万/月賃料が高くなるけれど、やったほうが良いですとお答えしました。その際
在庫管理をわかりやすくしていただいたことで、結果的に商品鮮度のUP、
業務効率の飛躍的向上に繋がり、仮事務所としても使えて、急な商品仕入れにも
耐えられるという一石四鳥くらいになりました。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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■売場力を鍛える
先日、インターネットショップを経営されているお客様と話をしていて気づいた
ことがありました。
そのショップさんでは、日用雑貨やアクセサリーをメインに販売されていて、
商品の質や鮮度にはこだわっています。ようやくオリジナル商品の販売にも手が
届きそうです。
以前中国へ一緒に商品買付けに行った際に、アクセサリのネックレスを仕入れま
した。商品自体はキャッツアイを使用した女性受けするものでしたが、その販売
方法に驚いてしまいました。
販売開始しましたと言われてホームページを見ると、そこはオークションサイト。
出品カテゴリはアクセサリーの中でも奥の奥。よほど詳しい方でないと見ない
カテゴリに出品されていました。
また、価格は100円スタート。確かに手法として100円スタートという販促手法が
ありますが、これではせっかくの商品が輝ききれません。社長としては腹を決め
て原価割れからスタートしたわけですが、それが逆手に出てしまった感がありま
した。あまりにも安いとお客様の中で不信感が勝ってしまうものです。
さらに、ページのつくりも、5色セットの商品でしたので、各色ごとに1枚づつ
綺麗な写真が掲載されていたまではいいのですが、その下には事務的に商品重量
などが掲載されていただけでした。
「もったいない!」と思いましたが、やはり結果は思わしくありませんでした。
出品カテゴリは、実店舗における立地にも通じる大切なものですし、価格も超
目玉であっても、そんなに安売り商売をしては労多くして功少なしです。そして
来店いただいたお客様に訴求する店頭(商品トップページ)でチャンスロスを
しているのです。
次回は徹底的に店頭(商品トップページ)をお金をかけずに手間隙かけて作り
こんでいただくことにしました。
せっかく良い商品を揃えても、お客様に価値が伝わらなければ購入いただけませ
ん。そのお客様との最初の接点が店頭なのです。
私が近頃感じるのはインターネットショップさんに限らず、実店舗の皆様も商品
には力を入れられています。しかしそこまでやったのに、(お客様に最も近づく
一歩なのですが)最後のあと一歩が意外と踏み込めていないということです。
店頭での売場力をもっともっと鍛えていく必要があると感じています。
そして店頭での訴求力が売上に与える影響も増えてきています。最近、
ファッション雑誌を定期購買せずに、時々買ってトレンドだけ捉えて、実際買う
ものは店舗で決めるという方が増えているそうです。これも売場力が必要とされ
る大きな流れの1つです。
しっかりとした商品力の上に、より多くの方に伝える販促力、そして価値を伝え
販売する売場力が何より求められていますので、今一度、自店の売場力を確認し、
チャンスロスしている点はないかを再確認して年末商戦に入ってください。

SC経営のヒント125:上手な閉店セールの仕掛け方 その2

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、丹羽英之でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回も前回に引き続きまして、閉店セールの上手な仕掛け方について
お伝えします。
1・2回はデベロッパーの立場での上手な閉店セールの仕掛け方、
3・4回はテナント専門店の上手な閉店セールの対応についてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■上手な閉店セールの仕掛け方 その2
①閉店セールは第1弾が決め手
ショッピングセンターの閉店セールは何といっても第1弾が
決め手となります。SCにはあらゆる業種・業態が揃っている
ため、閉店セールに相乗りしやすい店舗(衣料・服飾・雑貨)と、
相乗りしにくい店舗(食品、飲食、サービス)に分かれます。
基本的に相乗りしやすい店舗は第1弾から、相乗りしづらい
店舗は2弾・3弾(最終弾)の参加となります。
そうは言っても、閉店セールは第1弾がポイントとなるため、
この第1弾の参加店舗数を増やすことが成功の絶対条件と
なるのです。
つまり、飲食・サービスとった店舗は協賛という形で第1弾から
参加してもらうことが重要です。
次に、店頭での賑やかしも非常に重要な成功のポイントと
なりますので、第1弾からの参加の有無に関わらず、全店舗が
店頭・ファサードでの共通の顔出しをしていくことが必要です。
②チャンスロスのない商品・人・売場づくり
一般的に閉店セールの集客(=売上)は第1弾が最も高く、
2弾目が下がり、3弾目(最終弾)に盛り返すという傾向に
あります。
よく第1弾から最終弾に向けて売り減らしをしていくケースが
見られます。これをすると、3弾目(最終弾)に店頭に商品がなく、
客数はきているが、売上がとれなくなってしまいます。
ここでのチャンスロスをおこさせないことが必要です。
今回の閉店セールでもあったのですが、各テナントさんへの
指示で下記の3点が重要となります。
1、十分な商品在庫(各メーカー、問屋さんへの協力商品の
打診、現金問屋への即時買付、店間移動)
2、十分な人員(レジ増員と増設)
3、回遊しやすい売場づくり(アイテム別陳列からサイズ別陳列、
価格別陳列etc)
下記は‘第2弾の速報’と題して送られてきた販促担当者様から
いただいたメールです。
おかげさまで閉店セール第2弾、始まりました。
下記にて速報ご連絡させていただきます。
なお、昨対比は昨年度曜日にあわせてあります。
1.閉店セール第2弾
・9月15日~17日まで
 昨対比 141.6%
 15日2000万、16日2500万、17日2500万 
 計7000万のぼり旗を入り口にたててスタートしました。
 15日はそこそこ、16日、17日はけっこう客入りしました。
 第1弾スタートまではいかないものの、ファッション・
 雑貨店を中心にお客様入ってました。
 お店のほうもだいぶ慣れて客待ちをそれほど出さずに
 販売できたようです。ただ一方で100%切るお店も。
 飲食部門を中心に14店舗が負けました。
・9月1日~17日まで
 昨対比 約140%
 このまま維持できればと考えております。
次回は、テナント専門店の上手な閉店セールの対応をお伝えいたします。
>>SC経営のヒント128:上手な閉店セールの仕掛け方 その3
>>SC経営のヒント123:上手な閉店セールの仕掛け方 その1

SC経営のヒント124:商業ビルの基本を知ろう

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
この1週間、急に秋の気温になりました。
皆様は体調を崩されていないでしょうか。
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■商業ビルの基本を知ろう
商業ビルをつくるのにも、「基本」というものがあります。これは、
デベロッパーにとっても、そこに出店するテナントにとっても、非常に
重要なことです。
残念ながら設計事務所にはこのノウハウがなく、大手の商業デベロッパーでは
ノウハウを蓄積した担当者が設計変更を依頼して何度も吟味した結果が
形になっています。
この基本は多岐にわたりますが、最近良く見かける事例をもとに
考えてみましょう。
以下が「基本」の一部です
□商業ビルのフロア床面積は上下階同じとする
□本館別館など2棟以上に分かれる場合は、大きな棟がより有利になる
□フロアに1ヶ所しかエスカレーターがない場合は、エスカレーターを
出たところから見て大きなほうのゾーンがより有利になる
□オープンモールは回遊性が低下する
1Fは大きく、上層階は床面積が小さい商業ビルというのが数多くあります。
これはいけません。上層階の回遊性が低下します。
郊外型ですと、駐車場をとったために2階の床面積が1階に比べて非常に小さく
なっている場合を見かけます。しかし、こうすると2階の店舗への回遊性が
確保しにくくなります。
都市型のビルですと、ビルの構造上や、斜線制限などで上層階床面積が
どんどん小さくなっていく場合が多いのですが、これも同様で、ただでさえ
上層階の回遊は厳しくなるのに、なおのこと人が上がりにくくなります。
商業ビルは、上下階でフロア面積を変えてはいけません。同じ面積で上から
下まで通っていることが大切です。小さくなっている床に出店した場合、
期待値を下回る集客になることが多く、そういうビルに出店するなら最も
床面積の大きなフロアが最も有利になります。
何故そうなるかといいますと、これは別棟をつくったときの状況と同じと
いえます。2棟以上の建物が開発される場合は、最も大きな棟が有利になり、
それ以外は不利というのが通常です。
同一フロアでもエスカレーター位置が中央ではなく端についていることが
多いですが、エスカレーターを出た位置から見て大きなほうのゾーンに
回遊しやすくなります。
どうも人間は、より大きな空間のほうが自分の期待を満たすと感じて
行動するようです。科学的な根拠は分かりませんが、これまで多数の店舗を
見てきた結論がこれです。
古いビルで制約が大きい場合などは、別の知恵工夫でなんとかせざるを
えないのですが、新築の案件でこのような事例を見ると、基本を知ることの
重要さを感じずにいられません。

SC経営のヒント123:閉店セールで過去最大の集客を実現!?戦略的なチラシのまき方

<目次>
1、ご挨拶
2、上手な閉店セールの仕掛け方
 1、最大商圏にチラシをまき、新規客の獲得を
 2、チラシは回数と枚数を優先
 3、閉店セールはオープンセールの事前告知
 4、事例

1、ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、丹羽英之でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。

お付き合い先のショッピングセンターで8月30日から「店舗改装のための
閉店セール」が始まりました。8月30日から9月2日(4日間)の第1弾の売上は、
昨年対比で(・ファッション 378.1% ・フード 184.1%
・サービス 122.0% ・ライフグッズ 328.8% ・レストラン
185.8%)。8月30日から9月10日までで全店で昨年対比160%、
その後も140%で推移しています。

今回は4回にわたって閉店セールの上手な仕掛け方についてお伝えします。
1・2回はデベロッパーの立場での上手な閉店セールの仕掛け方、
3・4回はテナント専門店の上手な閉店セールの対応についてお伝えします。

株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之

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2、上手な閉店セールの仕掛け方

閉店セールは店舗にとってオープンセールの次に客数を集められる
大切な企画です。そのため、閉店セールは業種・業態を問わず、
即効性のある販促企画として繰り返し実施するところが多く、店舗改装のための
閉店・売り尽くしというタイトルで打つことが多いのが実際です。

完全閉店でない、店舗改装のための閉店セールの場合、下記のような
原理・原則を知っていると効果的と言えます。

1、最大商圏にチラシをまき、新規客の獲得を
オープン以来、周辺に競合店舗が出店し、ピーク時の売上より下がっている
SCが多く、売上の落ち込みと共に販促経費を削減。商圏が小さくなっている
こともあり、チラシ配布枚数がオープン時に比べて減っているSCが大半です。
閉店セールはオープンセールの次に大儀ある販促企画であり、
普段のチラシ販促より集客力が高いので、これまでの最大商圏にチラシを
まくことが重要です。

つまり、ピーク時の商圏にあわせてチラシをまくことで、過去に自店を
利用していたお客様の再来店、途中、チラシが入らないのでこなかったお客様の
来店を促すことが可能となります。

2、チラシは回数と枚数を優先
一般的にチラシの優先順位は、回数、枚数、サイズ、色の順番ですが、
先のように閉店セールの場合だけは回数より枚数を優先することが大切です。
ただし、期間中に3回はチラシをまくことが必要となります。
(オープン1弾/本日スタート、2弾、最終弾/最後の●日間)

限られた販促予算を効果的利用するために、サイズと色を落とすことで回数と
枚数を優先することが大原則と言えるのです。例えばB2でななくB4で、
色もカラーでなく、2色あるいは一色とするのです。

3、閉店セールはオープンセールの事前告知
店舗改装のための閉店セールは、その後のリニューアルオープンセールの
事前告知を兼ねていることを忘れてはいけません。つまり、
リニューアルオープン後の売上と客数は、この閉店セールでどれだけお客様を
集めることができるかで、ある程度予測ができるといっても
過言ではありません。

ですから、リニューアルオープンしてからの販促を強化するより、閉店セールに
重きをおいて販促計画をたてることが非常に大切なのです。

4、事例
下記は’4日間の速報’と題して送られてきた販促担当者様からのメールです。
お客様の入り状況がイメージできますでしょうか。

お客様の入りはこの4日間はすさまじかったです、特に日曜日は駐車場が
パンクしかけました。元旦セールよりも入った感じです。
パンやさんとかは製造のキャパを完全に越えてしまったようです。
雑貨屋さんとかもすでに空の棚が・・・

・チラシを最大商圏にまいた効果で新規のお客様が多かったようです。
・完全閉店(撤退)と勘違いしているお客様も多いようです。そのための需要も
もしかすると多いかもしれません。チラシに改装の件、もっと大きく打ち出し
しなければいけないかも。
・閉店日についての問い合わせも多いのですが現時点では各店の
工事乗り込み日が確定していないので、いまだ閉店日を入れるのは危険です。
現在は売りつくし商材無くなり次第と、ぼやかして応対しておりますが。
・9月3日からは少し落ち着くと思います、が。

次回も引き続き、上手な閉店セールの仕掛け方 その2をお伝えいたします。

>>SC経営のヒント125:上手な閉店セールの仕掛け方 その2

SC経営のヒント122:SCのカラーを出す

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、野田陽一郎でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
近頃、地元の名産品を全国に伝えていくことと地産地消という、一見正反対の
動きですが、双方の重要性を感じています。フードマイレージなどの運動も
広がり、提供者側は商品だけでなくその背景にある想いもうまく提供していか
なくてはなりませんね。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎
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■SCのカラーを出す
秋季になり、新規オープンするSCも増えてきましたが、どの施設も見ていて、
設備やテナントに一定の安心感があります。良い意味で、SC開発も安定してきた
ということかもしれません。
中国ではまだまだSCの数も多くなく、百貨店が街の中心地にあるというのが
一定のパターンですが、近年SCも増えてきました。
上海を例に挙げると、伊勢丹や第一百貨、新世界などの百貨店のほかに、
上海アウトレットや恒隆広場 Plaza66、Bund18、来福士広場などの特徴ある
SCも出てきました。
つくりでは日本に比べると異なる部分もあるのですが、そこで感じるのは、
非常に個性を持った館のカラーがあるということです。
恒隆広場 Plaza66は、66階と44階のオフィス棟を持つ商業施設ですが、
いつ訪れても客数が多いとは言えません。香港の置地廣場などを越える
高単価のスーパーブランドや高感度のセレクトショップ、専門店ばかりが
入っているため仕方がないのですが、そもそもそれらのスーパーブランドは
小売のために施設に入店しているというよりも、デベロッパーサイドとしては
オフィスの付加価値を上げるために入店させているといえます。
結果として上海の中では飛びぬけて高いオフィス家賃が取れているそうです。
一方、来福士広場や伊勢丹には大食代という大型のフードコートが入っています。
買い回りで来たお客様が気軽に立ち寄れるということで、恐ろしい集客力を誇って
います。クーポン制になっているため、支払いを一括で行うことができ、
ファミリーにも対応しています。テイクアウト専用の店もあれば、
イートインタイプの店、鉄板焼きなどで目の前で調理してくれる店など実に多彩
です。
それらの施設に共通するのが、館のカラーが一目でわかるということです。
日本ではコンセプトだけつくって、なかなか現場に浸透しない現状があります。
現場レベルでは、コンセプトをそもそも知らない、知っていても実現できない
など理由は様々ですが、今一度、館のカラーは何なのか、しっかり打ち出されて
いるかをデベ側、テナント側双方から再確認してみることも必要かもしれません。

SC経営のヒント121:マーチャンダイジングミックス

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、マーチャンダイジングミックスについてお話ししたいと思います。
SCの見直しにご参考になればと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■マーチャンダイジングミックス
複合ビルの作り方の基本は、小売業における品揃えと同じく、
マーチャンダイジング・ミックスにあります。
すなわち、「集客はするが収益性の低い店舗」と「収益性は高いが
集客力が弱い店舗」を組み合わせることで、施設全体として集客しながら、
賃料収入という収益を同時に確保してゆくという発想です。
立地のいい都心の商業ビルでは、たいていは上から下まで賃料の最大化を
はかる構成が検討されます。この場合のMDミックスは、そのビル単独ではなく、
商業地全体の集客力があるという前提で組み立てられます。
一方で、郊外型のSCのように、単独立地で「立地の開拓」をしなければ
いけない場合は、同じSCの中に集客部門と収益部門を同時に入居させることで
商業施設としての成立と収益の向上を図るという発想になります。集客部門は、
いわゆる核店舗と呼ばれるものがそれに値し、スーパーマーケット、
ホームセンター、GMS(総合スーパー)などが該当します。
近年増えてきたレジャー複合施設の場合には、この集客部門は
シネマコンプレックス、ボウリング、温浴施設などがそれにあたります。
一方で、ゲームセンター、パチンコ、飲食などは収益部門となります。
このMDミックスで高収益を上げているレジャー複合の代表例が
ラウンドワンといえます。
集客部門は賃料が相対的に低く、デベロッパーにとっては大きな床面積が
安い賃料のテナントで占められてしまうことを嫌気する場合もありますが、
この集客部門がしっかりしているからこそ、収益部門で稼げるといえます。
集客力の弱いSCに欠落しているものの多くはこの集客部門であり、
また繁盛しているSCはこれらのバランスが良いといえます。収益性に劣る
SCの場合は、収益部門を可能な限り増加させることが必要になります。
こうしてみると簡単なことのように思われますが、依然としてこのMDミックスの
バランスの悪い商業施設が多く、「この店はどちらの役割なのだろうか、
何人集めれば集客部門としてよいのか」といった視点でSCを見直して
いただけますと、新たなる発見があると思いますよ。

SC経営のヒント120:イケテル売店

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研、丹羽英之でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
最近、駅構内の売店やホテル・旅館の売店のお手伝いを頼まれることが
増えました。ホテルや旅館にとってはこれまで主でなく、従だった
分野ですので商品構成、売場づくり共に稚拙な企業さんが多く、
劇的に変わることが多いのです。
今日はすばらしい売店=イケテル売店についてお話したいと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■イケテル売店とは?
イケテル売店とイケテナイ売店の違いは、やはり商品にあります。
その商品の構成を考える際のポイントは大きく2つです。1つはニーズ
(ギフト需要なのか自家需要)であり、もう1つはお客様の予算です。
例えば、浜松のお土産といえば春華堂のうなぎパイ、甲府なら桔梗屋の
信玄餅、広島ならもみじ饅頭などがお土産の定番です。これらお土産の
定番は売店には必要不可欠な商品であり、これを敢えて置かないといった
売店が意外に多いのです。
これは通常の店舗であれば、主力が欠品している状態で絶対客数が増える
はずがありません。お客様の心理としては一箇所ですべてを揃えたい、
買っておきたいのに、この売店では買えないとなってしまうのです。
周辺競合との差別化を意識するあまり、お客様の足が遠のく典型的な
例です。浜松に行ってきたと一目でわかるものをお土産として買ってから、
自分へのご褒美となる自家需要の商品を買うのです。
自家需要の商品の多くは、ギフト商品のバラ売り、少量パックや
詰め合わせといったものが基本で、オーナーの趣味・嗜好にはしった
雑貨などは、なかなか売れないのが実際です。
つまり、定番となるギフト商品とそのバラ売りの商品がまずあることが
商品構成の基本といえます。
また、お客様には予算がありますから、懐具合にあった価格設定が
必要です。基本的に自家需要の商品は安く、ギフト需要の商品は高く
設定することが原則です。例えば、自家需要の商品は100円、200円、
300円、500円で高くても1,000円まで。ギフト需要の商品は1,000円、
2,000円、3,000円が基本となります。
売店の売場は、「行く店」「来る店」ではなく、「さばく店」でなくては
ならず、そういった意味では商品構成においても、売場づくりでも、
「見やすく」「買いやすい」が基本となります。
そのためにも、定番や名物といった買上点数の高い商品をベストポジション
(多くの場合店頭となります)で展開し、フェイスを他商品の3倍に
するなどとにかく目立たせることが大切です。(在庫も3倍にすることで
商品補充も軽減されます)
また、接客を基本としている売店が多いのですが、1人のスタッフが
接客できる人数には限界があります。チャンスロスをなくすためにも、
よく聞かれることや普段お客様に伝えていることはPOPとして
提案することをオススメします。
これからはセルフで買える売場を基本にし、そこに試食や試飲といった
サービスを強化していきましょう。
まずは、ここまでできれば大丈夫でしょう。イケテル売店への第一歩を
踏み出してみては如何でしょうか?