SC経営のヒント118:まちおこしは食のテーマパークから

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
ようやく夏らしくなってまいりましたが、体調を崩されてはいないでしょうか。
今年は例年よりも夏風邪が少しはやっているようですので、皆様もご注意下さい。
いくらウィルスが違うとはいえ、夏風邪予防にもうがいと手洗いは効果が高いそうです。
さて、本日は再生のキーワード、「まちおこし」についてお話ししたいと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■まちおこしは食のテーマパークから
最近、ホテルの仕事を通じて観光商業のあり方が見えてきました。
立地がよいことは前提になりますが、ショッピングセンターに核店舗が
必要なように、観光商業にも核店舗がいるのです。
観光商業が成功するポイントは1、首都圏に近いこと2、観光入込み客数が
大きい立地にあることです。首都圏に近いとは東京、大阪、名古屋などの
主要都市から車で2時間(200km)圏内に位置していること。観光入込み客数が
多いというのは観光地としての魅力がまだ残っていると言い換えることができます。
観光施設や観光資源にどんなに魅力があったとしても、やはり商売の基本は
立地にあるといえるのです。
ここで観光地の「まちおこし」について考えてみたいと思います。上記の
成功ポイントの1はクリアしているが2が落ちこんでいる。(熱海など)
1、2ともにクリアしていないところが再生・活性化する可能性があるかと
いう話です。
首都圏に近い、観光入込み客数が多いということは、言い換えれば目の前を
歩くお客様が多いということです。しかし、観光入込み客数が少ない場合は、
お客様を集めることを考えなければなりません。ショッピングセンターの
支援現場でもよくあるのですが、これは各テナント(個店)がそれぞれ
がんばることで実現するものではなく、核店舗が中心になって全体集客を
いかにあげるかがポイントとなるのです。
例えば、まちに1つだけ圧倒的に集客する核店舗が必要なのです。通常の商業が
そうであるように、それは食を基本としたものが理想といえます。
食を基本とするものは、1購買頻度が高くて(来店頻度が高い)2マーケットが
大きいからです。また、食を基本とすれば観光客だけでなく、地元客にも
対応が可能だからです。そして、それらには土地の歴史、文化を踏まえた
「オンリーワン」を提供するというコンセプトが必要です。
千葉県にある「びわの郷」、埼玉県の「サイボクハム」、長野県の
「小布施堂」や全国の道の駅などなどここにしかない。ここでしか買えないを
核とした食のテーマパークが、これからの「まちおこし」のポイントと
いえるでしょう。

【SC経営のヒント117】:オープンモールSC

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
本日はオープンモールSCについて、自分なりに気づいた点などを
お話ししていきたいと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■オープンモールSC
最近、立て続けにオープンモールSCを視察する機会がありました。
いずれも、規模的にはNSC~CSC程度の規模となり、
小型~中型SCといえる規模のものです。
それぞれ、テナント構成やコンセプトは工夫をこらし、
MD構成としてはよく出来ていると思えるのですが、
いかんせんこのオープンモールという店舗形態がいいのかどうか、
いろいろと疑問が残りました。
オープンモールSCのメリットは、共用通路が屋外となっていることで、
空調費などのランニングコストが下がること、
それがコストダウンにつながるということにあります。
また、運営上は営業時間の対応が容易で、また意匠面でも
ユニークなものがつくりやすく、各専門店の顔作りもしやすい
というメリットもあります。
一方で、デメリットとしては、雨風や気温の高低に左右されやすく、
春秋の天候のいいとき以外は全体回遊性が落ちること、
各店舗それぞれの入り口を持つことで入店率が下がること、
外装のサッシュ面積が多く初期投資増につながること、などがあります。
アメリカの西海岸などでは、気候もよく雨もあまり降らないこともあって
オープンモールSCが多数見受けられます。
ライフスタイルセンターや、ユニバーサルシティウォークなどの個性的な
商業施設も多く、非常に魅力的に見えます。
ただ、四季折々の気候の変化や雨の多い日本の風土においては、
デメリットも大きいといえます。
ロードサイドで普通に営業できている店なら可能でしょうが、
モールのインテナントに慣れている店だと、オープンモールSCに
出店するのはやや無理があります。
多少賃料や経費が高くなっても、クローズドモールのほうが回遊性や
入店率が上がり、売上も上がると考えられます。
もっとも、屋根下に入ってさえいればよいかというと、一概にそうではなく、
魅力の乏しい専門店の集まりでは何にもなりません。
ちゃんとした中身があってこそ、店舗形態の良否が問われるものになるといえますね。

SC経営のヒント116:今こそ立地で差別化を図ろう! Vol.2

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の丹羽です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
最近、ショッピングセンターだけでなく、ホテル・旅館の開発、
デューデリジェンス業務が増えています。時流が物販からサービスに
移行していく中で、基本的な原理・原則は変わらないと実感することが
多い今日この頃です。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
丹羽 英之
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■今こそ立地で差別化を図ろう! Vol.2
前回、流通小売業における立地の重要性についてお伝えしました。
その中で、ウェブ上での立地戦略について、物販では「楽天ショップ」と
「ヤフーショップ」で2倍の開きがあり、ウェブ上でもどこに出店するかが
大切であるかをお伝えしました。物販と同様にホテル・旅館業界においても、
「楽天トラベル」と「じゃらん」といったネットエージェントの効果活用が
非常に重要となってきていますが、ここでも「楽天トラベル」が一番立地と
なっています。これまでJTBや日本旅行といった旅行代理店からの送客に
頼っていたホテル・旅館が自社サイトを構築し、ネットエージェントに
登録することで、広く一般ユーザーに対して自施設を売り込むことが主流に
なりつつあります。
ホテル・旅館業における業績アップのポイントは物販と同様に
「ピークアップ法」が基本となります。このピークアップ法とは、
顧客ニーズの高い月や週や曜日にどれだけ高い稼働率をとるかと
いうことです。売れる部屋数には限界があるわけですから、いかに
チャンスロスをなくして、且つ高い価格で販売できるかがポイントと
なります。確かに、旅行代理店に比べてネットエージェントのほうが
費用負担(送客手数料)が安いとはいえ、ピークのときほど自社サイトで
直接予約していただくことがベストといえます。つまり、ピーク時での
ネットエージェントはあくでも自社サイトへの誘導(広告)と捉え、
客室稼動の低いときは、ブロック(エージェントに約束している部屋)を
増やし、広く一般ユーザーに向けて告知して、チャンスロスをさせない
客室コントロールがポイントとなります。
よくある誤解として、「ネットでは料金を安く提供しなければいけない」
という思い込みが強くありますが、「楽天トラベル」や「じゃらん」に
掲載する場合、基本料金を変える必要はありません。基本料金はそのままで
客室稼動の指数に応じて割引パックや限定メニューなどの魅力ある
プラン作成が重要となります。
物販サイトでは商品アイテム数が大きな差別化となるように、ホテルと
旅館でも魅力あるプラン数が差別化になるようです。また、顧客心理を
理解した「8,000円の出張パック(500円の商品券付)」といった
プランも望まれます。会社での旅費規程(ホテル・旅館での宿泊料金の
上限)に合わせて、基本料金はそのままに、特典サービスを付加すると
いった内容です。(出張族は直接的な値引きよりも、ポイントや
キャッシュバックも含めて、自分に直接還元される特典・サービスを
期待しています)
物販、サービスに限らず、有店舗だけの動きを見ていては時流に
取り残されてしまいます。ウェブに参入する、しないに関わらず、
その動向には注目しておくことだけは必要といえるでしょう。

SC経営のヒント114:売上予測の糸口

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は店舗開発読本の読者様からご返送いただいたアンケートの中で、
最も多く関心がよせられていた、売上予測の手法についてお伝えしたいと
思います。デベロッパー様、専門店企業様へも今後のご計画に参考に
なればと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■売上予測の糸口
新店を開発するにあたって、売上予測をするが、なかなか想定どおりに
出来ないということも多いのではと思います。実際、こればかりは
トライアンドエラーで何度も何度もチャレンジしてみないと、予想すら
できない世界のものだといえます。
ずいぶん前のことですが、駆け出しだった頃、当時の上司から、街を
歩いていて見かける店の売上予測をしてみろ、と教わりました。彼いわく、
「若くても売上が予測できる人はできる。ベテランでもできない人は
できない。売上を予測するという意識が大事なのだ。」
そのとおりだと思います。貴重なことを教わったと思います。
経済予測などで使われる手法に、「先行指標」というものがあります。
たとえば、運輸会社の取扱物流量が増えれば産業界の景気が良くなるとか、
消費者物価指数が上がると景気が良くなったとされるとか。風が吹いたら
桶屋が儲かるではありませんが、どこまで相関性があるのかよくわからない
ものも含め、各種の指数を頼りに予測をたてるという手法が一般的です。
これと同様に、店舗の売上予測も、様々な要因が複雑に絡みあっている
ように見えますが、その中で最も相関性の高いシンプルな指標を見出す
ことが大事です。
たとえば、食品売り場の売上の何%になるとか、全館の売上の何%になる
とか、周辺600m圏の昼間人口と売上がリンクしているとか、店頭通行量の
何%が入店してくださるとか、なるべくシンプルで分かりやすいものが
よいです。
店の売上は、いくつもの要因が複雑に絡み合っている。そうといえば
そうではあるのですが、あまり精密にやったところで、検討していない
様々な要因がほかにも出てきますから、完璧を求めすぎないことが大事です。
重要なのは、各種要因の中でもっとも影響度の高い、相関性の高い要因が
あるはずだということです。
業態によって異なるその相関指数探しが、売上予測のキーポイントに
なるのです。

SC経営のヒント111:建築コストの上昇

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、賃料上昇の引き金になっている、建築費の上昇について
お伝えしたいと思います。
デベロッパー様、専門店企業様へも今後のご計画に参考になればと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■建築コストの上昇
ショッピングセンター開発は、この10年、比較的安定して安い建設投資額の
恩恵をうけて高い収益性を持つ事業になりました。
郊外型大型SCの標準工事の投資コストは時代によって、およそ以下のようになっています。
90年代前半 坪50万円前後
90年代中盤 坪35万円前後
90年代後半 坪25~30万円
00年初頭  坪25万円以下
このように、バブル崩壊後建築コストは下落の一途であり、バブル期の
半額で建物ができるとなれば、売上が低くても収益の上がるSCが
できるといった具合です。これがSCの大規模化への追い風となりました。
しかし、この1年で建築コストは上昇しています。統計をとったわけでは
ないですが、肌感覚では2~3割の上昇といえます。鉄骨などの素材価格の
上昇、その後ろにあるエネルギーコストの上昇と、中国の建設需要が牽引に
なっている、などいろいろな要因が複合的にあるようです。ゼネコンの
営業姿勢の変化もあるのではないでしょうか。
ともあれ、建築コストが増加するということは何を意味するかというと、
SCデベロッパーがテナントに賦課する賃貸料を引き上げねばならない
ということです。NSCであれモールであれ、かかったコストに見合う率の
賃料を頂戴するという各社の社内ハードルがあるわけですが、コストが
上がり率が同じなら額を上げねばしょうがないということになるわけです。
今後、モール出店店舗にとっては、新規はもとより既存店の契約更新に
際しても、賃料の上げ圧力が強まるということになります。この認識を
もって今後の成長戦略を再構築するべき時期に来ているといえます。

SC経営のヒント108:これからやってくるNSC開発の波

ご挨拶
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こんにちは。船井総研の山本です。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は、デベロッパー様、専門店企業様が共に注目している
NSCについてお伝えしたいと思います。
今後の皆様のご計画に、参考になればと思います。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■これからやってくるNSC開発の波
有力量販店やデベロッパーのここ数年のSC開発状況を振り返りますと、
2000年前後から、来年あたりまでは巨大なモール開発が盛んでした。
大雑把ですが、1拠点100~150億円で開発し、300億円売り、30億円の
賃料共益費が得られるというビジネスモデルです。大手企業にとっては、
それが全国に50箇所できますと合計の年商は1.5兆円となり、賃料は
1500億円、総投資は7000億円程度となり、なかなかに収益性の高いものと
なります。
もっとも、あくまで皮算用でして、実際には開発に更に費用がかかった
ものと、思ったより売上がいかないので賃料も得られていないもの、
いろいろありますが、だいたいこのような計画に基づいてこの数年間での
成長戦略が実行されたといっていいでしょう。そして、こういった
ビジネスモデルを先行実施した企業の成功例をみて他の企業も追随して
いったわけです。
しかし、今後モールはそう開発できません。大手にとっては次なる
成長戦略が必要で、この成長をモール開発に依存せずにやるとすると、
どういう道があるのでしょうか。
延床面積10,000㎡以内のNSC開発で考えますと、理想的には10億円で
開発して売上40億円、賃料3億円、これを300箇所開発して、総投資
3000億円、年商1.2兆円、賃料900億円といったところでしょうか。一見収益性は
高いようですが、地代負担が大きくなるためモールより収益性は落ちます。
ただ、1万坪前後の土地があればおおむねいろんな用途地域で開発可能と
なります。300箇所つくるのは大変ですが、開発要員をたくさん抱えている
ところは次の仕事をつくる必要があります。
ただこの試算、穴がいっぱいあります。そもそも売場2000坪クラスの
NSCでは40億円も売れる店はあまりなく、最近の事例をみてもせいぜい
30億円代前半です。その要因は、核となるスーパーマーケットではなく、
そのほかの専門店で1店舗1億円以上読み込めるものがあまりないこと、
もう一つはサブキーテナントとなれる5~10億円クラスの専門店がなかなか
見えないということです。また、ローコストでつくろうとするとどうしても
レイアウトに無理が出る。今はなじみの深いテナントに実験にお付き合い
いただいているが、出店者にとってメリットのない計画は長続きしません。
しかし、デベロップメントによって生きると決めたら、開発し続けるしかない。
モールができなければ、できるものをつくるしかない。全国にNSCは
どんどん開発されることになります。
よって専門店にとっては、このような新しいタイプのNSC(ライフスタイル
センターとも言われています)に適合する感度と、しっかり売上利益を出せる
店舗展開がまさに「期待」されているわけです。
モール型SCがどうして成功したかというと、開発や建築のノウハウも
もちろんですが、これだけの売場を埋められる専門店企業が成長したと
いうことが最大要因です。
同様に、NSC事業が成功するかどうかも大手にとってはベンダーともいえる
専門店企業が、NSCでばっちり成功する業態を開発してくれることに
かかってきます。
専門店各社にとっても今後の出店戦略の軌道修正が必要となる現在、
NSCの波に乗るかどうかというのも大きな選択肢ですが、いずれにしても
地域密着型・小商圏業態を研究する必要が出てくるといえますね。

SC経営のヒント104:昨今のファッションビル出店

ご挨拶
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こんにちは。
船井総研の山本匡でございます。
いつもご愛読いただき有難うございます。
今回は今までのシリーズと逆の視点から「昨今のファッションビル出店」に
ついてお伝えします。
株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
山本 匡
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■昨今のファッションビル出店
この数年、三大都市圏ではバブルの再来といっていい状態に突入しています。
特に中心地の好立地では次々と商業施設が開発されており、各専門店にとっては
出店のチャンスが拡大しています。
さて、今回は新築されるファッションビルについて申し上げたいと思います。
まず、都心のファッションビルや駅ビルは、それなりに賃料も高く入居も
容易ではなかったりしますが、一方でプロモーションも手がけ集客力もあり、
入居すれば成功をおさめられる確率は高いといえます。事例が豊富なので、
出店する側にとっても分かりやすいターゲットといえます。
一方、繁華街路面にできるファッションビルは、これは開発・運営主体も
様々で、大手の百貨店系列からベンチャー企業までいろいろです。また、
プロモーションに関しても独自で手がけるところもあれば、開業販促のみで
あとは何もしない、いわば路面店的なところもあります。
ここ数年の流れを見ていますと、まず、こういった複合ファッションビルに
多く見られるパターンは、建築のデザイン性は高いのですが、館内の
回遊導線があまり考慮されていない場合が多いということです。たとえば
エスカレーターがあっちについたりこっちについたり、あるいは中央部が
オープンモールになっていたり、あるいは変わった形状をしていて中央に
吹き抜けがどんと上がっていて、上層階も右と左が分断されていたりという
ケースが多いです。
特に都心部では大きな敷地が確保しづらく、どうしてもペンシルビルの
ような形状で上層階まで有効活用しようという建築プランにならざるを
得ない場合が多いのですが、物販店舗にとって重要なのは上下階の
回遊性への配慮です。
まずもって、エスカレーターが上下に素直に通っていないビルでは、
上層階に人が上がりにくくなります。また、過剰な建築デザインでもって
吹き抜けが強調されているものも同様です。さらに、オープンモールに
なって外気が導入されると、気候のいいシーズンはいいのですが、雨風寒さ
暑さには非常に弱くなり、ビル全館の回遊性が落ちるという弱点があります。
デザイン性、独自性、ユニークネスを追及するあまり、こういった
原理原則に反している物件に出店する場合は注意が必要です。上層階の
回遊が物理的に困難になっている場合、それは結局客数・売上の低下を
招くという結果を生むことが多いからです。
また、開業後のプロモーションについても、小規模複合施設であれば
入居するショップが各々でプロモーションを手がけるという割り切りも
可能ですから、無用に規模を追求しない商業施設であればよいともいえます。
大きくつくって歩合と販促費も相応にかけるか、小さくつくって、
路面店複合感覚でさほど高くない固定賃料で出店するか。どちらかの
方向性が明確であればそれなりに魅力的といえましょう。

SC経営のヒント93:『自転車が溢れるショッピングセンター』

ご挨拶
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おはようございます。
船井総研、野田でございます。

いつもご愛読いただき有難うございます。

毎年この時期はショッピングセンターのオープンラッシュが続きます。
出だし好調なショッピングセンターは、よりよくなり、出だしつまずいた
ショッピングセンターは、より不安定になるという現象は、年々強く
なっているような気がします。

株式会社船井総合研究所
ショッピングセンターチーム
野田 陽一郎

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ショッピングセンター経営のヒント93:

       『自転車が溢れるショッピングセンター』

●近隣のお客様の来店割合に注目する

ショッピングセンターは、平日:土日の来店客比率が1:3にもなる
ところが多いのですが、いくら大型SC、広域商圏型のSCといえども
土日だけ商売をしていたのでは成り立ちません。

やはり日々来店していただける近隣のお客様がどれだけ多いかが鍵を
握っています。
そのひとつの指標として、
「近隣客=徒歩、自転車で来店されるお客様」を
見てみることも重要であると思います。

●地元のお客様により良いサービスや空間を提供する努力

今秋オープンした様々なショッピングセンターの中で、大繁盛している
ショッピングセンターがいくつかあります。
その中でも超大型でないながらも圧倒的に近隣のお客様を集客している
ショッピングセンターをご紹介します。
名古屋駅から車で10分ほどのところにオープンした
「ヨシヅヤ名西店」です。

西区名西の東芝の敷地に建てられた、
6,000坪ほどのショッピングセンターです。
食品SMのYストアをはじめ、スポーツデポ、ベビーザらス、
ABCマート、くまざわ書店、ドトールコーヒー、
ジュピター、ひな野さん等が入っています。

何が凄いのかというと、その自転車の数。
オープン日には、600台の常設駐輪場では到底足りず、
駐車場を削ってまで対応していたその数1,500台!!
食品SMの20台のレジは連日フル稼働です。
日常購買品である食品を買いに
多数の近隣のお客様が訪れているようです。

ヨシヅヤ名西店自転車置き場

数年前に近隣の商業施設も閉鎖され、待ち望まれた出店であったことは
間違いありませんが、それだけではなく、やはり細かいサービスや配慮を
されていることが地元のお客様に愛される要因なのではと思います。

店内に入って驚くのは、2005年「愛・地球博」でスペイン館の外壁に
使用されていたオブジェ(セロシア)が中央吹き抜けに設置されていること。
地元企業ならではの取り組みです。地元の企業でも万博が終われば、
それでおしまいというとこも多かったのではないでしょうか。

ヨシヅヤ名西店スペイン館の壁

また、ヨシヅヤさんが取り組んでいる「MOTTAINAI」運動
(2004ノーベル平和賞、ワンガリ・マータイさん提唱)が店内外で
展開されています。
立体駐車場につけられた外看板は
名古屋周辺の高層タワーからでもしっかりと
見えるほど大きなロゴです。

自転車で来店された方には、「無料自動空気入れ」も設置されています。
近頃自転車の空気を入れられるところも少なくなってきているので、
嬉しいサービスです。

通常バックヤードなどにある店長室もここでは店内にあり、
常にお客様の近くにいようというメッセージが伝わってきます。

ただ立地やテナント揃えの良さだけではなく、
地元のお客様により良いサービスや空間を提供しようとする努力が、
今の大繁盛を支えているのだと思います。

ヨシヅヤ名西店外観1

ヨシヅヤ名西店外観2

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 * 経営コンサルタント
 * 発行人:株式会社船井総合研究所 野田 陽一郎
 * ホームページ:http://funai-sc.com/
 * E-MAIL:< info-sc@funaisoken.co.jp >

地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.3〜

ショッピングセンター経営のヒント82:

地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.3〜

こんにちは、船井総研の山本 匡です。

景気もよくなり売上げは上がるが、経費もかさみ、より売らねばならなくなる、
そういう時代に突入したときの流通業の発想の転換について、前回申し上げました。

今回は、もうひとつの重要な視点としての「新規出店」の実現があります。
まちづくり三法改正で、出店可能立地が大幅に減少することをお伝えしました。
これは大手流通にも専門店チェーンにも同じように非常に大きなインパクトを与えます。
これまでのような発想と方法論では、新規出店ができなくなります。

●新規出店

まず専門店業界では、ダウンサイジング業態を開発せねばならなくなります。

たとえば、郊外で500〜1000坪店舗を展開しているチェーンにとっては、
300坪以下で駅前のビルのワンフロアを借りて出来るような店が必要になります。
大都市の駅ビルや巨大モールSCに出店していたチェーン店にとっては、
より小商圏の街でも開発可能なモデルが必要になります。

たとえば100坪が標準だとすると、40〜60坪程度の小商圏対応業態が必要になります。
品揃えだけでなく商品のプライスラインも見直す必要が出てくるでしょう。
オペレーション人員も見直す必要が出てくる事になります。

GMS業態は、食品+衣料か食品+住関連という業態にならざるを得ません。
それもスーパーセンターのような巨大なものではなく、
10,000平方メートル以内にテナントも入れてすべてが収まるようなものです。

いちばん効率が高いのは食品主体の店舗ですが、
何千億円という年商のある巨大な流通企業にとって
15〜20億円程度の店しかつくれないのであれば、
年数店舗では年商が伸びないため、原理的にはかなり数多くつくらないといけなくなります。
実際には無理でしょうから、M&Aなどで拡大するしかないともいえます。

●研究開発費の投入

ここで必要な概念が「研究開発費」の投入です。

メーカーなどでは技術の開発研究にどれだけ投資したかが、
今後の成長性を見るひとつの指標となっていますが、

流通業ではこのようなとらえかたはなされていません。
むしろ、こういう経費を無駄なものとしてカットしてきたわけです。

研究開発とは、商品開発・業態開発・店舗開発の3つが大きく対象になります。
人材開発ももちろんそうですが、これはそもそもやっていてアタリマエですので
この論旨からは省きます。

商品開発とは、バイヤーが本来実施する機能ですが、
多くの流通チェーンでは開発もベンダーに依存し、
多くのバイヤーは商品を選んでいるだけです。
自社で原材料生産地や組立て地までソーシングできている企業は非常に少ないですが、
今後こういうことに積極的に取組み、商品の原価率を下げないと苦しくなります。

業態開発は、先ほどのように外部要因の変化から、
いやおうなく適合業態を開発せねばならない状況になってきています。

店舗開発は、すなわち開発人員そのものを増員するという事になります。
針の穴を通すようなチャンスをモノにしないと、
出店が出来なくなるといっても過言ではありません。

●今後の流通経営の分かれ道

今後の流通業経営の分かれ道は、
上がった利益を上記のどの「開発」に投資してゆくか、によって決定されると思います。
皆様の会社におかれましても、
「何に投資すべきなのか」を今一度ご再考いただくきっかけになれば、と思います。

今回は全3回の短いシリーズでしたが、
今後も時事に適応した内容を配信してゆきたいと思います。
ご拝読いただき有難うございました。今後ともどうぞ宜しくお願いします。

船井総合研究所 第五経営支援部 チームリーダー
山本 匡

今すぐ、経営相談をしたい方はこちらネット経営相談よりご連絡ください。
https://www.funaisoken.co.jp/netmanage/netmanage_8/
※担当コンサルタントを明記してください。

地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.2〜

ショッピングセンター経営のヒント81:

地価上昇、地代上昇、建設コスト上昇時代に備えよう〜No.2〜

こんにちは、船井総研の山本 匡です。

前回は、すでに日本経済の一部はバブル化し始めているというお話をいたしまし
た。需要拡大も期待できますが、コストアップも懸念されます。それに先駆けた
対策を考えるヒントをいくつか例示させていただきます。

●不動産効率の改善

流通小売業における対策としては、まずは不動産効率の改善にあります。

これまで流通業の成長シナリオは設備拡大であり、特に一拠点あたりの店舗面積
の拡大がその基本路線でした。これは、競争優位、売上拡大、人員効率などの面
で見ても、それなりに理にかなった方法論でした。

ただ、今後は設備の「稼動効率」がより重要になると考えられます。効率とは、
まずは在庫効率(回転率)であり、次に経費面で最も大きな人員一人当たり効率
と、次に大きな不動産一坪あたり効率になります。

この3つの効率がよければ、販促費用などが捻出可能になりますし、一方在庫効率
が悪ければ資金繰りにつまり金利負担が増大、人員効率が悪いと結局賃金カット
に、不動産効率が悪いと閉鎖店舗が増加する、という連鎖になります。

ただ、小売業に関していえば、在庫に関しては回転差資金がある程度活用できま
すので、なんとかなりますが、人員効率と不動産効率を見直さねばなりません。

これからは、大きな売場で人を減らし効率的にオペレーションすれば、売れない
店でもそれなりに利益が出るという発想が大切です。さらに地代が安く設備費が
安く上がれば、このビジネスモデルは可能となります。

しかし、一方で売場面積あたり売上はこの15年、下落の一途でした。いっときの
2/3か、それ以下になっているチェーンが多数あります。

低単価品をセルフで売る、そのために作業人員を減らし、売場にいる人はレジを
打っているだけ、という状況になりつつあります。しかし、その一方で接客の重
要性が忘れられているといってもいいでしょう。

●人員増加と売上の関係

同じ1000坪の面積で、限りなくセルフで10人しか使わず、それで月商1億円売れる
のと、接客強化で15人にして月商1.05億円売れるのと、どちらが得するでしょうか。

10人×30万円/月=300万円 VS 15人×30万円/月=450万円 +150万円

人を1.5倍に増やしたことで売上が500万円増えたとして、粗利が30%とすると
500万円 × 30% = 150万円ですから、人を1.5倍に増やして売上を5%上げて
トントンという結果になります。

では、売上が5%以上あがるとしたら?当然人を増やしたほうがよいということに
なります。あるいは1000坪以上の面積があるならば?ということになります。

同じ不動産コストがかかっているのであれば、人を減らして売上を下げるより、
人を増やして売上を上げるほうが不動産効率は上昇するのです。

これまでは売上に対する強気の観測がたたなかったため、各社は人員削減に熱心に
なっていました。

しかし、これから先、コストアップ=景気回復ととらえると、「同じ設備で、人を
増やして売上を上げる」という方法論に取り組む必要があると思いませんか。

ましてや家賃が上がるとなると、縮小均衡型のビジネスモデルは成り立たないと
いうことになります。

●売上高=坪当在庫高×回転率

もう一つは在庫の増加です。単位面積あたり売上高は坪当在庫高×回転率となります。

回転率が変わらないととすると坪当在庫が減れば売上高は下がるのは当然なので
すが、なぜかこの10年GMS、HCをはじめとする流通各社は坪当たり在庫を熱心に
減らしてきました。通路を広げゴンドラを低くするという方針をとってきました。
(だったら売り場面積を小さくすればよかったのですが…?)粗利の高いSPAや
ブランド品以外は、繁盛店は今も昔も売場に在庫が山積みになっているものです。

ドンキホーテ、ビレッジバンガード、ダイソー、カインズホーム、皆密度にあふ
れていると思うのは私だけでしょうか。

接客人員強化と接客スキルのトレーニング、そして売場ごとの坪当たり在庫高を
増やすこと、これがデフレ脱却後の流通業の取り組むテーマとなると思います。

船井総合研究所 第五経営支援部 チームリーダー
山本 匡

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